予備試験無双

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平成28年予備試験商法

 こんにちは、アポロです。毎日過去問生活29日目、今日は平成28年予備試験商法を解きました。

 完全な初見ではないですが、実際に書いたのは初めてです。かかった時間は75分でした。

 

〜選んだ解答筋〜

・設問1

 原則拒める→民法110条類推→転得者も「第三者」→丙社に「正当な理由」あり→拒めない

・設問2(効力発生前)

 ①招集通知欠缺→299Ⅰ違反→831Ⅰ①→裁量棄却なし→○

 ②権利行使者の指定通知せずに議決権行使→H27年判例→違法→831Ⅰ①→裁量棄却なし→○

 ③合併差止請求(784の2①)→本件株主総会の取消事由は法令違反→○(仮処分も)

・設問2(効力発生後)

 ①吸収説→合併承認決議の取消事由は重大な瑕疵→無効事由→3ヶ月の期間制限あり

 ②429Ⅰ

 

〜個人的な反省〜

・設問1について、乙社が民法110条類推適用で保護されれば、丙社はその裏書譲渡を受けた者として当然に請求することができる。そのため、丙社自身が「第三者」に当たる必要はなく、「正当な理由」が認められる必要もない。丙社ではなく、乙社についての「正当な理由」を検討すれば足りた。

・設問2(効力発生前)の本件株主総会について、126条4項の存在に気づかず、15行も使って招集通知欠缺の瑕疵について論じてしまった。本問における最大のミスである。確かに書いていて違和感はあった(「あくまでA名義の株式なのに、DとEが『自分にも通知しろ』って言えるのか?」的な)。もし短答知識として126条4項の存在を何となくでも知っていれば、この違和感から現場で条文を引いて正解に辿り着けたはずである。商法の論文試験では、いわゆる「短答プロパー」の条文知識が勝負を分けることもあるので、論文を意識した短答の勉強をしていく必要がある。

・設問2(効力発生前)の吸収合併差止請求について、差止請求適格(決議取消の訴えの原告適格)について一切論じなかった。答案構成段階で書くことが多すぎることに気づき焦った結果、訴訟要件の検討が雑になり、この点に考えが至らなかった。126条4項に気付いていればもう少し余裕が生まれてこの点に気付いた可能性があるので、ミスが連鎖した結果ともいえるかもしれない。また、同様の理由で、「不利益を受けるおそれ」の認定も落としている。

・設問2(効力発生後)について、「429条1項に基づいてBの責任追及もできる」とだけ書いたが、よく考えたら何が「損害」なのかわからなかった。

 

〜問題の分析〜

・考えれば考えるほど論点が出てくる問題で、相当に難易度が高い。

・設問1について、原則論を示し、表見代理の類推適用についてを論じていれば、十分合格レベルだと思われる。本問は他にも隠れた問題点がいくつかあるが、手形法はよくわからないので、その検討は割愛する。

・設問2(効力発生前)について、決議取消訴訟と差止請求という手段が考えられる。これらは別個の手段としても考えられるので、別々に検討しても論理的な問題はないと思われる。ただ、現実問題としては差止請求の中で決議取消事由を主張する形になるはずなので、そのような構成の方がスマートかもしれない。

 そのような構成では、まず問題となるのは請求適格である。前提として、相続によりAの株式がCDEの準共有となっていることを確認する。そして、差止請求権も共益権のひとつであるため、106条本文により株式共有者は権利行使者の指定・通知をしなければ差止請求ができないと考えられる(最判平成2年12月4日の射程は差止請求にも及ぶはずである)。そのため、決議取消訴訟原告適格の議論を応用し、判例のいう「特段の事情」の有無について検討することになる。甲社において、権利行使者の指定・通知がないCの議決権行使を認めつつ、権利行使者の指定・通知がないことを理由にDの請求適格を否定することは、矛盾挙動として信義則に反するため、「特段の事情」があるといえそうである。ただ、この点に触れられている答案は半分以下であり、ここを落としても合否には直接影響しないと思われる(もちろん書いていればそれなりに加点されるはずではある)。

 次に問題となるのは、本件総会決議に取消事由が認められるかである。DとEに招集通知が発せられていない点については、端的に126条4項を指摘すれば終わりである(【設問2】のなお書きは、これを書かせるためのもの)。本題は、最判平成27年2月19日の論点である。詳述はしないが、この判例を理解していなければ解くのはほぼ不可能である(現場思考で何とかなる類の論点ではない)。基本的には判例の論理がそのまま妥当し、違法となる。ただ、判例は、「共有に属する株式についての議決権の行使は、当該議決権の行使をもって直ちに株式を処分し、又は株式の内容を変更することになるなど特段の事情のない限り、株式に関する行為として、民法252条本文により、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決せられる」としており、本問ではこの「特段の事情」があるとみる余地は十分にある。なぜなら、合併などの組織再編行為に関する議決権行使であれば、準共有株式についての議決権行使は持分の過半数で決することはできず、変更行為として全員の同意が要求される(251条)、と考えられるからである(百選p29参照)。本問ではそもそも過半数の要件すら満たしていないため、これを管理行為とみても違法である以上、この議論の実益はない。ただ、判例のいう「特段の事情」は論文試験では頻出であり(現にこの年も平成2年判例のそれが問われている)、仮に本問でCが過半数の持分を有していたとすれば、結論が逆になる。「特段の事情」とは具体的に何なのか、という部分まで理解しておくと、こういう部分でアドバンテージになり得る。

