予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

平成27年予備試験民法

 こんにちは、アポロです。毎日過去問生活27日目、今日は平成27年予備試験民法を解きました。

 完全な初見ではないですが、実際に書いたのは初めてです。かかった時間は58分でした。

 

〜選んだ解答筋〜

・設問1

 ①所有権に基づく請求→対抗要件の抗弁→Fには完全な所有権なし→×

 ②持分権に基づく請求→3分の1の持分権→原則少数持分権者に請求不可→本件は例外→○

・設問2

 415Ⅱ①→896本→「債務者」○、履行不能○、「損害」○、「よって」○、帰責性なし→×

 

〜個人的な反省〜

・設問1について、所有権に基づく請求に対して対抗要件の抗弁が主張されるというのは間違いであった(BとFとはCDの持分についてのみ対抗関係に立つのであり、Eの持分については対抗関係の問題ではない)。

・設問2について、不可分債務(430条)であることについて言及しなかった。

 

 

〜問題の分析〜

・事実関係がやや複雑であり、やや難しい問題。

・設問1について、まずは所有権に基づく請求を検討することになる。この請求が認められないことは直感的に明らかであるが、その説明を正確に行うことは意外と難しい。

 以下はあくまで「私見」であるため、誤った理解を示している可能性もあることは承知の上でお読み頂くようお願いします。

 この点について、「CDはEの持分については無権利であり、本件売買契約のうちEの持分については他人物売買となる。他人物売買は債権的には有効(561条括弧書参照)であるが、物権的には無効である以上、Fは甲建物のEの持分については取得できない」といった説明が最もシンプルである。

 ここで、「251条違反で無効であることを理由にFは所有権を取得しないんじゃないか?」という疑問があるかもしれない。しかし、本問において同条を引用して説明することは不適切だと考える。その理由は2つある。

 第一に、同条の無効主張する者として想定されているのは共有者であるため、本問でいえばEにしかその主張適格はないと考えられるためである。同条の趣旨から考えれば共有者以外の者にその主張適格を認める必要性は低いし、判例の事案や基本書の解説を読んでも、同条は専ら共有者内部の争いに適用されるべきものと考えられる(この点について明確に書かれている文献は手元にないが、「『他の共有者は』同条違反の行為の停止や妨害排除を求めることができる」等と書かれているものが多いことから、このような趣旨の条文なのだと考えられる)。本問ではCD対Eという構図ではなく、F対Bという構図なので、同条を引用するのは不適切となる(「共有者間の内部紛争か否か」という視点が最大のポイントであるように思われる)。

 もっと単純な事例で考えると、わかりやすいかもしれない。ABCで土地を共有してて、ABがCの持分を含めて勝手にDに売却したとする。DがABの持分を有効に取得してたらCと共有関係にはなる。ただ、この売却時点ではあくまでABCの共有関係でしかないから、停止や妨害排除などの請求をできるのは、あくまでその時点での共有者Cに限られる。

 第二に、仮に同条により本件売買契約が無効ならば当然CDの持分権もFに移転しないはずであるが、同条を引用した多くの答案では、その後に持分権は移転することは前提として論じている。これは明らかな論理矛盾である。例えば、同じ変更行為で考えたら、宅地から農地に変更する、というものがあるが、持分の割合に応じてなら(例えば3分の2の面積について)そういう変更行為が許されるというのは問題であることに異論はないはずである。そうだとすれば、251条違反を理由に所有権移転を否定しておきながら、持分権だけは移転すると考えることも同様に問題である(他人物売買との構成では、CDの持分を超える部分についてのみ権利の移転が生じないと考えるため、かかる問題は生じない)。売買契約を部分無効と構成するか、平成26年10月20日にCDの持分についての新たな売買契約の成立を擬制すれば一応説明はつくが、本問の事情からはやや無理がある。結局、本問で251条を使える事案にするには、以下のように改題する必要がある。①本件売買契約を締結しようしてることにEが気付いて、Eの立場から何が言えますか?という事案、②本件売買契約締結後にEの持分権の登記まで移転されて、Eの立場から何が言えますか?という事案。結局、まずは主人公をEにしないと251条適用の基礎を欠くのである。

 なお、自主ゼミ仲間の先輩(実務家の方)によると、以下のように考えるとのことである。「Eの同意なく、CDのみで甲建物を売却することは、共有物の変更にあたり、251条ですることができない。そのため、本件売買契約により甲建物の所有権はFに移転しない。他方で、本件売買契約はEの持分権部分について他人物売買となる。その後CDの持分権については所有権移転登記があったため、その部分は確定的にFに移転する。Bは共有者であるか否かにかかわらず251条使えると思う。でも判例はないし、色んな立場があると思う。」

・設問1について、94条2項の類推適用も一応問題になり得るが、Eに帰責性がないことが明らかな本問では、議論の実益はあまりない(書いてもほとんど加点されないと思われる)。

