予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

平成26年予備試験刑事訴訟法

 こんにちは、アポロです。毎日過去問生活13日目、今日は平成26年予備試験刑事訴訟法を解きました。

 実際に答案を書いたのは、1年2ヶ月ぶり2回目です。かかった時間は59分でした。

 

〜選んだ解答筋〜

・自白法則では排除されない。

・伝聞証拠であり伝聞例外の要件も満たさない。

・強制処分ではなく、任意処分の限界も超えない。

・結論として、伝聞証拠として証拠能力が否定される。

 

〜個人的な反省〜

・伝聞例外において、322条1項ではなく321条1項3号を検討し、証拠能力を否定してしまった。伝聞はずっと苦手だが、今回は相当にやばいミスをしてしまった。問題文の「甲は『何も言いたくない。』と陳述し」たとの部分から、供述不能を想起して誤った選択をした。非常に悔しい。伝聞の基礎知識のアウトプット力が不足していることを痛感した。

・秘密録音については、強制処分該当性と任意処分の限界を大展開したが、本問は明らかに証拠法の問題なので、違法収集証拠排除法則に一切触れないというのはまずかった。

 

〜問題の分析〜

・基本的な論点からの出題で、内容も平易。ただ、秘密録音で何をどこまで書くかが非常に悩ましい。

・自白法則と伝聞法則の関係性について、『事例演習刑事訴訟法【第2版】』p287によれば、「自白の場合は、それが口頭によるものであれ、書面によるものであれ、322条1項ただし書を経て319条1項を準用するのではなく、319条1項をストレートに適用し、その法解釈をすべきなのです(自白法則により証拠能力が否定されない場合に初めて、伝聞法則を検討すれば足る)。」とのことである。その理由を答案で書かされることはないので、そういうものだと覚えておけば足りる。

・自白法則について、任意性は流石に否定されない事案である。ただ、結論は同じでも、当てはめで意外と差がついたのではないかと思う。論点抽出が容易なだけに、当てはめを充実させる意識がなければ評価は伸び悩むところであった。

・伝聞法則について、ICレコーダー自体は非供述証拠であることを認定した上で、伝聞証拠の定義を論証し、甲の供述のどの部分が要証事実との関係で内容の真実性が問題となるのか、ということを丁寧に論述できると好印象である。

 次に、伝聞例外(322条1項)について検討することになる。ICレコーダーは「書面」に準じるものであること、「不利益な事実の承認」であること、録取過程の伝聞性がなく「署名若しくは押印」は不要であること、を簡単に認定したい。なお、同項但書は「その承認が自白でない場合においても」と規定する以上、供述の任意性をここで改めて認定する必要はない。

 そして、厳密にはICレコーダー内の乙の供述の伝聞証拠該当性も問題となるが、刑法(贈賄罪)の知識も絡むやや難解な議論になるので、無視した方が賢明であった(解説は割愛)。

・秘密録音について、何をどこまで書くべきであったか。違法収集証拠排除法則、強制処分該当性及び任意処分の限界、が想起されるが、これらを全て三段論法して書くのは時間的・紙幅的に事実上不可能である。強制処分該当性及び任意処分の限界から書き出してしまうと、証拠法の問題を強引に捜査の話に持ち込もうとしているようにも読めるし、「証拠とすることができるか」という問いかけとやや離れてしまう。かと言って、違法収集証拠排除法則を論証した上で、任意処分として適法とした場合には、何のための論証だったのか、という感じにもなる。そのため、「違法収集証拠排除法則を論証した上で、強制処分該当性及び任意処分の限界を意識した当てはめをする」というのが無難だったように思われる。出題趣旨に「強制処分」や「秘密録音」という言葉が出てこないこと、この2年前である平成24年予備試験に秘密録音の強制処分該当性が正面から問われていることからしても、これが出題者の想定した筋だと思われる。

 証拠排除をするか否かについては、いずれの結論もあり得るところだとは思う。再現答案においては、適性手続違反を理由に重大な違法としているものが多かった。このような結論は妥当なようにも思えるが、疑問もある。強制処分との関係で考えれば、警察官が相手であろうと、取調べであろうと、やはり会話の秘密性は放棄されている。本件ではKが秘密にするとの約束をしているためプライバシー期待権の要保護性が高い、という反論が想定されるが、それは普通の秘密録音にも当てはまることではないだろうか。犯罪の打ち合わせなどを相手方が第三者に伝えないというのは暗黙の了解であるから、そのような意味での秘密性を持ち出せば、普通の秘密録音も任意処分の限界を超えて違法となり得る。ここでいう秘密性は、あくまで相手方に伝えた時点で消失するのであって(第三者に伝わっても文句は言えない)、それはKの偽計とは異なる次元の話であろう。また、Kは偽計を用いているものの、それは自白の任意性を否定するに至らない程度のものである。そのため、千葉地裁平成3年3月29日を参照する限り、違法性を肯定する方向に強く働くのは、「秘密録音に自白という秘匿性の高い供述が含まれている」という事情くらいだと思われる。ここを捉えて任意処分の限界を超えるものとして違法といえても、それが令状主義の精神を没却するに匹敵するほどの重大な違法といえるかはかなり疑問である(少なくとも実際の裁判では証拠排除されないはず)。

