予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

十年後の受験生へ

今日は「十年後の受験生へ」というテーマで、自分のツイートをまとめます。

 

十年後には傾向が大きく変わっているかもしれないし、予備試験自体がないかもしれません。ただ、それでも司法試験に合格するための根本的なテクニックは変わらないはずなので、ここに書いてある内容の大半は十年後でも妥当すると思います。

 

ブログを始めてから約2年、実質的な更新は今日で最後です。

 

なお、このブログ自体は、今後も消さずに残しておきます。

 

 
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〜総論〜

 

・高校生の時、試験中に関係ないことを考えてしまう癖があり、「集中できない!」と悩んだ時期があった。 入試本番も関係ないことを考えてしまったが、結果的には合格できた。 自分はそこまで集中できなくても問題ないと気付き、気が楽になった。 予備・司法の本番も、実はそこまで集中できなかった。これは他人に言ったことがないので、どこまで共感してもらえるかわからない。 ただ、「集中できない!」と思えば思うほどパフォーマンスが落ちた気がするので、似たような悩みを持つ人がいれば、ありのままの自分を受け入れると気楽になると思う。 集中力MAXでなくとも、実力は発揮できる。似たようなことは、「緊張」にも当てはまる。 緊張していること自体は全く問題なくて、むしろ正常。 緊張している自分を客観視して、「今緊張しているな〜」とありのままの自分を受け入れる。 「緊張している=やばい」みたいに結びつけてしまうと、パニックに陥りやすいのだと思う。

 

伊藤塾長の1番好きな言葉を載せる(正確な引用ではないが)。 「私は何千人・何万人という合格者・不合格者を見てきたが、確実に言えるのは『その人にとって1番良いタイミングで受かる』ということ。もし今回の試験に受からなくても、それは貴方にとって1番良いタイミングではなかっただけ」。自分も、令和元年予備短答に落ちたからこそ挑戦できたことが沢山あるし、落ちたからこそ出会えた人・仲良くなれた人が沢山いる。 今回落ちてしまった人も、「令和3年予備論文に落ちて良かった」と本気で思える日が、そのうち来ます。

 

・予備・司法で上位合格した友達に「(短期・上位)合格者の共通点は一言で言うと何なのか」聞いてみたところ、彼女は「素直さ」と言っていた。 先日のざっくとのスペースで私は全く同じことを答えたので、驚いた(彼女はスペースを聞いてない)。 少なくとも、「素直さ」はある程度重要そう。

 

・資格試験は所詮「点取りゲーム」でしかないので、そこを割り切れる人は早く受かる。 日々の勉強を本番で点を取るためにやれているか、問題の解き方は点を取るために最適化されているか。 この辺を常に自問自答しないと、勉強すること自体が目的になりかねない。

 

・本気で100点狙って勉強して初めて90点に届いたり、90点目指して勉強すると80点しか取れなかったりする。 常に自分の「本当の目標の少し上」を目指すくらいが丁度いい。

 

・目的地への最短経路は簡単に見つからないから、迷いながら進むしかない。

 

 

〜短答〜

 

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短答落ちた年に書いたやつ

 

・短答では網羅性が大事だけど、一部の分野は捨てても良いと思う。 自分の場合、例えば以下の分野は完全に捨ててた。 民法先取特権借地借家法、商法は株式振替制度 、憲法は9条など現場思考で解ける分野 、行政は行審法 、刑法は1〜34条と66〜72条。 コスパが悪すぎる分野は、捨てても問題ない。また、刑法・刑訴の学説対立問題も全然解かなかった。 知識あっても解けない時は解けないし、知識なくても解ける時は解けるって感じがしたので、一回解くのにかかる時間の割に本番との関係であまり意味のない演習な気がした。 その時間で民訴・刑訴の条文読んだりした方が、本番での得点に直結する気がする。結局のところ、「抽象度が高い(難しい)割に出題頻度が低い分野」が、自分にとってはコスパが悪いと定義できるのかも。 逆に、「具体性が高く(簡単で)出題頻度もそれなりにある分野」は、コスパが良いように感じてた。 そう考えると、一読すれば何となく意味がわかる民訴・刑訴の手続条文が最強。

