予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

令和元年予備試験商法

 こんにちは、アポロです。毎日過去問生活33日目、今日は令和元年予備試験商法を解きました。

 完全な初見ではないですが、実際に書いたのは初めてです。かかった時間は76分でした。

 

〜選んだ解答筋〜

・設問1

 ①決議事項として予定されていないとの主張→取締役会では問題ない→×

 ②特別利害関係取締役ではないとの主張→代表取締役とは異なり影響力ないので当たらない→特段の事情ない限り無効→特段の事情なし→無効→○

・設問2

 ①40株の議決権行使否定→決議方法の法令違反(831Ⅰ①)ありと主張

 ②対抗要件(130Ⅰ)ないとも思える→しかし不当拒絶→名義書換不当拒絶により信義則上権利行使を拒めない→○

 ③株主の基本的な権行使を拒否した違法は重大、BCDEの準共有にある100株については権利行使の指定及び通知なし→106本→定足数から除かれる→残り100株のうち更に40個の反対があれば過半数の賛成ない→決議の結果に影響→裁量棄却なし

 ④○

 

〜個人的な反省〜

・設問1について、Dは特別利害関係取締役には当たらないと考えたため、取締役会の無効事由について検討した。そこまでは良かったが、監査役のFも定足数に含めてしまったため、「Dが議決権行使してれば過半数の賛成ない→特段の事情なし」という結論にしてしまった。完全な凡ミスである。このようなミスで大幅に減点されるとは思わないが、結論が逆になってしまうので、印象は良くないと思われる。

・設問2について、不当拒絶の認定をしてから「名義書換の不当拒絶」を書こうとしていた。しかし、本問ではどうやって不当拒絶の認定をして良いかわからなかった。規則の条文等を探したが、なぜか134条4号の存在に気づかなかった(灯台もと暗し)。ただ、直感的にどこかに「会社分割の場合は譲渡承認請求不要」的な条文があるんだろうなとは思った。なぜなら、「相続の時は譲渡承認不要」という短答知識はあり、部分的包括承継とも言われる会社分割で承認請求が必要というのはおかしいと考えたからである。そのため、「Cは甲社取締役会による承認について決議していないのであるから」等と謎の理由でとりあえず不当拒絶と認定した。この判断自体は現場レベルでは賢明だったとは思う。ここで悩んだ結果、不当拒絶ではないと認定するよりも、とりあえずは不当拒絶と認定して話を進める方が、点数が高くつくからである。とはいえ、問題がある認定なので当然ながら減点される。ここから学ぶべきことは、①普段から短答に出てきた条文には目を通す、②現場では落ち着いて周辺の条文を探す、③それでもわからなければ無視して進める、ということである。

・設問2について、106条本文を指摘して「100株は定足数から除かれる」という結論は出せているが、それを裁量棄却で書いている。当然に定足数から除かれると考えていたので、あえて取消事由として主張させることは考えなかった。問題文には、「株主総会の定足数及び決議要件について、別段の定めはない」という書かれていることから、何とか気づきたい法律構成であった。

 

〜問題の分析〜

・設問1は比較的平易、設問2は難問。

・設問1について、まずは「取締役会の目的事項以外の決議」が問題となるが、これは当然に許される。理由は一言であっさり終わらせたい。ここを長々書いた答案ほど後半が雑になり、評価が悪い傾向にある。ここの配点が高いとは思えないので、書き足りないくらいで終わらせるのが賢明である。

・設問1について、次に「取締役会の特別利害関係人」が問題となる。ここは三段論法をして丁寧に当てはめたい。その際には、「最判昭和44年3月28日……との距離感を踏まえて検討することが求められる」(出題趣旨より)。同判例が「代表取締役は……会社の経営、支配に大きな権原と影響力を有し」という理由を挙げていることを知っていれば 、当然出てくる問題意識である。予備試験商法で判例の射程を問う問題が出たのは、おそらく初めてだと思う(何を「判例の射程問題」と定義するかにもよるが)。しかし、再現答案の多くは形式的に定義に当てはめるのみで、当然のように特別利害関係人と認定していた。本問はいずれにしても結論は変わらず、これに気づかなかった人が減点されたというより、気づいた人が少し加点されたくらいであると思われる(当てはめで「代表取締役の解任の場合と異なり(同様に)」という形で理解をアピールできる)。これは、採点者に「機械的判例を学習している」という印象を与えた可能性が高い。そのため、今年も判例の射程を問う問題が出ることは十分想定される。

・設問2について、「名義書換の不当拒絶」が問題となる。これに気づかなければ土俵にも上がれない。130条1項の対抗要件がないことを指摘した上で、不当拒絶の認定を丁寧にしたい。ただ、現場で134条4号を引くのは容易ではない。しかも、出題趣旨によれば、同号の解釈まで要求されていた。これは流石に無理である。134条4号を引ければ上位、その解釈まで示せれば超上位という感じであろうか。134条4号を引けなくとも、A評価の答案は多い。出題者は「134条4号該当性」という論点を設定したのかもしれないが、それを論じた答案はほぼ皆無であった。一番多いのは、「そもそも請求していないから不当拒絶はない」という答案である。その結果、ここで点数の差をつけることは困難になり、「名義書換の不当拒絶」という論点を展開していれば何とかなった。

