平成24年予備試験民事訴訟法
こんにちは、アポロです。毎日過去問生活4日目、今日は平成24年予備試験民事訴訟法を解きました。
実際に書いたのは8ヶ月ぶり2回目です。かかった時間は57分でした。
〜選んだ解答筋〜
・設問1
①既判力の作用・客観的範囲の一般論。
②争点効・信義則。
③先決関係で作用。
④主張①は信義則違反だが、主張②は相殺の抗弁なので許される。
・設問2
①相殺の抗弁は予備的抗弁。
②弁済の抗弁から認定すべき。
〜個人的な反省〜
・設問1について、本来は既判力の①客観的範囲・②作用の順で書くべきところを、逆の順番で書いてしまった。
・設問1の主張①について、「これは理由中の判断の否認だから争点効と信義則」と考えたが、よく考えれば、これは前訴訴訟物の存在と矛盾する主張である。客観的範囲に当然に含まれる判決主文に包含された訴訟物の存否に関する判断と矛盾する主張として当然に排斥される。
・設問1の主張②について、「基準時後の形成権行使」について書いたが、これは不要だった。
〜問題の分析〜
・表面上は簡単に見えるが、深く分析してみるとかなりの難問。
・設問1について、既判力が作用するのかが問題となる。訴訟物が同一でないことは明らかだが、これを先決関係とみることはできないか。結論として、先決関係で既判力が作用するというのが出題者の想定する解答筋だったと思われる。問題文には、「例えば、第2訴訟において、裁判所は、第1訴訟の確定判決で認められた売買代金債権の発生そのものを否定する判断をすることもできるのでしょうか。」という誘導がある。また、問題文全体を素直に読めば、既判力が作用することを前提に論述することが要求されていたというべきである。そのため、争点効や信義則に安易に逃げるのは出題の意図からズレた論述といえる。このことは、出題趣旨が信義則に一切言及していないことからも明らかである。もちろん、本問を先決関係と捉えることに理論上の問題がないわけではないが、仮にそれを否定するにしても十分に説得的な論述が要求された。その上で争点効・信義則を論ずるのは許容範囲と思われるが、書く分量が増えるだけなので、やはり先決関係をあっさり認めるべきであった。
・設問1の主張①は、既判力が作用することが分かれば、あとは第1訴訟の訴訟物の存否に関する判断と矛盾する主張(第1訴訟の訴訟物である代金支払請求権の請求原因事実たる売買契約締結の事実を否定する主張)であることを丁寧に説明するだけである。
・設問1の主張②は、「基準時後の形成権行使」について書くまでもなく、当然に許される。まず、主張②は、前訴訴訟物とは異なる250万円について争っているのであり、前訴訴訟物150万円の存在について争っているわけではない(前訴について請求異議の訴えを提起して相殺の抗弁を主張する場合とは異なる)。また、300万円分を自働債権として相殺の抗弁を主張しているが、50万円部分についてだけ前訴既判力と抵触するということもない(114条2項の既判力は対抗した額である250万円部分の不存在についてのみ生じる)。さらに、第2訴訟は残部請求であり、一部請求と相殺の抗弁の問題は特に生じないため、外側説により第1訴訟の既判力と抵触するということもない(当たり前だが現場レベルではあり得る混乱)。そのため、主張②は、「基準時後の形成権行使」を論ずるまでもなく、当然に許されるものであった。
・設問2については、相殺の抗弁が「予備的抗弁」であることを理解していれば、あとは計算ミスをしないように気をつけるだけである。
〜予想採点実感〜
・「既判力が生ずる範囲とその作用の仕方」(出題趣旨より)については、適切に論じられていた答案はほとんどなかった。多くの答案では、特に理由も示さず「先決関係にも矛盾関係にもない」として、いわゆる争点効や信義則を中心に論述されていた。しかし、本問では正にその「作用の仕方」について正面から問われているのであり、「先決関係にも矛盾関係にもない」と述べたのみでは問いに答えたことにはならない。本問において、争点効や信義則について論述することが直ちに誤りというわけではない。しかし、問題文には「作用の仕方」について深い考察を求める誘導は少なからずある以上、それを無視すべきではない。そのため、かかる答案を作成した者については、試験では出題の意図に合致した答案を作成しなければ、基本的に評価されることはないことを再確認してほしい。そして、多くの答案で「作用の仕方」についてほとんど論述されていないのは、非常に残念であった。そのため、多くの受験生は、争点効・信義則等といった応用的な論点を中心に学習する結果、ごく基本的な概念である既判力等についての学習が疎かになっているのではないか、との懸念を抱かざるを得ない結果となった。
・「相殺の抗弁の特殊性」(出題趣旨より)については、多くの答案で適切に論述されていた。もっとも、一般論を述べるのみで本事案における具体的な金額の計算をしていない答案が一定数あった。また、具体的な計算を誤っているものもあり、単純な四則演算への理解さえ疑われる答案もあった。具体的な検討をしなかったり、その検討が誤っている場合には、その一般論の理解にさえ疑義が生じかねないので、慎重に検討することを心がけてほしい。
こんな感じですかね〜。「予備試験(民訴)史上最も難しい」との意見もある難問でした。この年はほぼ全員が解答筋を大きく外すという異常事態だったらしいです笑(マジでカオス)。個人的な意見としては、問題文の誘導に「争点効・信義則書くな」というのがあれば良かった気がします。そして、この問題の影響なのか、最近の民訴は司法試験・予備試験共に誘導が結構親切な気がします。
この問題については、正直、何が「正解」なのかはよくわかりません。ただ、昨日の平成24年商法と共通して言えるのは、「出題者のメッセージを読み取る能力」は超重要ということですね。いくら知識や実力があっても、本番でここを外したら実質0点ということは常に意識しなければなりません。そのため、予備校の答練とはまた違う能力が要求されます。本問は確かに難問ですが、予備試験特有の「ヒント」の見つけ方や拾い方を学ぶのには良い問題です!
今日の一曲…Lick-G - Trainspotting