予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

平成29年予備試験民法

 こんにちは、アポロです。毎日過去問生活30日目、今日は平成29年予備試験民法を解きました。

 完全な初見ではないですが、実際に書いたのは初めてです。かかった時間は64分でした。

 

〜選んだ解答筋〜

・設問1

 94Ⅱ類推→Cに過失あり→×

・設問2

 ①613Ⅲ本→CE間に賃貸借関係成立

 ②Cの明渡請求は、賃貸借による占有権原の抗弁を主張されるため、認められない

 ③CのEに対する賃料請求は、月額15万円しか認められないとも思えるが、DE間の特殊な人的関係を考慮して設定された賃料額までCに承継させるのは妥当でないので、相場通り25万円(Cは従前よりも5万円高い賃料を得るが、CD間の修繕費用負担の特約はEに承継されない以上、Cを不当に利することにはならない)。

 ④Eの30万円の請求は、必要費として608Ⅰで請求できる(CD間の特約は承継されない)

 

〜個人的な反省〜

・設問1について、94条2項類推適用までの流れが非常に悪い(というか不正確)。「BC間で売買契約が締結された時点では既にBA間売買により甲建物の所有権が移転していたため、Bは無権利であった」と書いているが、明らかな誤りである。Bが無権利になったのは、AがAB間売買に基づく本件登記を備えたためである(それが「登記」(177条)といえるかは一応論点ではあるが)。意味不明の論理で94条2項類推適用という論点に辿り着いているため、大幅に減点されるはずである。また、「虚偽の外観」について「B名義の登記が存在していた」と書いており、「帰責性」についても「Aが自分に移転登記をしなかったこと」を問題にしている。「第三者の信頼」認定の段階で「問題にすべきはAのために譲渡担保権が設定されている旨の登記という虚偽の外観があることか!」と気づいたが、時既に遅し。論点主義的な答案になった。

・設問2の賃料額について、賃料を25万円としてもCを不当に利することにはならないというだけでなく、Eにとって不測の不利益とはいえないかという観点からも検討すべきであった。

・設問2の必要費償還請求について、「必要費」の定義を書くべきであった。また、608条1項の「直ちに」という文言との関係で生じ得る問題点に全く気づかなかった(問題文に詳細に時系列が書かれていることから何とか気づきたかった)。

 

 

〜問題の分析〜

・論点抽出自体は容易だが、そこに行き着くまでの論理を正確に示すのが難しい問題。

・設問1について、94条2項類推適用が問題となることは一見して明らかである。問題文には、「鵜呑み」・「書面を持ち帰って検討したりすることなく」・「過失」など、評価が含まれている事実が複数記載されている。この時点で、これらの「評価」をうまく使える論点が出てくるのではないかという推定が働く。普通に考えれば、これは94条2項類推適用の問題である。ただ、どのようにして同論点に辿り着くかは一見して明らかではない。譲渡担保の話なども登場し、やや複雑な事実関係のように思える。ここをうまく論理構成し、94条2項類推適用まで繋げられるか。設問1の最大の山場はここである。「論点は見え見えだが、問題の所在が見えづらい」という予備試験民法には珍しい問題である。

 なお、本来はこのように「論点から逆算して論理構成する」という姿勢は望ましくないし、特に予備試験民法では失敗するリスクが高い思考方法である。しかし、本問は「問題の入口が最大の鬼門&メインの問題自体は平易」という特殊性があるので、このような解法に頼らざるを得ないのである(合格者もそのような思考過程で解いた人がほとんどである)。

 問題の所在は、「AがAB間売買に基づく本件登記を具備したことで、Bが完全な無権利者となり、Cは(譲渡担保権の負担付きの)所有権を取得できないため、弁済供託をしても(譲渡担保権の負担のない)所有権を取得できないのではないか」という点にある。ここまで論じて初めて94条2項類推適用の論点が出てくる。本件登記は譲渡担保権の設定登記であるため、所有権移転登記として有効かは一応論点にはなるが、これを否定すれば94条2項類推適用の問題ではなく、普通の対抗関係の問題になる。そのため、「問題の空気を読んで有効にするための理屈を考える(または無視して当然のように有効であることを前提にして論じる)」ことになる。

 ここまで来れば、あとは論証を貼り付けて当てはめるだけである。「帰責性」と「第三者の信頼」は判例を意識した丁寧な認定が求められるが、ここがかなり雑でもA評価の再現答案はある。そのため、94条2項類推適用に至る論理がある程度正確であれば、それだけで十分評価されたものと考えられる。

・設問2について、①613条3項本文を指摘し(出題当時はこれ自体が論点であった)、②CE間の賃貸借関係が成立することを指摘した上で(明渡請求は当然認められない)、③賃料額と必要費について具体的妥当性を考慮して説得的な議論をしていれば、いかなる結論であっても十分評価されている。「正解」はない以上、「正解」を探すのではなく、「自分なりの正解」をどれだけ説得的に論じられるかに注力すべきである。さらに、④本問の時系列及び608条1項の「直ちに」との文言に着目した問題点に気づけていれば、加点事由となる(合否を分けるポイントではない)。

 

〜予想採点実感〜

・「第1譲受人が備えた登記の有効性」(出題趣旨より)については、これが有効であることを当然の前提として論述している答案が散見された。「登記」(177条)とは何かという本質論に立ち返り、説得的な論述をすることが求められるところであった。

・「実体的権利関係に合致しない不動産登記を信頼して取引関係に入った第三者の保護の在り方」(出題趣旨より)については、多くの答案で94条2項類推適用が問題となることを指摘できていた。しかし、それに至るまでの過程を論理的に論じられている答案は極めて少なく、多くの答案では少なかず論理的な問題点があった。例えば、本件登記が所有権移転登記として有効であるとしつつも、AとCが対抗関係に立つかのような論述をしている答案が散見された。しかし、BC間売買よりも前にAは本件登記を具備しているのだから、それは対抗関係の問題ではなく、Cが無権利者Bから譲り受けたというだけのことである。ここまで論じて初めて94条2項類推適用によるCの保護ということが問題となるのである。それにもかかわらず、AとCが177条の対抗関係に立つとしながら94条2項類推適用を論じている答案が非常に多く、そのような答案については、「論理的な思考力」(出題趣旨より)が低いものと評価せざるを得なかった。

・「不動産の転貸借がされた後、原賃貸借が解除された場合に、転貸借がどのように扱われるか」(出題趣旨より)については、多くの答案でCE間の賃貸借関係が成立すること及びその理論的説明がなされており、好印象であった。そして、「その際の原賃貸人と転借人との法的関係」(出題趣旨より)についても、利益衡量をして妥当な結論を図ろうとしている答案が多かった。その中でも、なぜそのように解するべきなのか、そのように解することで不当な結果は生じないのか、という観点から説得的に論じられていた答案については、「事案に即した分析能力」(出題趣旨より)が秀でているものとして高く評価した。

 

 

 こんな感じですかね〜。設問1と設問2が全く別の問題であることに加えて(おそらく作成者も異なる)、それぞれ基本的な論点は明らかであるため、例年とは少し違う雰囲気を感じました(答練っぽい)。ただ、それを論じるまでの論理構成がやや複雑であったり(設問1)、本当に「正解」がない問題であったりする点においては(設問2)、「さすが予備試験」といった感じでした。予備試験民法といえども「論点から逆算して論理構成する」という解法パターンがあることを学んだので、ストックしておきます。

 

 今日の一曲…Afrojack vs Thirty Seconds To Mars - Do Or Die (Afrojack Remix)