予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

経済法の特徴・勉強方法(過去問のランクを追記しました)

 こんにちは、アポロです。

 リクエストがあったので、今日は、経済法の特徴・勉強方法について書きます。来年からは予備試験でも選択科目が導入されるため、ほとんどの人は選択科目も勉強することになります。ただ、「結局どの科目がいいのか?」と悩んでいる方も多いはずです。なので、そんな方はこの記事で経済法を選択する可能性を考えてみていただきたいです。また、既に経済法を選択された方は、具体的な勉強方法を参考にしてもらえれば良いかと思います。

 私自身、短期間の勉強で模試でA評価(上位2.8%)の成績を取れたこと、今年の司法試験でもそれと同程度の成績を取れた手応えがあることから、一応これらを語る資格はあると思っています。

 なお、「経済法」という名前の科目ですが、独禁法以外は出てきません。なので、以下では「経済法=独禁法」という前提で話を進めます。

 

 

 

〜経済法のメリット〜

 

コスパが良い。覚える量が本当に少ないので、インプットが一瞬で終わる。

 

現実のビジネスに近い問題が多く、ビジネスの用語も結構出てくるため、刺激的。大企業の行為が問題になる事件がほとんどであり、「あの企業も昔こんなことしてたんだな〜」等と思うことが多い。また、最先端の領域も学べる。例えば、少し前に話題になったLINEとヤフーの統合なども、独禁法的な観点から興味深い事例といえる。

 

企業法務との親和性が高い。特に、M&Aにおいては独禁法の知識は必須なので、その道に進む人はいずれ勉強することになる。

 

 

〜経済法のデメリット〜

 

他の選択科目と比べて、「当てはめ勝負」や「条文選択ゲー」になることが多い。つまり、インプットが容易なことの裏返しで、「知っている論点が出た!勝ち!」みたいなことはほとんどない。これは、行政法をイメージしてもらうとわかりやすい(処分性・原告適格の規範は誰でも書ける)。また、「これは何条の問題だ??」と無用に悩まされることがある。これは、憲法をイメージしてもらうとわかりやすい(憲法19〜21条辺りで迷うことはよくある)。現場ではいずれかに決め打ちすることになるが、もし間違えると低い評価となる傾向にある。この辺の解説は、「論理的には○条の適用もありえるけど本問では○条の方が適切。だって、判例(有名ではない)あるもん」みたいにされることがあり、納得いかないことも多い。

 

事案のイメージがしづらい問題もある。複雑なビジネスモデルだったり、テクニカルな方法で独禁法違反をしていると、「結局これは何が起きてるの?」みたいになることがある。特に、私のようにビジネスの前提知識が不足していると、こういうことは起こりやすい。

 

弁護士によっては一生触れない法律である。やはり、労働法や倒産法と比べると、現実世界で登場する事案は限定的である。特に、いわゆる街弁の人はまず使わない法律と思われる。

 

 

〜経済法に向いている人〜

憲法が得意な人は、経済法に向いている独禁法は、「経済憲法」と言われることもあり、思考プロセス・当てはめの感覚が憲法に近い。まず、条文選択で悩む感覚は、人権選択で悩む感覚と非常に似ている。憲法でここを外すことが少ない人は、無意識のうちに正解筋を選ぶ感覚を理解しているため、経済法でも外さないと思う。また、「当てはめ勝負」である点も、憲法と共通するため、憲法の当てはめが得意な人は経済法の当てはめも得意だと思う。さらに、ほぼ毎回「正当化」という議論を展開し、「目的手段審査」をすることになる。なお、よく「刑法が得意な人は経済法に向いている」と言われるが、個人的には憲法の方が相関関係がある気がする。感覚的には、憲法:刑法:行政=5:4:1くらい。この3つのいずれにも苦手意識がない人は、間違いなく経済法に向いていると思う(ちなみに私は憲法・刑法が得意で行政法が苦手です)。

 

将来M&A等の企業法務をやりたい人は、経済法に向いている。やはり、興味があることの方が勉強していて楽しいし、結果的に成績も伸びると思う。

 

 

〜経済法に向いていない人〜

 

憲法が苦手な人は、経済法に向いていない。理由は、上記理由の裏返しである。

 

