予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

令和2年予備試験刑法

 こんばんは、アポロです。今日は刑法の反省点について書きます。

 刑法は、A評価でした(予想もA評価でした)。ほぼ間違いなく、超上位だと思います(一桁順位と予想)。そもそも、私は各科目の評価に比して順位が良すぎます。各科目の評価だけなら、100位前後でもおかしくないです。それでも2桁前半の順位だったのは、いくつかの科目で超上位のAを取ったからだと考えるのが合理的です。そうなると、唯一絶対的な自信があった刑法が40点前後だったのでは、という推測が立ちます。Aを取った科目のうち刑法以外の4つは、いずれもそれなりに大きなミスをしています。なので、私の論文順位には、刑法が超上位だったことが大きく影響していると思われます。

 

〜評価されたと思われる点〜

・「欺」く行為の事実認定は、間違いなく高評価だと思う。せっかくなので、以下に再現答案の抜粋を載せる(太字は特に評価されたと思われるポイント)。ここまで的確に事実認定できたのは、詐欺罪に関する近時の重要判例の調査官解説を趣味で読んでいたからである。もっとも、『基本刑法Ⅱ』250頁にわかりやすくまとめられたので、調査官解説など読む必要はなかった(『基本刑法Ⅱ』は口述前に読んで感動した)。このように近時の判例を意識して「欺」く行為の事実認定をするなら、「財産的損害」という要件は不要である。

(1) まず、「欺」く行為が認められるか。

 ア 「欺」く行為とは、①財産的処分行為の判断の基礎となる重要事項について、②偽る行為をいう。

 イ 本件において、甲には家賃等必要な費用を支払う意思も資力もあったため、甲は通常の賃貸借契約における重要事項を偽っているとはいえず、「欺」く行為に当たらないとも思える

   しかし、某県では、不動産賃貸借契約には本件条項を設けることが推奨され、実際にも本件条項が設けられるのが一般的であったという背景がある。そして、本件の賃貸借契約書にも、「賃借人は暴力団員又はその関係者ではなく、本物件を暴力団と関係する活動に使いません。」との本件条項が設けられ、甲に対してもその内容が説明されていた。暴力団員等が居住することで資産価値が低下する可能性があることからすれば、本件条項の内容は賃貸人にとって合理的であり、その内容は上記のように客観的に明らかにされていた。そうすると、本件の賃貸借契約においては、甲が暴力団員でないこと・本件居室を暴力団関係の活動に使わないことは、財産的処分行為の判断の基礎となる重要事項となっていた(①充足)。

   また、本件条項が一般的であったことに加え、甲はその内容を説明されていたことからすれば、上記契約締結に際して、甲がX組組員でないこと・A宅を監視する目的で本件居室を使用しないことは、当然の前提になっていた。そのため、上記事実を秘して契約を締結することは、上記重要事項を挙動によって偽る行為といえる(②充足)。

 ウ よって、「欺」く行為が認められる。

・偽造の事実認定は、他のA答案と大差ない内容である。もっとも、「名義人」「作成者」の定義を示していない答案が意外と多かったので、A答案の平均以上だとは思う。

・行使の認定の後、「甲が変更前の氏名が記載された自動車運転免許証・変更前の氏名の口座名義の預金通帳を示した行為は、上記の詐欺利得罪の手段にすぎず、別に犯罪を構成しない」と書いたが、これが評価されたのかは不明である(多少は加点されたと思いたい)。

傷害致死の事実認定もそれなりに評価されてるはず。これも、以下に再現答案の抜粋を載せる。一見すると、他のA答案と比べても有意な差はないように見える。ただ、①「客観」「主観」というキーワードを意識的に加えることで体系の理解をアピール、②「とっさに」に飛びつかないことで論点の理解をアピール(問題文に「自己の身を守るため」とあるのだから防衛の意思は当然ある)、③事実を使い切る姿勢、などの細かいテクニックで差をつけている。

(2) もっとも、甲の上記行為は丙の行為に対応して行われているため、正当防衛(36条1項)が成立し、違法性が阻却されないか。

 ア 「急迫不正の侵害」とは、法益侵害の危険が現在又は切迫していることをいい、その有無は客観的に判断される。本件では、丙は着衣のポケットからスマートフォンを取り出しただけであり、法益侵害の危険が現在又は切迫しているとはいえないため、「急迫不正の侵害」は認められない。

 イ  よって、正当防衛は成立せず、違法性は阻却されない。

(3) そうだとしても、誤想防衛として責任故意が阻却されないか。そこで、違法性阻却事由の錯誤が問題となる。

 ア そもそも、故意責任の本質は、反規範的人格態度に対する道義的非難であるところ、違法性阻却事由を基礎付ける事実を誤信していた場合、規範に直面していたとはいえない。そこで、違法性阻却事由の錯誤も、事実の錯誤として責任故意が阻却される。

 イ 本件において、甲は、丙が取り出したものがスタンガンであり、それで攻撃してくると誤信していた。そのため、甲の主観を基準にすれば法益侵害の危険が切迫しており、「急迫不正の侵害」がある。

   次に、甲は自己の身を守るため、とっさに上記行為をしているため、急迫不正の侵害を意識してこれを避けようとする心理状態たる防衛の意思があり、「防衛するため」といえる。

   また、丙は20歳と甲より若く、身長180cmと甲より15cmも高く、体重85kgと甲より25kgも重いこのように甲よりも身体能力で勝る丙が、スタンガンという火傷を負わせたり意識を失わせたりできる強力な武器を用いてきた場合には、顔面を拳で1回殴るというのは必要最小限度の防衛行為といえ、「やむを得ずにした」といえる。

 ウ したがって、甲の主観を基準にすれば正当防衛が成立するため、違法性阻却事由の錯誤として責任故意が阻却される。

 

〜もっと上位に行くために〜

・最後の足蹴り行為について、行為の一体性を検討する実益を示せなかった。というか、考えたことがないパターンだったので、現場ではわからなかった。そのため、単に行為の一体性を検討するだけになった(ここは平均的なA答案の出来)。とはいえ、矛盾したことを書いたりするリスクを考慮した上の判断だったので、これは仕方ないとは思う。

 

〜総括〜

・自己ベストの答案を書けた。刑法に関しては、さらに上位を目指す必要はないかもしれない。どちらかと言えば、この感覚を忘れないことが大切だと思う。

 

〜司法試験に向けて〜

・司法試験過去問の検討・『刑法事例演習教材』の復習により、刑法の感覚を取り戻す

平成24年・27年・令和2年については答案作成し、司法試験の問題文の長さ・時間感覚に慣れる

・短答対策をする中で出てきた学説を軽く復習する(特に結論が変わるもの)

 

 

 こんな感じですかね〜。刑法は重要な得点源なので、司法試験でも確実に上位Aを取りたいです。メリハリやペース配分がとても重要な科目なので、「120分・8頁」という感覚をできるだけ早く掴みます!