予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

予備試験論文の予想評価・雑感等

 こんばんは、アポロです。予備試験論文を受験してから、早くも1週間が経過しました。この間、私は再現答案を作成し、友達が何を書いたか確認し、Twitterでも多くの方の再現答案・雑感等を読みました。これらを通じて、ひたすら自分の答案の相対的評価を探りました。また、模試の成績・過去の論文試験の再現答案研究などを通じて、「受験生のレベル感」というのは把握しているつもりです。なので、以下の予想評価は、実際の評価にかなり近いと思います。

 

 

〜予想評価〜

憲法…B

・行政…B

・刑法…A

・刑訴…A

・般教…C

・実務…C

民法…A

・商法…D

・民訴…D

・順位…200位前後

 

 

〜雑感〜

 

憲法…B+

 形式的正当化に一切言及していない。他方で、実質的正当化については、事実を全て拾った上でかなり厚く書いた。そのため、自分の評価は、「形式的正当化の配点」・「形式的正当化を論じた受験生の割合」に依存する。形式的正当化を論じた友達はいるが、その分実質的正当化の論述がやや薄くなったと言っていた。両方とも厚く論じることができた人がどれだけいるのだろうか。あくまで相対評価なのでAの可能性はあるが、重要論点を落としている以上、Cでもおかしくない気はする。やはり、憲法は評価が読めない。

 

行政法…B-

 設問1は、考えたこともない問題だったので、完全な現場思考で解いた。行政契約という認定をした上で、誘導に乗りつつ、問題文の事実・条文を拾った。もっとも、いわゆる模範解答のような筋ではなく、微妙にズレた論述内容になっている。そのため、設問1単体の絶対評価なら、D以下だと思う。しかし、これを「附款」と認定した人が一定数いるので(実力者にも結構多い)、行政契約と認定して事実・条文を拾った以上、相対的にはCくらいかもしれない。

 設問2は、処分性という典型論点だったので、行政法は本問が勝負と考え、厚く書いた。通知の根拠条文が不明確な点を除けば、平成23年予備試験とほぼ同じロジックで処分性を肯定する立論をすれば良いのだと思う。通知の根拠について厚く論じている余裕はなかったので、あっさり論じた。その他は平成23年の過去問を解いた時に色々悩んだ部分が再び問われたので、しっかり論じられた。ただ、再現答案・解答速報を読む限り、「できる」という効果裁量・「相当程度確実」という病院開設中止勧告事件の射程・最判平成24年2月3日の論理を示している答案が少ないことに驚いている。正にこの点が正面から問われているはずなので、ここを厚く論じられた以上、設問2単体ではAだと思う。

 

・刑法…A

 かなり簡単な問題だったので、「どこで差をつけるか」ということを意識して論述した。ミスは一つもしていないし、事実認定も相当頑張った。超上位だと思う。

 

刑事訴訟法…A

 旧司法試験のような問題で驚いたが、判例自体は授業や『ロースクール演習刑事訴訟法』を通じて理解していた。「一時不再理効の客観的範囲→公訴事実の同一性」という流れで書き、公訴事実の同一性の有無を丁寧に検討した。時的範囲も検討した。「常習性の発露」も、判例の論理を踏まえつつ、問題の本質を捉えて厚く論述した。超上位だと思う。

 

一般教養科目…C+

 設問1は、無難に要約した。ほぼ全員が同じようなことを書いているので、ここでは差がつかないと思う。

 設問2は、「人間の作った『ルール』vs自然的に存在する『倫理』」という対立軸で、安楽死について書いた(最初は「ルールvs信念(宗教)」という対立軸で書こうかと思ったが、抽象化の度合いとして中途半端だと思ったのでやめた)。違法性阻却(構成要件に該当するにもかかわらず犯罪不成立)というテーマ自体、上記の対立軸と親和性のある問題だと思うので、古くて新しい問題である安楽死を取り上げた。上記の対立軸の設定・具体例は適切だと思う(もちろんこれ以外の対立軸も設定できる)。再現答案・感想を見る限り、自己の選んだ対立軸に対してよくわからない具体例を書いた受験生が一定数いるようなので、相対的には浮上したと思う。ただ、具体例を挙げた後の論述が薄いため、Aはこないと思う。一般教養もなかなか評価が読めないが、BかCのどちらかだと思う。