 

 

〜論文〜

 

・論文のまとめノートに書いてある「問題文には無駄な事実は書かれていないと思って読む」について、雑な表現だったので補足する。 ここで言いたいのは、「法的な議論に引き直せる事実」に無駄なものは基本的にないということ。 逆に言えば、「背景事情的な事実」は基本的に無視して問題ない。無視するというのは極端な表現だが、一読して「ふ〜ん」と思えれば十分ということ。 問題文を読むのが遅い人は、こういう事実もしっかり読んで理解しようとしている可能性がある。 他方で、「法的な議論に引きな直せる事実」については、一読してよくわからないからといってスルーしてはいけない。「法的な議論に引き直せる事実」か否かは、条文や規範の要件に当てはめられるか否かで決まる。 商法がわかりやすいが、例えば「AはBと対立に至り〜」みたいな情報は、要件に当てはめようがないので、「背景事情的な事実」。 他方で、「議決権が〜」とかが出てきたら、要件に当てはめられるので、「法的な議論に引き直せる事実」。もちろん民法で事実関係を整理するために出てくる事実などは、条文の要件にそのまま当てはまらなくとも重要。 結局のところ、「問題文の読み方にメリハリをつけよう」「重要な事実はスルーしちゃダメ」という当たり前のことを言ってるだけなので、そんなに難しく考えなくても大丈夫。これがしっくり来なければ、普通に「重要そうな事実か」というざっくりしたメルクマールで全く問題ないと思う。

 

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接続詞等

 

・得点に直結しない部分は極力テキトーに書くべき。 文字も綺麗である必要は全くない。 真面目な人ほど、丁寧に書きすぎて時間不足に陥っている。

 

・(一流の)学者が「特定の論点に対する答案の書き方」についてどう考えているかを知るのは、非常に重要だと思う。 「受験生はこういうミスしがち」「こういう書き方は勘弁してくれ」という共通認識が意外とある。 そして、簡単に差をつけるために、その問題意識がそのまま試験に出ることは結構ある。

 

・予備論文に落ちてしまった人は、成績表と再現答案を用いた分析が来年の合格に必要不可欠。 「自分は誰よりも分析した!」と自信を持って言えるまで、時間をかけて徹底的に分析すべき。 ここをテキトーに終わらせる人は、来年も運に身を任せることになり、多分落ちる。ここでの分析は「具体的に言語化する」ことが重要なので、最低でも自分の言葉で敗因(勝因)をまとめる必要がある。 第三者が聞いても納得できるレベルだと尚良いので、ブログやTwitterに詳細な分析を書いたり、合格者や受験生と議論するのも有効。 とにかく「具体的に」言語化すべき。

 

・予備論文の過去問は、実務を除けば、刑法の過去問が最重要。最も安定した得点源にしやすく、同じ論点が繰り返し出題される。刑法は可能な限り書くべき。 次に重要な順に、行政→刑訴→商法→民訴。 民法憲法は、過去問の重要度は低い。民法は重要度が高い年度だけ、憲法は令和以降を書けば十分。

 

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論証暗記のステージ

 

・教授に以下のような罪数処理を教わった。「最高裁が牽連犯と認めたものは牽連犯で、それ以外は併合罪。 包括一罪はとりあえず何でもぶちこめるゴミ箱。最高裁含めて理論的根拠が不明なものが多い」。 受験生が罪数を現場で色々考えても仕方ないので割り切るべき。罪数処理を間違えても大した減点ではない。

 

・「過去問の後追い」をしないように気をつけるべき。 過去問の後追いとは、「過去問解く→解けなかった論点覚える」みたいな勉強。過去問演習は抽象的なレベルでポイントを抽出しないと、二度と出ない問題の解答を覚えるという愚行になる。

 

・「逆答案構成」とは、 解答例の各段落を1行以内に要約して紙に書くこと。これにより、答案の骨組み・問題のエッセンスを理解でき、要約力もつく。そしてこれを極限まで簡略化したのが普通の答案構成。つまり、逆答案構成ができると答案構成ができるようになり、答案構成に肉付けすると答案になる。

