予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

平成27年予備試験商法

 こんにちは、アポロです。毎日過去問生活28日目、今日は平成27年予備試験商法を解きました。

 完全な初見ではないですが、実際に書いたのは初めてです。かかった時間は74分でした。

 

〜選んだ解答筋〜

・設問1(1)

 429Ⅰ?→任務懈怠○、「重大な過失」○、「よって」○、「第三者」○、「損害」○→○

・設問1(2)

 429Ⅰ?→「損害」○、「第三者」○→○

・設問2

 ①別個の法人格→原則責任負わない。

 ②「事業を譲り受けた会社」(22Ⅰ)?→「事業の重要な一部の譲渡」(467Ⅰ②)?→○

 ③「商号」の続用なし→直接適用できない→趣旨→類推適用できる→○

 

〜個人的な反省〜

・設問1(1)について、任務懈怠の認定が微妙だった。Cについては355条を引用もせずに「法令」の解釈らしきものを示してしまった。Aについては善管注意義務違反としたが、監視・監督義務違反で書いた方が適切だった気がする。

・設問2について、「譲渡会社の事業によって生じた債務」という文言を無視し、責任を負うという結論にしてしまった。16行も使って事業譲渡該当性を認定したが、そんなことを書いてる場合ではなかった。問題文には事業譲渡が行われたとの記載はないため、余事記載とはいえないが、争いはない部分なのでほとんど加点されないはずである(バランス感覚が疑われかねない)。

 

〜問題の分析〜

・論点抽出自体は容易だが、それぞれ絶妙にひねりが効いている問題。

・設問1(1)について、429条1項の解釈を示した後は、任務懈怠の認定がポイントになる。Cについては355条の「法令」について判例の解釈を示した上で、食品衛生法違反の指示を出した点で任務懈怠を認定するのが無難と思われる。Aについては監視・監督義務違反で任務懈怠を認定するのが無難と思われる。

・設問1(2)について、間接損害も「損害」に含まれることに異論はない。問題は、間接損害を被った株主が「第三者」に含まれるかである。代表訴訟があることを理由に否定する人が多いと思われるが、その理由が本問には妥当しないというのがポイントである。なぜなら、X社の破産手続開始が決定されているからである。これは完全に会社法の議論から外れるが(破産法・会社更生法民事再生法辺りの議論)、「破産手続開始決定後は株主代表訴訟を提起することはできない」というのが実務で定着しているようである。こんな知識を事前に知っている受験生はほとんどいないし、それを知っている必要はない。ただ、民法でも破産法の話は少なからず出てくるわけで、勘の良い人なら「破産手続開始決定後は損害賠償請求権は破産管財人に帰属するんじゃないか?」というレベルの「違和感」を持ったはずである。後はその「違和感」を答案に何とか表現し、結論を修正できれば上出来である(合否には影響しないが)。

 他方で、自主ゼミ仲間の先輩(予備試験合格者)によると、「株主の損害は株式が無価値化したこと→破産すると事業活動終了→株式の価値0が1になることはない→損害は回復できない」という当然の論理で解答できる現場思考問題、とのことである。

 いずれにせよ、「破産」についてある程度の理解がないと解けない問題という意味で、難し目の現場思考問題であることには変わりない。会社法574条は「破産手続開始の決定」について規定しているが、結局破産法を読まないと何もわからない仕組みになっている。出題者は、答案を見てこう思ったことだろう。「やべ!こいつら破産法勉強してないんだった!」

 なお、私自身は「間接損害を受けた株主も『第三者』に当たる」という立場であるため、上記のような議論に言及するまでもなく当然に「第三者」要件を肯定した。実務家の方に話を聞いて、「会社法以外の法律を勉強すると、『代表訴訟があるから十分』とは言い難いことに気付く」と聞いていたため、こちらの見解を採用している。正直どちらの立場でも点数は変わらないと思うが、少なくとも本問からは、「代表訴訟があることを理由に株主の『第三者』該当性を否定すること」に対する問題意識を試験委員が持っていることは伝わってくる。賠償金が二重取りになる点は不当利得で調整すれば不都合はないはずなので、個人的には、やはり肯定説の方が妥当だと考える。また、原則として否定しつつ、事案によっては「特段の事情」を認めて妥当性を図る見解もある。例えば、非公開会社であり支配株主兼取締役が違法行為をした場合の少数株主については「特段の事情」が認められる、という有力な見解もあり(東京高判平成17年1月18日参照)、本問でも一応その理屈で「第三者」要件を肯定する余地はある(X社が非公開会社かは不明だが)。ただ、破産手続開始決定によりそもそも代表訴訟を提起できないというのは、非公開会社とか支配株主の違法とかそういう問題ではないように思われる。仮にX社が公開会社であったり、Aが支配株主という事実がなかったとしても、本問では破産手続開始決定によりそもそも代表訴訟が提起できないのだから、「第三者」要件が肯定されるべき事案である。結局のところ、何が「特段の事情」に当たるのか今一つ整理されていない印象を受けるし、広く「特段の事情」の類型化が図られない限り、原則否定で例外肯定という枠組みは使い勝手が悪いようにも感じる。ただ、これは他の法律を勉強して初めて理解できる論点でもあると思うので、私自身が実務家として経験を積んだ後にゆっくり考えてみたい。←この後様々な文献を読んだが、少なくとも試験との関係では、間接損害を被った株主の「第三者」該当性は原則として否定しつつ、例外的な事情があれば「特段の事情」として結論を調整していくのが最も無難だという考えに至ったので、論証も変更し、上記のような考え方も(悔しいながら)変更した