企業法務に全く興味がない人は、経済法に向いていない。この理由も、上記理由の裏返しである。ただ、東京地検特捜部等では独禁法を使うことがあるため、経済犯罪を扱う検察官になりたい人は、向いている。

 

 

〜経済法の勉強方法〜

 

・まずは、私自身の行った勉強を紹介する。

 

 ①伊藤塾の講義でざっくりインプットした。教材もシンプルで良かったが、学習が進むほど、「これでは不十分」と感じるようになった。

 

 ②『論点解析経済法』を読み進めた。この段階ではどうせ全然解けないので、答案構成すらしなかった。問題と解説を軽く読んで、論点の理解を深めた。

 

 ③とりあえず百選を読んだ。今思えば、コスパが悪い勉強だったと思う。個人的には、百選は必須ではないと思う。読んでも良いが、試験での得点に直結することは多くない気がする。

 

 ④司法試験過去問の答案構成をした(解答例はメルカリで購入)。この段階でも、正直全然解けなかった。結構焦ったが、何周もするうちに典型論点は容易に解けるようになった。

 

 ⑤伊藤塾の『ペースメーカー論文答練』・辰巳の『選択科目集中答練』の問題と解答例を読んだ。選択科目においては、答練の的中率は高いので、絶対に目を通すべきだと思う。他方で、実際に答案を書くのは過去問で十分だと思う。伊藤塾の答練は、全体的に難易度が高かった。辰巳の答練は、基礎的な事項を網羅的に問うており、とても勉強になった。いずれか一方のみに目を通すなら、辰巳の答練をオススメする。

 

 ⑥『論点解析経済法』の答案構成をした。この段階になると、大体の問題は解けるようになっていた。何周もして、苦手な分野を潰していった。

 

 ⑦司法試験過去問の答案構成をし、一部問題については答案作成までした。網羅的に答案構成をしつつ、平成23年以降は、各年度のより重要度が高い方の問題の答案作成をした。この段階になると、大体は解けるようになっていた。何周もして、苦手な分野を潰していった。

 

 ⑧『1冊だけで経済法』を参考にしながら、本格的に論証を暗記した。

 

 ⑨『条文から学ぶ独占禁止法』を読み、適用条文の峻別・論点等の理解を深めた。コンパクトに要点がまとまっており、とても試験向きの本なので、強くオススメできる。なお、金井他著の『独占禁止法』の方が有名だが、司法試験との関係では明らかにオーバースペックなので、あまりオススメできない(授業で使ったから一応持っていた)。

 

 ⑩『論点解析経済法』・司法試験過去問・論証の暗記・答練の復習を繰り返した

 

・今振り返っても、百選を読んだこと以外は正しい勉強だったと思う。もし勉強方法に迷っている人がいれば、是非参考にしてほしい。

 

・3月にアガルートが『経済法過去問解析講座』を出したため、今なら④の段階でこれを受講することをオススメする。現時点で、他の予備校による過去問講座は見当たらない。

 

・平成19〜20年の問題は異常に難易度が高いので、スルーして良いと思う。再度の出題可能性という観点からみても、重要度は高くない。

 

・平成21〜28年は、難易度が安定しており、良問も多いので、積極的に答案作成すべき。

 

・平成29年〜令和2年も難易度が高いが、再度の出題可能性に備えて、答案構成くらいはすべき(ちなみに令和3年は比較的簡単だった)。

 

・主に予備受験生向けに過去問にランクを付けたので、良かったら参考にして下さい。

A…H21①、H22①、H23②、H24①、H25①、H26①、H27②、H28①、H29①、R1①、R3①

B…H18①、H19①、H21②、H22②、H23①、H24②、H25②、H26②、H27①、H28②、R1②、R2②、R3②

C…H18②、H19②、H20①、H20②、H29②、H30①、H30②、R2①

 

・課徴金について、令和元年に大きな改正があったため、解答例・演習書・基本書・答練等がそれに対応しているか逐一確認することをオススメする。なお、『条文から学ぶ独占禁止法』は、小冊子で改正についてまとめたものがついているため、この点でもポイントが高い。

 

 

 

 こんな感じですかね〜。個人的には、凄くコスパが良い科目だと思っているので、経済法を強くオススメします!