 最後に問題となるのは、決議に取消事由があることが差止請求における法令違反に当たるかである。『事例で考える会社法【第2版】』p106〜107によれば、これは差止請求における法令違反とはならないと解するのが一般的なようである。しかし、決議取消事由が合併無効の訴えの無効事由になることとの均衡から、やはりこれも差止事由における法令違反として認めるべきだと考える。法令違反として認める見解の問題点は同書に詳しく書かれているが、受験生としてはこの点に触れてさえいれば十分である(ここに触れている答案はほとんどないので、触れられているだけで相対的に浮上する)。

・設問2(効力発生後)については、①吸収説、②合併無効事由は重大な瑕疵に限定、③決議取消事由は重大な瑕疵、④ただし出訴期間内に限定、という形で論じるだけである(①は④の中で論じることも可能だが、書き忘れないために最初に軽く触れるのが良いと考える)。ここは特に悩ましい点もなく、典型的な問題であるため、ミスなく確実に点数を取りたい。

 

〜予想採点実感〜

・「手形署名(記名捺印)の代行による手形行為の有効性及び有効でないとした場合における被偽造者の手形債務の負担の有無」(出題趣旨より)については、原則として甲社は責任を負わないことを示せている答案は多かった。しかし、表見法理の類推適用の可否について検討している答案は思いのほか少なく、手形法の学習が疎かになっていることが懸念される結果となった。

・「株主総会の招集通知についての会社法第126条第4項の規定の適用」(出題趣旨より)については、同項を指摘できていた答案はほとんどなく、大多数の答案が299条1項違反として本件総会決議の取消事由になると結論づけていた。126条4項は基本的な条文であるし、仮に同項の存在を知らなくとも、甲社がA名義の株式についてC以外の共有者にも通知を発する必要があることに違和感を感じれば、同項を引くことは可能であると思われる。基本的な条文知識を今一度確認することを強く推奨したい。

・「株式の共有者のうちの一人による議決権の行使につき会社が同意した場合(会社法第106条ただし書)に当該議決権の行使が適法とされるための要件(最高裁平成27年2月19日判決……参照)を前提に、吸収合併の効力発生前においては株主総会の決議の取消しの訴え(会社法831条第1項第1号)の可否及び合併の差止請求(会社法第784条の2)の可否」(出題趣旨より)についての検討が求められたが、上記判例の理解を正確に示せている答案はそれほど多くなかった。知識をアップデートしていく姿勢は法曹に欠かせないものであるから、比較的新しい判例についても、正確に理解した上で試験に臨むことが求められる。また、Dの原告適格(請求適格)についても判例を意識した論述が求められたが、多くの答案ではそこに触れてすらいなかった。さらに、株主総会決議の取消事由が差止請求における法令違反に当たるかという点についても、触れられている答案は極めて少なかった。784条の2は平成26年改正で加わった比較的新しい条文ではあるが、そのような条文の要件・解釈も正確に理解して試験に臨んでほしい。なお、同条に基づく差止請求権を被保全権利とする仮処分(民事保全法23条2項)の申立てについても当然に言及を要するが、この点を検討していた答案はほとんど見られなかった。

・「吸収合併の効力発生後においては合併無効の訴え(会社法第828条第1項第7号)の可否」(出題趣旨より) については、多くの答案では、合併の無効事由の一般論についての理解を示せていた。ただ、株主総会決議の取消事由が合併無効事由たり得るのか、無効事由になるとしていつまでかかる取消事由を主張できるか、という基本的事項について、いわゆる吸収説などの自説から説得的に論じている答案は多くなかった。時間や紙幅との関係で満足に論ずることができなかったと思われる答案も見られたが、答案構成の段階で答案全体のバランスを考えてから論述すれば、そのような失敗はしないはずである。書くべきことが比較的多い問題だったかもしれないが、そのような工夫をして最後まで充実した論述をするよう心がけてほしい。

 

 

 こんな感じですかね〜。答案構成段階で絶望するくらい書くべきことが多い問題でした。しかも隠れた応用論点が複数含まれていて、場合によっては「論点に気付いても無視する」ということも求められました(上記の「問題の分析」ではそれらについて検討していないです)。最新判例平成26年改正に関する知識も正面から問われており、難しいです。個人的には、126条4項を引けなかったのが本当に悔しいです。細かい条文も「短答プロパー」と考えず、一つ一つ地道に理解を深めていこうと思います。

 

 今日の一曲…GReeeeN - ルーキーズ