予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

平成30年予備試験商法

 こんにちは、アポロです。毎日過去問生活31日目、今日は平成30年予備試験商法を解きました。

 実際に答案を書いたのは、10ヶ月ぶり2回目です。かかった時間は72分でした。

 

〜選んだ解答筋〜

・設問1

 「6箇月」○→「100分の1」?→特段の事情ない限り株主総会まで保有する必要→特段の事情なし→要件不充足→違法なし

・設問2(効力発生前)

 ①423Ⅰ→任務懈怠?→名義説→直接取引(「自己……のため」)→365・356Ⅰ②違反はない→1800 万円の「損害」→423Ⅲ①で任務懈怠推定(なお423Ⅳ括弧)

 ②428Ⅰ括弧により無過失責任

 ③「よって」○、「損害」○

 ④425Ⅰ①ハ→株主総会特別決議で600万円を限度に免除され得る

 ⑤1200万円については確実に責任負う

 

〜個人的な反省〜

・設問1について、「8週間……前までに」請求するという要件を落とした。本問では特段問題となる要件ではないが、メインが応用論点であるだけに、基本的な要件は漏らさず検討すべきだった。

・設問2の直接取引該当性について、当然のように「自己……のため」と認定していた。名義説からもこのような認定は許されるため、結論自体には全く問題はない。しかし、その理由を答案に表現できなかったのが問題である。頭の中では「Bが丁社の全部の持分を有するため、丁社=B」と考えていたのだが、答案でそれを表現できなかった。特に本問では、後述するように、自己のための直接取引と見るのか、第三者のための直接取引と見るのかで、結論に至るアプローチが変わってくる。そのため、ここは理由を書いて丁寧に認定すべきであった。

・設問2の損害額について、自己のための直接取引と考えた場合、428条2項により427条1項の適用が排除されるため、Bに重大な過失がなくとも責任限定契約により損害額を限定することはできない。しかし、私は2つの勘違いをしていたため、重大な過失を否定した上で責任を限定するかのような検討をしてしまった。第一に、責任限定契約の根拠条文が425条1項だと思っていたため、そもそも427条1項を引けなかった(その結果、「株主総会特別決議で免除され得る」等と書いてしまった)。第二に、428条2項で適用が排除されるのは426条と427条だけだと思っていたため、425条1項は排除されないと書いてしまった(排除されないのは424条)。自己のための直接取引と認定しつつ責任限定契約による損害額限定の余地を認めることは明らかな論理矛盾であるため、大幅に減点されるはずである。

 

〜問題の分析〜

・応用論点と条文操作の組み合わせであり、ミスなく解答することは意外と難しい問題。

・設問1について、論点抽出ができるか否かで勝負がついた。一見すると何を聞いているかよくわからないが、そんな時こそ落ち着いて問題文をよく読みたい。そのような思考過程で、いかにも怪しい事実5に着目すれば、持株要件判断の基準時的なことが問題となることに気がつく。事前に論証を用意していた受験生はほぼいないはずので、現場思考問題として割り切るしかない。そうだとすれば、なおさら丁寧に要件検討をする必要がある。丁寧に要件を認定したら、論点自体は「テキトー」に処理して終わりである。検査役選任請求権の判例を応用したり、何かしらの判断枠組を設定すれば、一応何とかはなる。A評価の再現答案でも、ここは答案によって書いている内容が大きく異なる。つまり、設問1は、最低限の要件検討・論点抽出ができれば、それ以上の論述内容ではほとんど差がついていない。本問の勝負は、皆がある程度書いてくるであろう設問2である。設問1に応用論点が出てきた時には、「さっさと切り上げる」ことが何よりも重要である(ここで時間を使いすぎると設問2が全然書けずに爆死する)。

・設問2について、直接取引に当たることに争いはない。問題は、①自己のための直接取引と見るのか、②第三者のための直接取引と見るのか、である。ここは名義説の中でも争いがあり、これにより結論に至るアプローチが変わるため、設問2では最大の論点である。ただ、これを論じている段階でそこに気づいた人はほとんどいないため、あっさり認定している答案が比較的多い。そのため、ここの論述自体では差がついていない。それよりも大切なのは、自己の立場から、後述するような論理矛盾を起こさないことである。手続的な要件(365条・356条1項2号)に問題はないが、直接取引により1800万円の損害が発生したことで、任務懈怠が推定される(423条3項1号)。ここで423条4項括弧書に触れられていると、抜かりない。

 帰責事由(過失)については、①のように考えると、その不存在による免責の余地はない(428条1項括弧書)。②のように考えると、その不存在による免責の余地があると解されるので、その認定をする必要がある。いずれにせよ、責任自体は肯定される。

 そして、本問最大の山場は、損害賠償責任の額である。①のように考えると、428条2項により責任限定契約(427条1項)の適用が排除されるため、1800万円全額について責任を負う。②のように考えると、428条2項により427条1項の適用が排除されることはないため、「重大な過失」がなければ責任が限定される。ただ、本問の事情からは、Bには少なくとも重過失があるとするのが素直な認定である。そうだとすれば、いずれの考え方を採用しても、具体的に免除され得る損害額について検討する実益はない。ただ、「いずれの場合でも、損害賠償責任が発生するとしたときは、具体的な賠償責任額を算定しなければならない」(出題趣旨より)。そのため、「責任限定契約によれば、600万円は免除される結果(425条1項1号ハ)、1200万円の限度で責任を負うが、(①及び②のいずれかの理由から)本問では責任軽減が認められないため、1800万円全額の責任を負う」というのが完璧な解答ということになる。ただ、実際にこのような具体的計算をした答案は多くなく、自分の立場から「論理的矛盾のない適切な理由で責任軽減が認められないことを指摘していれば基本的にA評価」であった。

 

〜予想採点実感〜

・この年の出題趣旨は、例年のような「論点の羅列」ではないため、ここから採点者が何を感じたかはある程度読み取れる。そのため、「合理的推測を含めた出題趣旨の意訳」を予想採点実感とする。

・設問1

 ①要件検討しっかりやれ。そしたら論点に気づくだろ。

 ②法的三段論法しろ。

・設問2

 ①423条3項・4項に触れろ。

 ②結論同じでもアプローチが変わるから、「自己のため」か「第三者のため」のどっちに当たるか丁寧に認定しろ。

 ③問題文に詳細な事実が書いてるんだから、実益なくても損害額は算定しろ。 

 

 

 こんな感じですかね〜。設問1は、現場で正しい振る舞いができれば、知識がなくても何とか逃げ切れる問題でした。設問2は、平成28年・平成29年同様、「条文力」が点数に直結する問題でした。今回も条文の理解不足による致命的なミスをしてしまい、改めて自分の実力のなさを痛感しました。424〜428条の条文をあと少し正確に理解していれば、そのようなミスは防げました。論文試験の後にこのような後悔をしないために、条文知識の精度を高めていきます。

 

 今日の一曲…Hardwell & Quintino - Baldadig