 

・法律実務基礎科目(民事)

 設問(1)(2)は、普通に書けた。

 設問1(3)は、捨て問と判断し、「実益がないから」とだけ書いた(当然0点)。正答率はかなり低そうなので、全く気にしていない。ただ、普通に知っていたので書けた、という友達はいる(こわい)。また、現場で閃いた人も一定数いそうな気はする。

 設問1(4)は、普通に書けた。

 設問2(1)(2)も、普通に書けた。

 設問3(1)(2)は、全くわからなかったので、終了間際に的外れなことをテキトーに書いた。一定数の受験生は解けそうな問題なので、そこそこ痛い失点である。

 設問4は、いつも通り事実認定を頑張った。

 民事単体ではCかDだと思う。

 

・法律実務基礎科目(刑事)

 設問1(1)(2)は、いつも通り事実認定を頑張った。

 設問2(1)(2)は、316条の15第1項柱書に沿って検討してしまった(同条3項の存在を失念していた)。ただ、検討する内容はほぼ同じなので、大きな問題ではないと思う。

 設問3は、「刺突行為及び殺意の存在」を立証しようとしているとした上で、「偶然的にナイフが刺さった場合・殺意がなかったような場合には、そのような者がその後に『むかついたので人をナイフで刺してやった』という供述をすることは考え難い」として要証事実を「上記供述の存在及び内容」として非伝聞(非供述証拠)とした。この論理も間違いではないが、証明力を考えれば伝聞例外として採用した方が良いに決まっているので、いわゆる「正解筋」ではない。ただ、再現答案を読む限り、そもそも立証しようとしている事実を外しているもの・「要証事実」という概念の理解が疑われるものも多いので、伝聞例外で書かなかったことは、相対的に見れば大きな問題ではなさそうである。

 設問4は、勾留取消請求・勾留執行停止の職権発動を促すことだけを書いた。問題文に保釈は認められなかったと書いていたので、保釈は書かなくて良いものと判断してしまった。加点方式である以上、「念のため書いておく」という作戦をとるべきであった。

 刑事単体ではBかCだと思う。

 

民法…A-

 設問1は、答練みたいな問題だったので驚いた。こういう問題は「原則→例外(論点)」の論述の流れで差がつくと思ったので、とにかく条文を指摘し、表見代理もあっさり否定しつつ、丁寧に原則論を書いた。論点については、論証は大体覚えていたので、「正義の観念」というキーワードを出しつつ、特段の事情の有無を検討した。特段の事情の考慮要素は知らなかったので、とりあえず事実を拾いまくって特段の事情を肯定した。事務管理については考えもしなかったが、たぶん配点は低いので問題ないと思う。

 設問2は、まずは債権者代位の要件を丁寧に検討した。取消権の一身専属性は書いていないが、一応書くべきであった(争いがない論点なので大した配点はないと思うが)。詐欺取消に加えて錯誤取消も書いた人も多いようだが、問題文の事情からはどう考えても詐欺が成立するので、配点すらない気がする(錯誤も論じさせるならもう少し微妙な事案にするはず)。詐害行為取消については、Aの害意で悩んだ。自分は結論として肯定したが、著名な民法学者に聞いたところ、「Aの害意は否定されるべき事案だが、悩みを見せた上で肯定するなら点数は入る」とのことだった。なお、最後になぜか不当利得を数行書いてしまった。論点がなくて心配になったため一応書いたが、完全な余事記載であり、心証は悪いと思う(基本的に加点方式の試験なので、大丈夫だとは思うが)。

 

