予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

令和元年予備試験民法

 こんにちは、アポロです。毎日過去問生活32日目、今日は令和元年予備試験民法を解きました。

 完全な初見ではないですが、実際に書いたのは初めてです。かかった時間は58分でした。

 

〜選んだ解答筋〜

・設問1

 ①Dは所有権有しないとの反論→CとDは対抗関係(177)→Dが所有権移転登記具備→×

 ②法定地上権が成立するとの反論→要件充足→○

・設問2

 短期取得時効→「他人の物」ではないが○→その他の要件も充足→○

 

〜個人的な反省〜

・設問1について、Bに所有権移転登記があることに違和感があったが、法定地上権という馴染みのないテーマで暴走するのが恐かったので、無視した。ただ、「悩んだら一言書く」という姿勢さえあれば加点されたはずなので、少しもったいなかった。

・設問2について、「Cは、平成20年4月1日時効取得(162条2項)を原因とする本件土地の抵当権設定登記の抹消登記手続請求をする」と最初に書いたが、「所有権に基づく妨害排除請求」という大きい枠組みから書くべきであった。

・設問2について、「時効完成前の第三者」の論点を落とした。「所有権を取得できるか」というレベルの議論と、「取得した所有権を対抗できるか」というレベルの議論に分けずに検討したため、「取得時効成立=Cの請求は認められる」という答案になってしまった。

 

〜問題の分析〜

・問題の所在に気付けるかで勝負がついた問題。

・設問1前段について、平成23年平成27年の過去問をやった人ならば、ここで致命的なミスはしなかったはずである。ちなみに私は答案において以下のように書いた。不正確な表現も含まれているが、十分合格レベルだとは思う。

 「AC間贈与に基づく所有権移転登記はされていなかったため、本件土地の所有権は不完全な状態でCに移転していたにすぎない(176条)。そして、その状態でBがAを相続(896条本文)し、BはAが有していた本件土地の所有権を一応相続している。なぜなら、Aは本件土地の完全な無権利者ではなかったからである。かかる状況でDの抵当権が設定されており、その実行によってDが所有権を取得している。この段階でCとDは対抗関係(177条)に立っていたが、本件土地についてDへの所有権移転登記がされたことで、Dがその所有権を確定的に取得している。」

 赤文字部分が不正確と考える理由は、以下のようなツッコミが予想されるからである。

 ①「ここで176条を引用するのは適切か?」←知らん。

 ②「『一応』って何?」←Aは完全な無権利者ではないから所有権の相続は可能って意味。

 ③「『かかる状況』って何?」←抵当権設定契約は物権契約だから「当時所有」が要件になるけどそれは満たしてるって意味。

 ④「Dが抵当権設定契約をした時点でCとは対抗関係(177条)になっていて、抵当権設定登記を具備した時点でDの抵当権がCの所有権に優先することが確定する。Dは有効かつCに優先する抵当権の競売により所有権を取得してるから、当然にCに優先する。つまり、Dの所有権移転登記具備で勝負がついたわけではないのでは?」←それは多分そう。ただ、後述するように、ここは多くの受験生が勘違いしたところだし、その後の解答にも特に影響しないから、許して。

 ④については、ほとんどの受験生が間違えている。赤文字部分を一見すると、「抵当権が所有権に優先…?」という感じがする。確かに、これらは一時的には両立し得る。しかし、抵当権設定登記が有効に設定され、Cへの対抗要件を具備すれば、その後Cが所有権移転登記を具備しても、抵当権の負担付きの所有権しか取得できなくなる。その結果、競売により買い受けたDにも対抗できなくなる。要は、「所有権と抵当権は、一時的には両立するけど、競売まで見据えると両立しない物権」なのである。設問にも、「Dの抵当権が設定されるより前に」と書いてあり、出題趣旨にも「抵当権設定と贈与による所有権移転との対抗関係」と書いてある。このことから、出題者としては、専ら「抵当権設定vs贈与による所有権移転」について論じて欲しかったのであり、「競売による所有権移転(?)vs贈与による所有権移転」を論じて欲しかったわけではないと思われる。そのため、赤文字で書いている思考過程が正しいと思う。ただ、現場レベルでここに気づくのは至難の業であるし、気づいたとしても相当な自信・確信がない限りこのように書くのは難しい。よくわからない点は無視し、多くの受験生が論じるであろう筋に乗っかるのが安全である。