・設問2について、まずはY社とX社は別の法人格であり、原則として責任を負わないことを示す必要がある。まず、22条1項適用の前提として事業譲渡該当性が問題となるが、ここは無視した方が良かったかもしれない(争いがない要件の割に書くべき量があまりに多い)。次に、「商号」ではなく名称を続用しているため直接適用できないことを示し、あとは類推適用の可否を論じることになる。ただ、本問はこれで終わりではなく、「譲渡会社の事業によって生じた債務」に本件の債務が含まれるかの検討が必要になる。ここは論点というよりは条文の要件該当性の問題であり、気付けるか否かで勝負がついた。自主ゼミの仲間では私以外はここに気付いていたが、①「現場で条文を読んで気付いた」、②「価値判断的に弁当事業の債務を負うことに違和感を感じて気付いた」、という2パターンがあった。いずれも民事系科目に重要なスキル(解法)であり、ここに気付けるか否かは実力が問われるところである。ここを落としてもA評価の答案はあるので、合否を分けたポイントとはいえないが、それなりに差がついたと思われる。

 

〜予想採点実感〜

・「会社法第429条に基づく損害賠償責任の意義」(出題趣旨より)については、多くの答案では判例を意識した解釈が示されており、好印象であった。

・「取締役C及び代表取締役Aにそれぞれ求められる任務の具体的内容と任務懈怠の有無」(出題趣旨より)については、答案によって様々な認定がなされており、筋が通った論述内容である限りは、一定の評価を与えた。ただ、Cについては、食品衛生法違反の指示を出した事実のみをもって任務懈怠を認定している答案が非常に多かったが、「法令」(355条)の解釈を示した判例を意識して論じることが求められるところであった。また、これを一般的な善管注意義務違反として論じることも十分考えられるが、その場合でもやはり上記判例を意識した上で論述することが要求される。「いかなる任務を怠ったのか」という点がはっきりと読み取れない答案が相当数あり、受験生全体として、何となく同要件を認定しているとの印象を受けた。

・「代表取締役Aの任務懈怠とEらの損害の因果関係」(出題趣旨より)については、「よって」という文言を引用しているだけであったり、「因果関係がある」というだけで、何ら事実の認定がなされていない答案が散見された。Cについては任務懈怠と損害の因果関係は明白であるため、そのような認定も許され得るが、Aについては因果関係は明白とはいえない。AはCの指示をやめさせないという、いわば不作為のような形で監視・監督等の任務を怠ったわけであるから、「Aがやめるように言えばCは指示をやめたのか」という検討は不可欠である。すなわち、AがX社の代表取締役である事実・A及びその親族が70%の発行済株式を有している事実を考慮した具体的な検討が求められていたのである。それにもかかわらず、大多数の答案が何ら具体的な検討をせずに因果関係を肯定していたことから、条文の要件を軽視しているのではないかという印象を受けた。

・「株主Bに生じた損害の内容」(出題趣旨より) については、多くの答案では、これがいわゆる間接損害に当たることを前提に、「損害」には間接損害も含まれるという判例の理解を示せていた。

・「株主が役員等の第三者に対する損害賠償責任(会社法第429条)を追求することの可否」(出題趣旨より)については、いずれの結論もあり得るところであるが、「株主は代表訴訟が提起可能であるから本件でも『第三者』には当たらない」との理由付け及び結論には賛同し難い。X社は破産手続開始決定を受けているが、果たしてBが株主代表訴訟を提起することは可能なのか。破産法等の知識がなくとも、典型事案と異なる事実に着目すれば、十分に結論の妥当性を検討できる問題であった。

・「Y社がX社の損害賠償債務について弁済する責任を負うかどうかにつき、会社法22条を類推適用することの可否」(出題趣旨より)について、原則として責任を負わないということや、直接適用できないことを述べずに、いきなり類推適用の可否について検討している答案が一定数あった。かかる答案については、「論点に飛びついている」との印象を受けることを免れない。責任を負わないという原則論を示すことで初めて法律関係について理解していることが伝わるし、「商号」の続用はないことを示すことで初めて同条を理解していることが伝わるのである。受験生が「当たり前」と考えて答案に記載しなかった事項でも、採点者は答案からそれを推測することは許されず、それは「当該受験生は知らなかったものと推定される」ということを意識して答案を作成してほしい。

・「X社のEらに対する損害賠償債務が『譲渡会社の事業によって生じた債務』に該当するか」(出題趣旨より)については、検討している答案は思いのほか少なかった。条文を読んで要件に当てはめるという法律学習の基本的作法が身についていれば気づけた問題点である。これに気づけなかった受験生については、条文を軽視した論点中心の学習に陥っている可能性がある。今一度基本的な条文の要件を確認し、その文言解釈として論点を学習する姿勢を徹底してほしい。

 

 

 こんな感じですかね〜。基本的な問題でありながら絶妙にひねりが効いており、実力を図るにはめちゃくちゃ良い問題だと思います!

 

 今日の一曲…JUDY AND MARY - Over Drive