・商法…D+

 設問1は、出題予想していた分野(親子会社)がドンピシャで出た。Bについて、まずは利益相反取引を認定し、承認の有無で悩みを見せた。結論として承認はないとしたが、「仮に〜」という感じで推定規定も書いたので、問題ないはず。特定責任追及の訴え提起請求・多重代表訴訟については、試験当日の朝にも要件を確認していたので、一つ残さず丁寧に検討できた。再現答案・解答速報を含めて、自分ほど完璧に論じられた答案は見ていない。Aについては、子会社管理の「義務認定→義務違反」という流れで書いた。この流れで書けるかで意外と差がつくのではないか。責任追及の訴え提起請求・株主代表訴訟はあっさり検討した。設問1単体では、超上位だと思う。

 設問2は、よくわからなかったので一旦飛ばし、終了間際にテキトーに書いた。「株式交換」と認定して3行くらいしか書いていないので、当然0点。圧倒的な実力不足である。設問2の配点は低いと考え、その割には時間がかかりそうでコスパが悪いと判断した。また、設問1の論述に自信があったため、謎の余裕があった。体感だと、自己株式取得の手続だけ書いた人が6割・譲渡制限の承認だけ書いた人が1割・両方書けた人が1割・両方書けなかった人が2割くらいの印象である。自分の商法の評価は、設問2の配点に依存する(6:4ならD、7:3ならC、8:2ならBと予想)。

 

民事訴訟法…D-

 設問1は、本当にわからなかった。判例の射程が問題になることにも気づかなかったので、本訴は確認の利益なくなって却下されると書いた。既判力についても、原則論を長々論じた上で、却下判決なので生じないと書いた(絶対違うと思いながら書いた)。かなり難しい問題だと思うが、周りでは射程について論じている友達の方が多いので、致命的な失敗かもしれない。ただ、二重起訴については言及しているので、そこは加点要素となり得る。

 設問2は、明示的一部請求の訴訟物(既判力の範囲)・残部請求の可否の判例の規範を書いて、特段の事情を肯定した(本訴を却下したので本訴の既判力は問題にならない)。全体的に、全く出題趣旨に応えていない答案となった。ただ、難問であることには違いないので、周りの受験生の出来次第で自分の評価も変わる。なかなか評価が読めないが、C〜Eのどれかだと思う。

 

 

〜総括〜

 現場での振る舞いは、結構良かったと思う。よくわからない問題・コスパが悪そうな問題は、あっさり捨てた。逆に、原則論・事実認定の論述では絶対書き負けないように意識した。

 運が良かったのは、刑訴で一時不再理効が出たこと(普通に勉強していたので)・商法で親子会社が出たこと(ヤマ当て成功)である。商法に関しては、設問1がなければ本当に爆死していた。

 Fがつく科目はなさそうであり、最もできなかった民訴も悪くてEだと思う。他方で、刑法・刑訴は確実にAだと思う。そのため、客観的に見て、合格可能性はかなり高い。

 試験の2日間を通じて、自分の頭の悪さを痛感した(上位合格はたぶん無理)。というか、「2つ以上のことを同時に問われると思考が停止する」という自分の弱点に気付いてしまった。一つの複雑な論理を追い続けることは得意なので、公法・刑事では失敗しない。他方で、民実設問3・商法設問2・民訴のように、複数のことが同時に聞かれると、急に頭が働かなくなる。今冷静に考えれば、書くべき内容は自明だが、現場では本当にわからなかった。今回は知識と事実認定で上記弱点を補えたかもしれないが、司法試験に向けて自分なりの思考方法を確立しておく必要がある。

 

 

 こんな感じですかね〜。色々失敗しましたが、自分の実力は出し切ったので、後悔はないです。合格発表までの間は、口述対策・司法試験過去問・経済法対策を同時並行で進めます。

 さて、東大ロー入試まで残り2週間を切りました。明日からまた自主ゼミを組んで過去問を解きます。気持ちを切り替えて頑張ります!