予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

平成23年予備試験刑法

 こんにちは、アポロです。毎日過去問生活8日目、今日は平成23年予備試験刑法を解きました。

 完全な初見ではないですが、実際に書いたのは初めてです。かかった時間は59分でした。

 

〜選んだ解答筋〜

嘱託殺人罪

 ①「嘱託」あり。

 ②因果関係あり。

 ③成立。

・現住建造物放火罪?

 ①客観的構成要件に該当。

 ②故意がない→抽象的事実の錯誤→他人所有非現住建造物放火罪の故意あり→その他の構成要件も該当。

 ③他人所有非現住建造物放火罪が成立。

・証拠隠滅罪については、丙の死体を放火した点についてのみ成立。

・死体損壊罪も成立。

・他人所有非現住建造物放火罪・証拠隠滅罪・死体損壊罪は観念的競合、これらと嘱託殺人罪併合罪

 

〜個人的な反省〜

嘱託殺人罪について、因果関係(危険の現実化)の当てはめが微妙だった。

嘱託殺人罪について、因果関係の錯誤の論点を落とした。

・現住建造物放火罪について、抽象的事実の錯誤の論述の流れが微妙だった。

・証拠隠滅罪について、105条を書き忘れた。

 

〜問題の分析〜

・基本的な論点が多く、簡単な問題。

嘱託殺人罪について、まず、「嘱託」の認定をどこまで厚く書くべきかが悩ましい。ここには点数が振られていると考えて丁寧に事実認定をしたが、再現答案を見る限り、ここの事実認定が評価に直結しているとは考え難い。一般論として、丁寧な事実認定をすることは重要だが、「嘱託」に当たることが一見して明らかな本問では、ここを厚く書くのはナンセンスだったようである。

嘱託殺人罪について、次に問題となるのは、因果関係である。危険の現実化説の当てはめは意外と難しい。最終的には「乙の首を締める行為には放火により死亡する危険性が含まれる」といえれば良いはずだから、そこから逆算して当てはめていく。具体的には、殺人をした者が証拠隠滅等のために放火を行うことは経験則上十分あり得るため、介在事情の異常性は低いことを指摘すべきである。なお、死因が同一でないことから因果関係を否定する見解もあり得るが、一般的な危険の現実化説からは肯定されるべき事案であろう。

嘱託殺人罪について、最後に、因果関係の錯誤が問題となる。まず、因果関係が故意の認識対象となることを指摘した上で、故意の阻却可能性について検討する。結論として故意は阻却されないが、ここは様々な説明の仕方があり得る。例えば、「甲の主観を基準にしても乙の死の結果発生の危険性があり、かかる錯誤は重要でないため、故意を阻却しない」などといった説明が考えられる。

・現住建造物放火罪について、客観的構成要件に該当することを端的に述べた上で、故意が欠けることと38条2項を指摘する。その上で抽象的事実の錯誤を論じ、他人所有非現住建造物放火罪との重なり合いを認める。厳密には他人所有非現住建造物放火罪の客観的構成要件該当性も認定する必要があるが、あえて言及しなくとも許される気はする。なぜなら、両罪は客体が異なるだけで構成要件は同じであるし、主観について論述した後に客観について論述するのは体系的矛盾と理解されかねないからである。かかる問題意識からすれば、現住建造物放火罪が成立しないとしてバッサリ切った後で、他人所有非現住建造物放火罪について仕切り直して検討するのも書き方としてあり得る。実際はこういう書き方の人の方が多い気がするが、どうしても書く分量が増えてしまうので、個人的には前者の方が好みである。

・証拠隠滅罪について、「乙の死体は同罪の客体にならない」ということを明示した上で、「丙の死体という証拠を隠滅した点で同罪が成立する」との理解を明示できると好印象と思われる(故意の問題ではないことに注意)。また、105条も指摘できると抜かりない。

・死体損壊罪については、書けなくとも合否には全く影響しないと思われる。

 

〜予想採点実感〜

・「行為者の行為の介在と因果関係」(出題趣旨より)については、多くの答案では自己の採る立場について正確に論述されていた。しかし、特にいわゆる危険の現実化説を採用する答案においては、具体的な事実認定が適切でない答案が一定数あった。例えば、「乙は頸部圧迫による意識消失状態に陥ったからこそ多量の一酸化炭素を吸引したのであり、その意味では甲の首を締める行為は乙の死に大きな影響を与えている」(私の答案です笑)などと論述して危険の現実化を認めているものもあった。しかし、それは因果関係のうちの条件関係として論じられるべき内容であって、危険の現実化の有無を検討する際にそれを論述するのは適切でない。どの立場を採ったからといって評価が分かれるものではないが、自己の採る立場から適切な事実認定ができていなければ、それは当然に評価を下げる。かかる答案を作成した者については、具体的な事案に数多く当たる中で、自己の立場から適切な事実認定をする訓練を積んでいってほしい。

・「事実の錯誤」(出題趣旨より)については、多くの答案では正確に論述されていた。もっとも、構成的にやや読みにくい答案が一定数あった。例えば、現住建造物放火罪についての論述と他人所有非現住建造物放火罪についての論述が混同しているように読める答案が挙げられる。内容的に正しいことを論じていても、そのような答案は読み手に負担をかけるものと言えるから、わかりやすい答案を作成することを日頃から心がけてほしい。

・「証拠隠滅罪」(出題趣旨より)については、多くの答案で言及されていた。しかし、甲が「乙を殺した痕跡や、自分が乙を殺した痕跡を消してしまいたい。」と考えていたことを捉えて、「乙の死体については『他人の刑事事件に関する証拠を隠滅』(104条)する故意がない」などと論述している答案が一定数あった。しかし、これは単に同罪の客体にならないというだけの話であり、乙の死体を放火した点についてはそもそも客観的構成要件に該当しないのである。甲の内心は、丙の死体について同罪が成立することを前提に、105条の「犯人……の親族がこれらの者の利益のために犯した」という要件との関係で考慮されるべき事柄である。しかし、このことを明示している答案は思いの外少なかった。

 

 

 

 こんな感じですかね〜。本問は基本的な論点を問うものであるため、一つでも論点を落とすと致命傷になりかねません。「因果関係」と「因果関係の錯誤」はセットで登場することも多い以上、後者の論点を落とした点は猛反省せねばなりません。私は「錯誤」系の論点全般が苦手ということを再確認できました。本問は重要論点の理解を確認することができるため、良問です!

 

 今日の一曲…Krewella - Somewhere to Run