予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

平成30年予備試験刑法

 こんにちは、アポロです。毎日過去問生活37日目、今日は平成30年予備試験刑法を解きました。

 実際に答案を書いたのは、9ヶ月ぶり2回目です。かかった時間は73分でした。

 

〜個人的な反省〜

 ・Vに債権放棄の念書を書かせた行為について、恐喝利得罪の既遂としてしまった。甲と乙がナイフを示した行為は強盗罪の「脅迫」ではないと考えるにしても、その後に乙がVの喉元にナイフを突きつけた行為は「脅迫」に当たる。そのため、恐喝利得罪を検討するとしても、恐喝利得未遂を成立させた上で、強盗利得罪を検討すべきであった。もっとも、恐喝利得未遂は強盗利得罪に吸収されるので、答案上であえて検討する実益はない(頭の中で処理すべき)。そして、乙の10万円の強盗だけでなく、ここでも共謀の射程を検討すべきであった。

・時間がなかったため詐欺は無視したが、「欺」く行為だけでも簡単に否定すべきであった。

・罪数処理はよくわからなかったので全て併合罪としたが、包括一罪とした方が無難だった。

 

 

 こんな感じですかね〜。単純なようで複雑な事案であるため、事案分析能力がかなり重要な問題でした。結論が分かれ得る点としては、①強盗利得罪の「脅迫」の時点(ナイフを示した時点だと考えるなら実際には反抗抑圧されていない点も問題となり得る)、②強盗利得罪と強盗罪の罪数処理、③詐欺罪の成否、④乙の10万円の強盗に共謀の射程が及ぶか、⑤共謀の射程が及ぶとすれば離脱による共犯関係の解消は認められるか、⑥業務上横領罪と強盗利得罪の罪数処理、辺りでしょうか。いずれもかなり微妙なので、結論自体で差がつくようなことはないはずです。

 ただ、この中でもメイン論点と考えられる④については、共謀の射程は及んでいると見るべきだと思います。まず、問題文に⑤の論点に使えそうな事情がある以上、素直に考えれば、「離脱による共犯関係の解消まで論じてほしい」というのが出題者の意図です(実際、出題趣旨にも「共犯関係の解消の有無」と書かれている)。また、これを否定すれば強盗利得罪で共謀の射程を肯定した理由と矛盾する可能性があります(例えば、強盗利得罪の部分で「乙は念書の作成を拒絶したVの態度に立腹して喉元にナイフを突きつけたため動機の同一性・連続性はある」等という理由も書いていた場合、これは強盗罪についても当てはまるように思えるため、矛盾と捉えられる可能性がある)。さらに、乙がVの喉元にナイフを突き付けた行為が強盗利得罪の「脅迫」と考えた場合、一つの行為が強盗利得罪と強盗罪の「脅迫」を構成するのに、同一の共謀の射程が強盗利得罪のみに及ぶというのは違和感があります。「少なくとも『強取』には及んでいない」というのなら、「脅迫」には共謀の射程が及ぶとして強盗未遂を成立させるべきか、という考えたこともない悩みも生じ得ます(「抽象的事実の錯誤」として故意も問題になり得る)。刑法という特に論理的一貫性が重視される科目において、論理矛盾のリスクは極力避けるべきです。甲に強盗罪の責任を負わせられないという価値判断は妥当ですが、離脱による共犯関係の解消を認めれば責任を負わせないことはできます。そのため、ここで共謀の射程を否定することは、答案戦略という観点からも、論理的一貫性を死守するという観点からも、微妙な選択であると考えます。←久しぶりに答案構成したら、「共謀の射程及んでなくね?」と感じました笑(実際、及ばない筋で構成しました)2ヶ月以上前の自分はどうやって共謀の射程を肯定したのか気になったので、答案を読み返しました以下、当時の答案の抜粋です

 「甲は『絶対に手は出さないでくれ。』と言っていた上に、あくまで上記共謀は甲V間の債務をなくすためのものであったから、乙がVの喉元にナイフを突き付けて10万円を要求した行為は共謀の射程外とも思える。しかし、乙は念書の作成を拒絶したVの態度に立腹して現金も取ろうと考えているのだから、動機の同一性、連続性はあるし、ナイフを使った脅しという点では当初の予定通りの行為であり、手を出しているわけでもない。そのため、共謀に基づいて乙の上記強盗はなされている。」

 ナイフを喉元に突き付けた点と10万円も強盗した点をまとめて論じているのは良くないと思いますが、このような理屈で共謀の射程内と見ることは可能だとは思います

 

 今日の一曲…Zedd - Straight Into the Fire