予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

司法試験の予想評価・雑感等

 こんばんは、アポロです。司法試験を受験してから、早くも2週間以上が経過しました。この間、私は再現答案を作成し、友達が何を書いたか確認し、Twitterでも多くの方の再現答案・雑感等を読みました。これらを通じて、ひたすら自分の答案の相対的評価を探りました。また、予備論文の成績・模試の成績・過去の論文試験の再現答案研究などを通じて、「受験生のレベル感」というのは把握しているつもりです。なので、以下の予想評価は、実際の評価にかなり近いと思います。

 予想評価の基準としては、今年の短答合格者数が2672人であったことを踏まえて、A=上位37%、B=上位56%、C=上位75%、D=上位94%、E=それ以下、とします。

 

 

 

〜予想評価〜

 

 

憲法…A(上位10%)

 

・行政…A(上位25%)

 

民法…A(上位20%)

 

・商法…A(上位15%)

 

・民訴…A(上位10%)

 

・刑法…B(上位50%)

 

・刑訴…A(上位3%)

 

・経済…60点(上位5%)

 

・論文…200位前後

 

・短答…159点(上位1.45%)

 

・総合…100位前後

 

 

 

〜雑感〜

 

 

憲法…A(上位10%)

 

 規制①は、ほぼ出題趣旨通りに書けているはずなので、おそらく超上位。規制②は、「みだりにSNSのアカウント等の情報を収集されない自由」として。プライバシー権(自己情報コントロール権)の問題として論じた。結社の自由は、思いつきもしなかったが、これを何条で論じたかそれ自体は大きな問題ではない。当てはめで多くの事実を拾い、適切な評価を加えられたかが勝負。その意味では、やはりプライバシーの問題の方が論じやすいと思う。たまに「規制②はプライバシー権の問題では論じ得ない」という意見を聞くが、団体や構成員のプライバシーを観念し得ること、公の情報でもそれを「収集(管理)」すること自体にプライバシー侵害を観念し得ることから、やはりプライバシー権も問題になるはず。流石にAは来ると思うが、上位5〜15%くらいの範囲でズレはありそう。予備論文と同じくらいの手応え。

 

 

・行政…A(上位25%)

 

 設問1(1)は、法的根拠があるか微妙だと考え、少しだけ公権力性を論じた。法効果性の部分で、申請権の有無・市道占有許可との関係を論じた。後者は若干ズレたことを書いたかもしれないが、誘導がわかりづらかったので、大きなダメージではなさそう。実効的な権利救済は、無難な内容を簡単に書いた。

 設問1(2)は、出そうな予感がして数日前に確認した判例だったので、完璧に書けた(個人的には原告適格で出ると予想していたが)。予想できた理由は、「昨年はややマイナーな不作為の違法確認訴訟が出た→ただこれは問研のB+の問題として載っていた→今年も問研のB+の問題からややマイナーな分野が出そう→競願関係が出そう」という感じ。あと、コンプリ答練にも出ていた気がする。

 設問2は、誘導に忠実に従ったので、大きなミスはないはず。事実もかなり丁寧に当てはめた。最後の判例は全然理解していなかったが、現場でそれっぽいことを書いたら、判例とほぼ同じ内容になっていた。我ながら冴えていたと思う。

 これだけ読むと上位25%より上な気もするが、行政法は毎回予想評価より遥かに悪い評価をつけられてきたので、控えめにしておく。いずれにせよ、流石にAだとは思う。

 

 

民法…A(上位20%)

 

 設問1は、所有権喪失の抗弁ではなく占有権原の抗弁で書いたことがやや不安だが、条文の当てはめ・論証共に丁寧に書けた。大きな問題はない。

 設問2(1)は、請負を否定して準委任で書いた。準委任など論文で書いたことがないので不安だったが、合っていたようで安心。

 設問2(2)は、いずれの請求も正解筋に近い内容を書いたが、事実認定が雑すぎる。合格レベルだとは思うが、上位層はもう少し厚く書いているはずなので、やや不安。まぁ、配点を考えれば妥当な判断だったと思う。