 

・ネタ本について言うと、『刑法事例演習教材』からは未だによく出る。 『ロジカル演習民事訴訟法』から令和3年の司法試験は結構出た。 『会社法事例演習教材』も網羅性がえぐいので、結構ここから出る。『事例で考える会社法』も、令和2年・令和3年の司法試験の関連論点が掲載。 他に露骨なネタ本はないと思う。

 

憲法違憲審査基準について、 受験テクニック的には、とりあえず中間審査基準で書くのが安全。 普通の受験生が判例の基準を使いこなせるとは思えないので、やめた方が良いと思う(この点はstudyweb5さんと反対の意見)。 憲法は理論ではなく当てはめで勝負すべき。

 

・予備受験生が新司過去問やるなら、刑訴・行政は、予備に未出の論点をおさえる目的でやる。 憲法は、得点の取り方を知るために憲法ガールでやる。 商法・民訴は、余裕があれば、予備に未出の条文・論点をおさえる目的でやる。 民法・刑法は無視して良い。 いずれもマストではないが、役に立つ。

 

・予想より評価が低い科目があった人は、まずは「法的三段論法ができているか」を徹底的に確認すると良い。

 

・「自分基準で考えて答案を書く人」は、実力があっても落ちやすい。なぜなら、その時々の思考回路・閃きによって書く内容が変わるから。 試験である以上、客観的視点から、問題文の事実・その奥にいる出題者と向き合うことが重要。出題者は、貴方の個性を求めてません。

 

・「現場思考」の意味を勘違いして試験の現場で思い付いたことをとりあえず書く人は、極端に合格しづらい試験。 それが予備試験・司法試験。 上位合格者ほど、皆同じような思考プロセスで、皆同じようなことを書く。

 

・現場思考論点の「正解」しか教えない予備校の過去問講座に、何の意味があるのか。 同じ論点が出る可能性は低いから、汎用性のある思考プロセスを教えなければ意味がない。 加藤喬先生・studyweb5さん・川崎直人さん辺りはこの点を強く意識されているので、非常に参考になる(あと私のブログも笑)。

 

・新司法試験の憲法は、H29・R1・R2しか答案を書いてない。 ただ、憲法ガールは何十周もしたので、各年度の解説はほとんど覚えてた。 自分の場合、一回だけ答案を書いた問題よりも、何十回も解説を読んだ問題の方が長期的には記憶に定着した。 人によっては必ずしも沢山答案を書く必要はないと思う。

 

・新司法試験過去問は、直近1〜3年分を全科目解いた後に、優先順位の高い科目・年度から順に解くべき。 科目の優先順位は、行政≧刑訴>憲法>商法≧民訴>刑法>民法。 年度の優先順位は、加藤先生のランク付けが参考になる。 がむしゃらに全部解くのは、非効率。

 

・今年の予備論文で憲法Aだった方の再現答案を見せてもらったが、自分の答案と雰囲気が似ていた。 抽象論は簡潔にポイントに触れていき、あてはめに入った途端に圧倒的な量の事実を書き写し、何とか自分なりの評価をねじ込んでる感じ。 抽象論では物足りない部分もあったが、これは余裕でAだと思った。逆に、評価が悪い憲法の答案を見てると、抽象論とあてはめのバランスが非常に悪い。

 

司法試験委員会は、予備論文の成績を曖昧にしか通知しないことで、採点基準を必死にブラックボックス化しようとしている。 再現答案と成績の関係性を調べてそれを解明するのは、暗号の解読みたいで楽しいので、挑戦する価値はあると思う。 その過程で色んなことに気づき、違う景色が見えてくるはず。

 

憲法では、難しい憲法論はわからなくても、判例を一つも引用しなくても、事実の摘示(評価)を徹底すれば上位になる。 判例憲法論に加えて、点の取り方を学ぶことも重要。

 

憲法の処理手順は、 ①事案を読んで使えそうな事実全てに番号を振る 、②答案構成(目的手段審査)の適切な位置に各番号を落とし込む 、③それに従ってひたすら書く、という完全なる作業だった。 現場では何も難しいことは考えてないし、基本的に事実ベースでしか書いてないから、再現するのも簡単。