・設問2について、「106条本文により権利行使できない株式が議決権の定足数に含まれるか」も問題となる。この論点が再び出題されるとは考え難いので、論点自体の深い検討はしない。この論点を事前に知っていた受験生はほぼ皆無だと思う。知っている必要もないし、出題者もそんなことは期待していない。ただ、現場でこれを適切に論じている答案は一部にはあるし、A評価の再現答案のほとんどが、少なくとも106条本文を引いて問題の所在には触れている。

 では、「どうすれば現場でこれに気づけたのか」。結論として、「問題文の事実に食らいつくこと」に尽きる。具体的には、①正確に事実関係を把握し、②当事者の主張も正確に把握した上で、③問題文のヒントに敏感になる、ということである。これは令和元年予備試験民法の記事でも書いたことだが、商法においても全く同じである。この思考プロセスを徹底的にできていれば、最低限の知識でA評価の答案が書ける。面白いことに、この年の論文試験で2桁順位の人は民法と商法でA評価(悪くてもB評価)をとっている傾向があり、不合格者は両方とも成績が悪い傾向にある。そのため、両者の成績には相関関係がありそうである。その原因を考えると、やはり「思考プロセスが同じだから」という結論に至る。

 本問に関して具体的にいうと、事実1の「株主総会の定足数及び決議要件について、別段の定めはない」という部分から、それらが問題になるのではないかという推測ができる。過去の予備試験商法でこのような事実が記載されたことはあまりない(平成28年では記載されていた)。つまり、過去問等の演習を通じて「経験値」を積んでいる人ならば、ここでセンサーが反応するのである。また、事実4の「当該株式については株主名簿の名義書換や共有株式についての権利の行使すべき者の指定がされないままであった」との記載もいかにも怪しい。平成28年の過去問を解いている人ならば、これが106条本文の問題であることに一瞬で気づく。この時点でもう勝負は決まっている。あとは、これをDに主張させるための法律構成を考えるだけである。これに成功すれば上位答案だが、これに失敗してもA評価の可能性は十分ある。なぜなら、受験生の大半は106条本文を引用すらできないからである。これが本問で合格答案を書くための思考プロセスだったと思われる。

 要は、予備試験の商法の問題文において、「無駄な事実は基本的に書かれていない」と思って問題文を読むべきなのである。対立に至った動機や詳細な事実経過については意味のない記載も多いが、少なくとも「定足数」や「指定」といった法的事実について無駄な記載がされることは少ない。問題文をよく読むことの重要性は誰もが知っている。ただ、上位合格者はおそらくその「よく読む」のレベルが違う。一つ一つの事実に法的な意味がないかを疑い、センサーを張り巡らせて読んでいる。たったこれだけの違いで大きな差がついてしまうというのだから、改めて恐ろしい試験だとも思う。この本質に気づかなければ、何年勉強しても点数が安定しない。その結果、予備試験がただのギャンブルになってしまう。

 

〜予想採点実感〜

・この年の出題趣旨は、平成30年と同様に比較的詳細であり、ここから採点者が何を感じたかはある程度読み取れる。そのため、「合理的推測を含めた出題趣旨の意訳」を予想採点実感とする。

・設問1

 ①「取締役会の目的事項以外の決議」は簡潔でいいよ。

 ②「取締役会の特別利害関係人」は判例の射程を考えて論じろ。

・設問2

 ①「106条本文により権利行使できない株式が議決権の定足数に含まれるか」について論じてるやつ少なすぎ。

 ②「名義書換の不当拒絶」は皆書けてたけど、134条4号引けてるやつがそもそも少ない。

 

 

 こんな感じですかね〜。実は、本問を解いてる時に、「あ、予備試験商法の解き方わかった」という感覚になりました。書き始めた瞬間に、何となく出題趣旨・採点実感が見える感覚です。その結果、決して上位答案ではないですが、合格レベルの答案は書くことができました。要は、自分の大きな成長を感じたのです。約1年半勉強してきて初めての感覚だったので、驚きました。具体的には、以下のような気づきがあり、それを気づいた自分に成長を感じました。

 ①「取締役会の目的事項以外の決議」で書き過ぎたら後半で詰むことに気づき、あえて簡潔に記載した。これが今まで本当にできなかった。自信のある論点だとどうしても書く分量が多かった。

 ②「取締役会の特別利害関係人」・「瑕疵ある取締役会決議の効力」の双方で、別々の判例の射程が問題になることに気づいた。何が基本で何が応用なのか、肌で感じながら解けた。出題趣旨で引用されるであろう判例もわかった。

 ③134条4号は引けなかったが、短答知識からそのような条文があると確信していたため、不当拒絶という認定だけはしておいた方が良いと気づいた。今までだと、「そもそも請求していないから不当拒絶はない」と認定していた。そんな問題が出るわけない、と強く感じたため、結論だけは間違えずに済んだ。

 ④106条本文が定足数との関係で問題になることに一応気づき、何とか触れられた。過去問演習の成果である。知識・感覚の両方が磨かれた。

 うまく理由は説明できないですが、たぶん今受けても商法はA評価を取れる気がします。予備試験商法の本質をやっと理解した気がします。あとは短答対策の過程で細かい条文知識を入れて、過去問や答練の演習で実力を維持・向上させれば良いと感じています。根拠はないですが、そう確信しています。

 

 今日の一曲…illion - 85