 設問3(1)は、ほぼ完璧に書けたのに、最後の508条で相殺適状にあったとしてしまった。現場で「相殺適状にあった時期なくね?」と思ったが、「全額は拒めないけど100万円は拒める」という結論が美しいと思ったこと、どうせ皆508条適用するのに自分だけ否定するというリスクを負いたくなかったことから、普通に適用した。これも、決して簡単ではないし、現場判断としては妥当だったと思う。

 設問3(2)は、爆死した。残り時間10分で、条文操作で軽くパニックになった。何とか条文を見つけるも、結論の妥当性を図ろうとし、原則論も書かないまま修正した。完全にやらかした。これは最悪0点でもおかしくない。

 全体的な手応えは良くないが、設問1で典型論点を厚く書けたこと、設問2で準委任に食らいついたこと、設問3(1)もしっかり書けたことから、流石にAだとは思う。設問3(2)は、実質途中答案の人も多いらしいので、意外とダメージは少ないのかもしれない。

 

 

・商法…A(上位15%)

 

 設問1は、間接取引と多額の借財を書き、前者で重過失は否定し、後者で過失は肯定した。主観の当てはめにやや苦労したが、全体的にかなり丁寧に書いたので、差をつけられたはず。

 設問2は、他人名義の株式の論点を応用し、「特段の事情のない限り現実に出資した者が株主」という規範を立て、あとはひたすら当てはめた。上記論点を知っていれば、少しの現場思考と当てはめ勝負の簡単な問題だが、意外と受験生の出来は良くないらしい。ここも結構差をつけたはず。

 設問3は、①Gに議決権を行使させなかったこと(310条1項違反)、②Aに議決権を行使させなかったこと(310条1項違反)、③Cが特別利害関係人であること、④Cが議長のまま選任決議を進めたこと(決議方法が著しく不公正)、を書いた。①は典型論点なので厚く書いたが、他3つは現場思考だったので、広く薄く書いた。答案戦略としては正しかったと思う。

 全体的な手応えは、かなり良い。上位5〜15%くらいで、もちろんAだと思う。

 

 

・民訴…A(上位10%)

 

 設問1は、普通に処分権主義の問題を厚く書いた。課題1については、皆ほとんど同じようなこと書いただろうし、差がつかなそう。既判力に言及することは思いつきもしなかったが、それが必要なのか・必要だとしてどれほど重要なのかは、自分にはわからない。少なくとも、合否との関係では、普通に処分権主義を厚く書けば十分だと思う。課題2については、Yに不意打ちとなるとして違法とした(どちらの結論もあり得ると思う)。

 設問2は、出題予想していた訴訟承継だったので、下位規範まで丁寧に論証し、しっかり事実認定をした。伊藤塾の答練、ここでも的中。

 設問3は、課題1では、法的三段論法を意識して157条1項の当てはめを丁寧にした。「合理的な説明ができなければ重過失が推認される」というのは伊藤塾の答練を通じて知っていたが、この時点でYが当事者ではなくなったと勘違いし、「Yの証人尋問を請求して説明を求める」と書いてしまった。多少は点数をもらえるだろうが、正しい条文を引いて論述すべきだった。課題2では、これも伊藤塾の答練に出た問題だったので、訴訟状態帰属効の例外を論証し、丁寧に当てはめた。ここは、意外と差がつきそう。

 全体的に、伊藤塾の答練が的中しまくっていた。やはり、答練はバカにできない。そして、自分の答案は、伊藤塾の分析会で解説された再現答案に酷似している。最初読んだ時は、途中まで本気で自分の答案だと思っていた。おそらく、あの答案と自分の答案はほぼ同様の点数がつくと思う(一部あの答案の方ができているが、一部自分の方ができている)。筋を外さず、得点ポイントはかなり厚く書いたので、上位10%以内には入っていると思う。今年の民訴は、解答筋自体は見えやすかったので、「できた」と思って評価が悪い人が続出すると予想する(自分がそうならないことを祈る)。おそらく、「書き方」で大きな差がつく。