・個人的な意見としては、この問題は形式面において良くないと思う。秘密録音の点については何を書くべきかが曖昧であり、全て書くのは事実上不可能。となれば、多くの受験生が色々な筋で答案を書いてくる。しかも、そのいずれも論理的には誤りとはいえない。そうなると、その部分については採点基準がよくわからなくなる。その結果、この年の秘密録音の部分については相当に圧縮して採点されたものと思われる。実際、秘密録音に一切触れなくてもA評価をもらっている人はいるし、答案を読んでも自白と伝聞の出来はそこそこであった。感覚としては、「自白:伝聞:秘密録音=3:5:2」くらいに調整されたのではないかと思う。結果的に、秘密録音を頑張りすぎると失敗するような問題となった。その反省を受けてか、平成30年予備試験では捜査の適法性と証拠能力の設問が明確に分けて出題された。本問についても、本来はそのような形式で出題すべき問題だったと考える。

 

〜予想採点実感〜

・「自白法則(不任意自白の排除)」(出題趣旨より)については、多くの答案が自己の立場から正確に論証することできていた。しかし、その具体的な当てはめが充実した答案は少なかった。例えば、「共犯者が自白しているという偽計よりは心理的影響が小さい」というような当てはめをしている答案が散見されたが、これでは不十分である。なぜなら、「評価」が抜けているからである。すなわち、「なぜそのような手段より心理的影響が小さいのか」ということが一切書いていないのである。結局は「いかなる意味で心理的影響が小さいのか」ということを論述すれば足りるのであり、そもそも他の手段を挙げる必要がない。それはただ「評価」という作業から逃げているだけである。本問では、例えば、「自分を訴追・処罰しようとしている捜査機関が自白内容を秘密にするからといって、甲にとっては、自白をする利益もなければ、しないことによる不利益もない。」というような評価になるのではないだろうか。要は、「Kは偽計を用いているが、それを甲が信じても虚偽の自白をするような類のものではない」ということが重要なのである。他の手段との比較は頭の中でやるべきであり、答案に書くべきはあくまで「評価」である。それにもかかわらず、これが逆になっている答案が非常に多く、そのような答案は低く評価せざるを得なかった。

・「伝聞法則とその例外」(出題趣旨より)については、多くの答案では適切に検討されていた。しかし、やはり上述の自白法則と同様に、もう一歩踏み込んだ検討・評価をしてほしい答案が多かった。要証事実が何かも明示せずに、ただ「内容の真実性が問題となる」とだけ書いて伝聞証拠と認定する答案も一定数あった。要証事実は立証趣旨の通りであると述べている答案でも、やはり「内容の真実性が問題となる」とだけ論述するものが多かった。そうではなく、供述のどの部分が、どのような理由で「内容の真実性が問題となる」のかを具体的に論述するべきである。結論だけを書かれたところで、当該受験者が本当に伝聞法則を理解しているのか、あるいは適当に書いた結論がたまたま合っていたのか、ということを答案用紙から読み取ることはできない。自分の思考過程を省略して論述しすぎると、その理解が採点者に伝わらない。そのため、かかる答案を作成した者については、具体的な思考過程を答案上に表現する訓練を積んでほしい。

・「秘密録音を含む自白獲得手続の適法性と自白の証拠能力」(出題趣旨より)については、十分な検討がされている答案は少なかった。具体的には、いわゆる違法収集証拠排除法則の判例の規範を書いてはいるものの、具体的な当てはめが不十分な答案が散見された。限られた時間で最後まで十分な論述をするために、論述のメリハリをうまくつけるよう意識してほしい。

 

 

 こんな感じですかね〜。自白法則・伝聞法則・違法収集証拠排除法則という証拠法の超重要論点が出題されており、内容的にはかなり良い問題です。ただ、上述の通り、形式的には受験生を困惑させる問題だった気もします…。

 

 今日の一曲…相対性理論 - 夏至