予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

平成23年予備試験商法

 こんにちは、アポロです。毎日過去問生活2日目、今日は平成23年予備試験商法を解きました。

 完全な初見ではないですが、実際に書いたのは初めてです。かかった時間は72分でした。

 

〜選んだ解答筋〜

・設問1

 ①招集通知違反がありそうだが、Bが特別利害関係人ならそもそも不要。

 ②Bは特別利害関係人に当たる。

 ③取締役会決議に瑕疵はなく当然有効。

・設問2

 ①145条1号で承認擬制されるので、不当拒絶。

 ②Bは株主としての地位をY社に対抗できるので「株主等」として原告適格あり。

・設問3は、AとXの対抗関係にも気づかず、的外れなことを書いてしまった(実質0点)。

 

〜個人的な反省〜

・設問1について、特別利害関係人なら招集通知不要という前提知識がそもそも間違っていたので、「取締役会の無効事由」という超重要論点を落とすに至った。もっとも、同様の解答筋でもA評価の再現答案があったこと、出題趣旨でそこは言及されていないことからすれば、致命傷ではないと思われる。

・設問2について、本問の最重要条文(145条1号)を、誤って「140条1号」と引用していた。

・設問3については、問題の所在にすら気づけなかった。

 

〜問題の分析〜

・一見すると簡単だが、深く考えるとかなり論点が多く、その意味で難しい問題。

・設問1について、まず問題となるのは、Bが特別利害関係人に当たるとして、「特別利害関係人に招集通知を要するのか」という点である。仮に不要ならそもそも瑕疵はないことになる。結論として、特別利害関係人であっても招集通知は必要である。「議決に加わることができない」(369条2項)との文言は曖昧であるが、取締役会ではその者が特別利害関係を有しない議題について急遽決議される可能性もある以上、出席権までは否定されないからである。

・設問1について、次に問題となるのは、「招集通知の瑕疵が取締役会決議の取消事由をなるか」という点である。これは超基本的論点である上に、当てはめについても、特別利害関係人として当該決議に参加できないために特段の事情があることを指摘すれば良いだけである。なお、平成16年頃からBが取締役会に出席していないという事実については、「仮に特別利害関係人に当たらないとしても」というような形でダメ押し的に使えそうである。もっとも、今回については自己の利害が関わっているBが出席する可能性が高かったことを考えると、かかる評価の説得力はあまりないように思われる。なので、この事情は無視した方が無難かもしれない。

・設問2について、145条1号に至るまでの条文操作を正確に行えれば、あとは「名義書換の不当拒絶」という典型論点を処理するだけである。ただ、「委任状の添付で共同請求(137条2項、133条2項)したことになるのか」という疑問は抱くべきであろう。私も現場で会社法施行規則24条と22条を必死に探したが、委任状について規定したものはなかったので、無視した。現場でこれを論点として展開するのは流石にあり得ないと思うので、「まぁ、これでも満たすのかな?」という割り切りが大事だったように思われる。

・設問3について、「AとXの対抗関係」という問題の所在にさえ気づければ、あとは何を書いても基本的に加点されたはずである。実際、再現答案のほとんどが的外れな論述をしており、それでもA評価が来ている答案はある。一応その答え(?)は会社法判例百選35pの解説に書かれている。試験委員としてもこの論点を知っておいてほしいという趣旨の問題ではないだろうし、再びこの論点が出題される可能性は低いため、この論点を深く理解することにはそれほど意味はない。ただ、この「思考過程」は大切にしたい。つまり、何が問われているのか一見して不明な時に、事実関係を整理し、その問題の所在に気づくというプロセスである。自主ゼミのメンバーにはガチ初見でここに気づいている人もいたので、上位を目指すなら一定の論述が要求される問題ではあった。この論点に気づいた友達は、「図を書いてみたら二重譲渡関係にすぐ気づいた」と言っていた。私は設問2に引っ張られて145条辺りの狭い視野でしか考えれていなかったので、その辺の頭の使い方が上位合格する人間との差なのかもしれない。もっとも、本問が難問であることには間違いないので、試験の現場でかかる問題に遭遇した時は、無視して他の科目(民法・民訴)に時間を使い、余った時間でゆっくり考える方が現実的かもしれない(その方が意外と閃いたりするしね)。