・設問1後段については、法定地上権が問題になることに気づけるかで勝負がついた。気づくための思考過程としては、「何を聞かれているんだ?占有権原?賃貸借契約とかはないけど、問題文にヒントはないか?事実5に『対抗力のある借地権の負担があるものとして本件土地の担保価値を評価』とあり、設問には『法律上の占有権原』とあるから、法定地上権か?うん、多分そうだ」という感じになるかと思われる。論文試験で388条を引くことは多くないので、一見すると気づきづらい。ただ、落ち着いて問題文の事実に着目すれば、何とか気づけたと思われる。この辺りは、表面的な知識ではない「経験値」がものをいうところであり、大きく差がついてしまった。

 基本的に要件に当てはめれば合格レベルであるが、「同一の所有者に属する」という要件との関係で、Cが所有権移転登記を具備していないことが問題になる。典型論点ではないので、無視するか、「テキトー」に処理して終わらせれば十分である。現場レベルの思考過程としては、「そもそもなぜ登記がないと問題なのか→予想外の法定地上権が成立し、抵当権者に不測の不利益となり得るから→でも抵当権者は土地上の建物に対抗力があることを前提に土地の担保価値を評価するのが通常→実際に本問のDもそうだった→問題ない」という感じになる。解いてて感じた「違和感」を素直に答案に表現し、自分なりの考えを示せれば、十分上位答案となる(「間違い」を恐れて書かないのはもったいない)。

・設問2については、所有権に基づく妨害排除請求であることを明示し、2つの所有権取得原因をそれぞれ検討する。贈与についてはCが負けることまでは誰でも気づく。次に短期取得時効について検討することになるが、これに気づくのは意外と難しい。気づくための思考過程としては、「これで答案を終わらせて良いとは思われない。設問1と何が違うのか。問題文をよく読んでみると、設問2では『平成30年』になっている。事実1で占有開始がされたのは、平成20年。そうか、短期取得時効か」という感じになる。これもまた過去問や答練の演習を通じた「経験値」により気づけるかが決まる。

 あとは要件に当てはめるだけであり、「他人の物」についても、三段論法は不要だと思う。むしろその後の「時効完成前の第三者」すなわち「対抗要件の要否」の検討が重要である。これは典型論点の一つなので、取得時効に気付いたらここまで書きたい。結論として、Cの請求は認められる。

 

〜予想採点実感〜

・この年の出題趣旨は、平成30年と同様に比較的詳細であり、ここから採点者が何を感じたかはある程度読み取れる。そのため、「合理的推測を含めた出題趣旨の意訳」を予想採点実感とする。

・設問1

 ①「抵当権設定vs贈与による所有権移転」が問題なのに、「競売による所有権移転(?)vs贈与による所有権移転」で論じてるやつ多すぎ。

 ②問題文にヒントあるんだから、まずは法定地上権に気づけ。その上で「同一の所有者に属する」の要件を解釈して当てはめろ。

・設問2

 ①短期取得時効の要件検討しっかりやれ。

 ②397条も問題になるぞ。

 ③「時効完成前の第三者」も論じろ。

 

 

 こんな感じですかね〜。「去年の予備試験では法定地上権・取得時効が出た」というのは事前に知っていたため、ある程度の答案は書けました。ただ、完全な初見で現場で解いていたら、それらに気づかない可能性もあった気はします。そのため、「どうしたら初見でもこれらに気づけるのか」という視点で問題を解きました。結論としては、やはり「問題文の事実に食らいつくこと」に尽きるかと思います。具体的には、①正確に事実関係を把握し、②当事者の主張も正確に把握した上で、③問題文のヒントに敏感になる、ということです。これらは他の科目でも当然要求されますが、予備試験民法は事実関係が複雑なことも多く、これらを意識的に実践しないと失敗する可能性が高いです。そのような目的意識を持った上で過去問や答練で経験を積めば、点数が安定するのだと思います。がむしゃらに知識を増やすような勉強は非常に効率が悪いので、そこだけは間違えないように気をつけます。上記①②③の能力は付け焼き刃で何とかなるものではないので、これからの演習で地道に高めていきます。

 

 今日の一曲…ゆず - 超特急