・設問1について、次に持分権に基づく請求を検討することになる。前提として、BとFとはCDの持分についてのみ対抗関係に立ち、移転登記の具備により甲建物の3分の2の持分権についてはFが優先することを論ずる必要がある。これでやっと議論の土台が整ったことになる。「多数持分権者による少数持分権者に対する明渡しの可否」という本問の唯一の論点の登場である。それなりの規範定立をして当てはめていればいかなる結論でも許されるはずである。この論点が今後出題されるとは考え難いので、ここでは理論面には深入りはしない。ただ、「結論の妥当性」については忘れずに検討したい。本問では、「判例はこう言っている」という形式的な理由だけでFの請求を否定して良いのか、ということが問われている。「伝統工芸品」という部分を自分なりに評価してBの占有を保護すべきという価値判断を示したり、真摯に交渉を試みたFと頑なに拒絶したBという評価をして明渡請求を認めることも考えられる。この辺は完全な自由演技なので、何を書いても基本的に加点されるはずである。ただ、個人的には、判例の理解を示して請求をあっさりと否定した上で、「なお、かかる結論は多数持分権者Fに酷であり具体的妥当性を欠くとも思えるが、Fは自己の持分に応じた使用が妨げられているとして持分割合に応じて占有部分にかかる賃料相当額の不当利得返還請求(703条)ができるため、妥当である」などと書くのが最も現実的な処理だったように思われる(「困った時の不当利得」は割と汎用性がある)。

・設問2について、「不可分債務では債務者の一人に帰責性があれば、他の債務者についても損害賠償請求を免れない」という見解があるようである(履行補助者の故意過失的な発想?)。私はこの辺はよくわからないが、合格レベルとしては、Eの帰責性について論じていれば十分だと思われる(E自身の帰責性は流石に否定されるべき)。仮に帰責性を認めても、損害の範囲はEの持分に相当する3分の1の範囲に限定されることになると思われる(427条)。

 

〜予想採点実感〜

・「甲建物に関する権利関係を明らか」(出題趣旨より)にすることなく論じてる答案や、その内容が誤っている答案が散見された。特に、Fは甲建物のEの持分について取得できない理由が不正確な答案が多かった。C及びDがEの持分について無権利であることを指摘すれば良いだけであるにもかかわらず、177条等の問題として論じている答案が相当数あった。そのため、多くの受験生において、事案を正確に把握する能力が不足しているのではないかと疑念を抱かざるを得なかった。また、甲建物の返還請求には所有権に基づくものと共有持分権に基づくものが考えられ、それぞれ問題となる事項が異なるのであるから、これらは明確に区別して論じられるべきものである。所有権の議論をしている途中で唐突に共有持分権の議論に変わっているなど、分析的な検討ができていない答案が多かった。

・「甲建物の過半数の持分を有する者が他の共有持分権者に対して明渡しを求めることができる場合があるか」(出題趣旨より)という点について、多くの答案では判例を意識して概ね適切な規範定立がなされていた。しかし、本問の具体的事実に着目して検討していた答案はほとんどなく、多くの答案では形式的にFの請求を否定するにとどまっていた。まず、判例の規範からも例外を認める趣旨が読み取れることは異論がないため、本問ではその例外に当たらないかを検討する余地は十分にある。それにもかかわらず、かかる検討がなされていた答案が極めて少数にとどまっていることから、基本的な判例の結論部分のみを何となく覚えている受験生が多いのではないかと懸念される。また、仮に判例の規範を正確に覚えていなくとも、本問の事実から具体的妥当性を検討することは十分に可能である。たとえば、Fの請求を否定した上で「不当利得返還請求により具体的妥当性は図れる」等の論述がされていた答案については、一定の評価を与えた。

・「本件贈与契約において贈与者が負う債務の法的性質」(出題趣旨より)については、不可分債務(430条)であることを指摘できている答案は多かった。そして、「共同相続人にその債務がどのように承継されるか」(出題趣旨より)についても適切な条文を引用して論じている答案が多く、好印象であった。ただ、中には「896条1項本文」などと存在しない条文を引用している答案も一定数あり(今日の私です笑)、このようなミスをしないよう十分注意を払って答案を作成することが求められる。

・「甲建物全部の所有権移転登記手続がされなかったことについて、共同相続人の一人にその損害の全部の賠償を求めることができるか」(出題趣旨より)という点について、Eの帰責事由を否定してそもそも損害について論じていない答案が多かった。しかし、Eの承継した債務が不可分債務であることからすれば、E自身に帰責事由がなくとも、C及びDの帰責事由をもって損害賠償責任を肯定するという見解も十分あり得るところである。Eの責任を肯定した答案においては、損害の範囲についても具体的な検討が加えられており、好印象であった。

 

 

 こんな感じですかね〜。大筋を外さないという意味では難しくないですが、その理論的な説明が難しい問題だと感じました。また、論点の数が少ない代わりに、具体的妥当性を図ることを誘うような事実が問題の中にはあり、「予備試験の民法」という感じの問題でした。この頭の使い方・感覚は約4ヶ月後の本番まで忘れないようにしたいです。良問です!

 

 今日の一曲…Porter Robinson & Madeon - Shelter