 

 

・刑法…B(上位50%)

 

 設問1は、爆死した。甲に強盗未遂罪と窃盗罪の共同正犯を成立させ、丙に業務上横領罪の共同正犯を成立させ、乙には強盗未遂罪と窃盗罪の共同正犯を成立させた。おそらく強盗罪は未遂も成立しないし、窃盗罪と業務上横領罪を成立させたのは明らかな論理矛盾。答案を書いている途中で論理矛盾に気づいたが、時既に遅し。丙を主人公に考えれば、スッキリとまとめられたに違いない。自分は去年の刑法でも強盗殺人罪ではなく殺人罪を成立させるなど、典型事案から捻られた刑法の問題が苦手である。乙については、共謀共同正犯の成否を厚く論じ、抽象的事実の錯誤も書いたので、特に問題ない。丁は、流石に盗品等保管罪の論点を書けた。やはり、甲と丙でミスったのが痛い。設問1単体だと、おそらく上位50〜70%くらいだと思う。酷すぎる…。

 設問2は、①共謀の射程、②離脱による共犯関係の解消、③207条について書いた。①をやや冗長に書きすぎた感じはある(おそらくメインではない)。メインはおそらく②だが、(1)の途中までそれに気づかず、気づいた時は「あぶねー!!」と思った。これは、正に『刑法事例演習教材』『刑法総論の悩みどころ』で橋爪先生が厚く書いていたところなので、「犯行からの一方的な排除」について、ほぼ橋爪先生の言葉を引用して書いた。③は、207条の適用の可否が問題になることには気づいたものの、「共犯関係がある場合にも適用されるか」という誤った論点を展開した。本来展開すべき論点でもこれに関連する論証を展開する必要があること、令和2年判例を意識した当てはめができていることから、最低限の点数はもらえそう。設問2単体だと、おそらく上位20%以内だと思う。

 刑法は、最も得意な科目だったため、非常に悔しい。今回の司法試験を通じて1番の失敗は、刑法設問1。刑法の論文が終わった瞬間は、結構メンタルがやられていた。

 

 

・刑訴…A(上位3%)

 

 伊藤塾の分析会で再現答案に選ばれたので、以下、岡崎先生の講評を載せる。「設問1①は、関連性の認定が微妙。設問1②は、関連性と包括的差押えを分けて書いたのは微妙。当てはめは良いが、少し冗長。設問2は、集まった再現答案の中ではベスト。ほぼ完璧だが、小問2の絶対的特信情況の当てはめで、時点にも言及できると完璧」。

 上記の講評に、特に異論はない。Aの中でもかなり上位と思われるので、上位3%以内という高めの評価を予想しておく。

 

 

・経済…60点(上位5%)

 