 

憲法が苦手な人は、状況を具体的にイメージして下さい。素人的な目線を持って下さい。頭でっかちにならないで下さい。

 

・個人的には「一文が長い」よりも、以下のような文章の方が問題だと思う。 まず、無駄に句読点が多いと、一々立ち止まるため厳しく採点されそう 。また、一つの段落で2回以上逆接を使うと、「論理わかりづらいから改行してよ!」と思う。読み直す時はこの2つが多い印象。そもそも事実を摘示すると一文が長くなるのは当たり前なので(だからこそ判例等も長い)「一文が長い」という指摘それ自体少しズレてる気もする。 「〜という状況において、〜であり、〜とも思えるが、〜ということも考慮すると、〜である。」みたいな文章は、論理がわかりづらいのが問題の本質だと思う。

 

・予備論文のボーダーラインを探るのは本当に難しいので、上位合格することを目標にした方が、多少計算がズレてても合格できるので良い。

 

・規範の明示すらできておらず、形式的にも法的三段論法が崩壊している答案が低評価なのは明らか。また、 一見すると法的三段論法で書けているような答案でも、規範と摘示した事実が対応してなかったり、規範に関係ない「それっぽい」ことまで勢いで書いてしまう人は結構いる。法的三段論法を死守する意識があれば、あてはめ段階でのミスは減る。 令和3年の予備刑訴でも、長い規範の割にそれに対応した事実を拾えてない人が結構いたが、これも上記意識が低いことに起因する。 あてはめを書く時は常に規範をチェックして「ズレ」や「漏れ」がないか確認すると良い。「規範は暗記してきたものを書いて、あてはめは自分の言葉である程度自由に書こう」と思ってる人がいるかもしれない。しかし、 実際は規範と問題文の事実にガッチガチに縛られるし、事実の評価さえも出題者が想定してそうな無難なことを書くので、極論を言えば、自由に書く余地なんてほとんどない。

 

 

〜口述〜

 

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口述対策

 

・ 私が泊まったのは、「イビススタイルズ東京ベイ」。とにかく会場から近く、部屋から会場が見えた。特に不満もなく、非常にお勧め。ただ、机は確かに微妙だったので、人によっては気になるかも(私は机を使わずに勉強することも多いので気にならなかったが)。論文に合格してる可能性が少しでもある人は、今すぐホテルを予約すべき。万が一落ちてもすぐキャンセルすれば一円も取られないはず。

 

・口述は結構ミスっても122点(22位)だったので、やはり相当やらかさない限り落ちない。 口述再現を見ると「これでギリギリ!?」「これで不合格!?」と思うかもしれないが、多くの場合、本当にやらかした部分は(無意識に)短くまとめたり省略してると思う。 過度に怯える必要はない。

 

・①抑揚、 ②自信を持って話す、 ③アイコンタクト の3つを実践するだけで、相当に印象が良くなる。 自分がかなりミスった割に点数が良かったのは、印象が良かったからかもしれない。 主査・副査も人間なので、こういう非本質的な要素で点数が変わる可能性はある。

 

・①端的に答える。長々と答えられると、主査としては非常にやりづらい。 ②素直に誘導に乗る。「本当ですか?」等と言われたら高確率で自分が間違えてる。深読みしすぎない。 ③デタラメは言わない。沈黙は良くないが、的外れなことを言われると主査も誘導できない。

 

・主査と会話をして、台本を進め、最後まで行くこと。落ち着いていけば大丈夫。 偉い先生の個別指導を受けられる貴重な機会。 緊張するのは当たり前なので、全く問題ない。

 

・1日目の民事が終わった時点では「もしかして59点かも…」と思った。 その日は基本刑法を読んで、少しモヤモヤした気持ちで寝た。 次の日の朝、伊藤塾長に話しかけたら「今日が1日目だと思って行こう!」と言われ、一気に気持ちが切り替わった。

 

 

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貴方が本当に合格を望んでいるなら、予備試験なんて簡単です。