 

〜予想採点実感〜

・「取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役の意義」(出題趣旨より)については、多くの答案が正確に論述することができていた。ただ、中には「特別利害関係取締役は会議への出席も禁じられる」とした上で、「Bが出席しても決議の結果に影響がないといえる特段の事情がある」と論述している答案が一定数あった。これではそもそも日本語として意味が通っていない以上、最決昭和44年12月2日の規範に「整合的に論述」(出題趣旨より)したことにはならない。これは、「特別利害関係取締役は会議への出席も禁じられる」という誤った理解から生じた齟齬だと思われる。取締役会決議等はやや実務的な前提知識が要求されることは否定できないが、本試験は実務家登用試験である以上、そのような知識についても最低限の理解をしていることが要求される。

・「会社が譲渡等承認請求をしたとみなされる場合に関する規律の存在」(出題趣旨より)については、145条1号を正確に引用できていない答案が相当数あった。仮にかかる規定の存在を知らなかったというのなら、それは基礎的な条文知識が不足していると言わざるを得ない。仮にかかる規定の存在を知っていたとしても、答案でそれを正確に引用していない限り、それは知らなかった者と同様の評価しか与えることはできない。法律家として求められるのは何よりもまず条文を使いこなす能力であることを再確認してほしい。

・「株主名簿の名義書換えの不当拒絶の意義及び効果」(出題趣旨より)については、145条1号を正確に引用できていた答案の多くでは、最決昭和44年7月28日を意識して適切に論じられていた。

・「名義書換未了の間にされた株主総会決議の効力」(出題趣旨より)については、多くの答案がBの原告適格を検討するにとどまっていた。出訴期間等の他の訴訟要件、299条1項違反が831条1項1号の取消事由に当たること、同条2項の裁量棄却についても、落とさず検討するように心がけてほしい。

・「株式の二重譲渡において対抗要件を具備した第二譲受人との優劣」(出題趣旨より)については、問題の所在を捉えて正確に論述していた答案はごく少数にとどまった。前掲最決昭和44年が株券発行会社の事案であったことを理解していれば、Y社が株券不発行会社であることに着目して上記の問題点に気づけたはずである。すなわち、株券発行会社では株主名簿の名義書換えは会社に対する対抗要件にすぎないが(130条2項、1項)、株券不発行会社ではそれが第三者に対する対抗要件でもあることから(130条1項)、かかる問題が生じるのである。そのため、信義則を理由にY社に対抗できることが直ちにAという第三者に対抗できることを意味しないのではないか、という問題の所在に気付いて論述をしていた答案については、一定の評価を与えた。さらに、AがY社の代表取締役であることに着目し、結論の妥当性を検討していた答案については、事案分析能力が優れたものとして高く評価した。

 

 

 こんな感じですかね〜。本問は上述した論点以外にも実は隠れた論点があります。ただ、本番の時間的制約の中で全ての論点について均等に触れるというのは不可能なので、ある程度の割り切り、そしてメリハリが重要になります。本問でいえば、出題趣旨にあるような論点だけ三段論法をし、設問3は問題の所在を示せれば余裕で上位答案だったはずです。仮に設問3がわからなければ、ここは捨てても設問1と設問2がよく書けていればB評価くらいはきたはずです。難しい論点に気づく訓練をするのも大事ですが、それでも本番で「わからない」問題に必ず遭遇します。そして、その時に「わからない」なりに正しい振る舞いができるか、ということが合格のポイントなのだと思います。事案分析能力などの「法律的な実力」と、潔い割り切りなどの「試験的な実力」の双方が要求された問題でした。良問です!

 

 今日の一曲…RADWIMPS - 4645