 大学院で独禁法を研究している優秀な友達に出題趣旨・採点実感を書いてもらったので、以下にそれを載せる。

 第1問は、2条6項(3条)と「事業者」に触れた後、「入札談合の場合、基本合意と受注調整に分けられて論ずることが定着しており、不当な取引制限該当性は、基本合意の問題であるから、それが成立するのかを以下論ずる」的な文言が最初にあるといいと思った。Y14の「正確な範囲を知らない」という話は、「共同して」で書いてあったけど、「相互拘束」で触れることも可能(どちらでもいいけど)。それでいわゆる「貸し借り関係」があるから、「相互拘束」充足もOKだと思う。Y15の基本合意からの離脱の論点について、おそらく実務で今後「離脱」が問題になることはほとんどない(課徴金減免制度のため)。その上で、橋梁上部工入札談合刑事事件東京高判の定義が答案には書いてあったね。まあ、公取委事件に落とすのであれば、岡崎管工事件東京高判。これは作成者の意図が不明だけど、アポロが書いていたように、Y2以降は知らなかったから相互拘束から切れていないと読むのか、むしろ、実際に入札結果として、ほとんどが本件合意通りに落札している事実(Y1〜14に事実上協力していた)とY15の独自の積算での入札はむしろ本件合意が継続していたことを示す証左ではないのか、のような見方もできるのかなーと。まあ、より一般的には、Y15以外の連中が、Y15のことをアウトサイダーだとは思っておらず、インサイダーであったと窺われる事実(大きな脅威ではなく静観)から本件合意の中にいたとした方が自然だよね。これは答案に書いたら減点になり得る視点で、「課徴金の賦課は〜論じる必要はない」とあるけれど、アウトサイダーになりたかったら、課徴金減免制度を利用することが自然であり、明確に翻意したことを表明したかどうかという証拠事実は弱い、ということになるよね、普通の世界では。ちなみに減免申請したことを他の事業者に通知することは違反。効果要件は、特にコメントなし(その通りだと思う)。

 第2問は、全体的な話として、行為要件、「公正競争阻害性(自由競争減殺)」、市場画定には触れられていたから良いかなと。X社が「市場において有力な事業者」(シェア、製品特性、代替性等)であることを述べておいて、設問1の措置1について拘束条件付取引というよりも(措置2の設問の存在もあるから)、「その他の取引拒絶」(一般指定2項)、「差別取扱い」(一般指定4項)を作成者は書いて欲しいのかな?いずれにせよ、「市場閉鎖効果」が生じていることの指摘が大事。設問1の措置2について、こちらは、「拘束条件付取引」(一般指定12項)で、排他的リベートの実施だね。こちらも市場閉鎖効果の発生の蓋然性。設問2について、設問1との違いとして、3条と19条の違いを意識できているか、が大事かな?設問1との違いは、市場閉鎖効果に加えて、価格維持効果もある(設問の「価格水準は〜安定した状態」)。その上で、2条5項を論ずるのであれば、「排除」で①「排除効果」、②「人為性」を書く。②は書いてあったけど、①への言及がなかった。(実際は定量的にどうこうわかるものではないけど)措置1と2がそれぞれ単独であれば、公正競争阻害性のみであるが、措置が2つ合わさることで、競争の実質的制限に至った的なことを書いておけば、3条と19条の違いはわかっているな、ってなるのかな。

 「流石」としか言いようがない。今年の経済法は、例年に比べて簡単だった。今日その友達と会ったが、彼は「今年の問題は簡単すぎる。作成者はセンスない」と言っていた笑。確かに、明らかに事実認定で差がつきそうな問題ではある。しかし、競争制限の認定こそが経済法の醍醐味であることを考えると、実力が反映される良問だったと個人的には思う。ダラダラ書きすぎて、第2問の最後が雑になったのは、反省している。事実認定ゲーは得意なので、おそらく60点前後はつくと思う。

 

 

 

〜総括〜

 

 現場での振る舞いは、結構良かったと思う。「本当にわからない問題」は特になく、ほとんどの設問は、問題文の事実・誘導から合理的に考えて正解筋で書けた。予備論文と比べると、明らかに手応えは良い。

 上述のようにいくつか出題予想が的中し、苦手分野がほとんど出題されなかったので、運は良かったと思う。

 C以下がつく科目はなさそうであり、最もできなかった刑法も設問2のおかげでBに踏み止まると思う。他方で、それ以外の6科目は確実にAで、経済法も60点前後だと思う。短答が27位であることも併せ考えると、客観的に見て、99.99%合格している。

 

 

 

 こんな感じですかね〜。刑法で大きな失敗をしましたが、自分の実力は出し切ったので、後悔はないです。合格発表までの間は、最後のモラトリアムを精一杯楽しみたいと思います!