予備試験無双

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慶應ロー 憲法 2019

 新しい人権をテーマにした面白い問題でした。出題趣旨に沿って書いているので、大きく外してることはないはずです。予備試験にそのまま出てもおかしくない問題だと思います。

 追記…最近知ったのですが、最判平成31年1月23日という最新判例と全く同じ問題でした(次の重判に掲載されるはず)。この問題が出題されたのは平成30年の8月なので、判例を先取りした形の出題だったというわけですね。

 

1 特例法3条1項4号は、性別適合手術を強制されない自由を侵害し、憲法13条に反し違憲である。

(1) まず、上記自由が憲法上保障されるかについて検討する。

 この点について、13条後段の幸福追求権は、個人の人格的生存に不可欠な利益を内容とする権利の総称をいうと解する。

 そして、性の多様化が進んでいる現代においては、生殖器についての身体に関する自己決定権が尊重されなければ、人格的規律が害される。

 そうだとすると、性別適合手術を強制されない自由は、身体に関する自己決定権を尊重するために不可欠な権利といえ、13条後段により保障される。

(2) 次に、特例法3条1項4号の要件を満たさなければ、家庭裁判所により、性別の取扱いを変更する審判の申立てを却下されるから、上記自由に対する制約があるといえる。

(3) そして、上記自由も無制約ではなく、「公共の福祉」(憲法12条後段、13条後段)による最小限度の制約に服するため、正当化されるかについて検討する。

  確かに、性別は身分法制ないし家族法性の根幹をなすものであり、憲法24条2項がかかる法制度の形成を立法府に委ねていることから、性別取扱変更の要件をどのようなものとするかについては広範な立法裁量が認められるとも思える。

  しかし、上記自由や身体に関する自己決定権は人格的生存に不可欠な権利である上に、いったん強制されれば回復が困難である。そのため、上記自由の要保護性は高く、法制度の形成といえども立法裁量は制限される。

  また、特例法3条1項各号の要件を全て満たすことで初めて「家庭裁判所は、…‥性別の取扱いの変更の審判をすることができる」とされているから、4号の要件を満たすことは性別の取扱いの変更には必要不可欠といえ、規制態様は重大である。

  そこで、厳格な基準により、①目的がやむにやまれぬもので、②手段が目的達成のために必要不可欠かつ必要最小限度の場合に正当化されると考える。

(4) これを本件について検討する。

 ア まず、本件法律の目的は、元の性別の生殖能力に基づいて子が誕生した場合には、現行の法体系で対応できないところも少なくないから、身分法秩序の混乱を生じさせかねないため、こうした弊害を避けることにある。

   性別の取扱いの変更がされた後に、残存する元の性別の生殖機能により子が生まれることがあれば、混乱や問題が生じるためにこれを防止する必要は大きい。

   そのため、目的はやむにやまれぬものといえる(①充足)。

 イ 次に、手段について検討する。

 (ア) 確かに、元の性別の生殖機能が残存することによって上記混乱が生じるおそれがあることは否定し得ない。

     しかし、上記混乱が生じる確実な証拠はないし、それが社会共通の認識となっているともいえない。よって、上記混乱が生じるおそれは単なる観念上の想定にすぎない。

そうだとすると、本件手段は目的達成との関係で適合性が欠ける。

 (イ) また、性別適合手術は身体に著しい侵襲を伴うため、相当の覚悟を有した者にしかなし得ないものである。そのため、恐怖心から上記手術を受ける決心をできない者にそれを強制すれば、その者の身体に関する自己決定権を無視することになり、その者の被る不利益はあまりに大きい。さらに、残存する元の性別の生殖機能により子が生まれる事態は常に生じるわけではないから、一律に生殖機能喪失要件を設けることの必要性も欠ける。

 (ウ) したがって、手段が目的達成のために必要不可欠かつ必要最小限度とはいえず(②不充足)、正当化されない。

2 よって、特例法3条1項4号は、違憲である。

                                                       以上