予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

司法試験の予想評価・雑感等

 こんばんは、アポロです。司法試験を受験してから、早くも2週間以上が経過しました。この間、私は再現答案を作成し、友達が何を書いたか確認し、Twitterでも多くの方の再現答案・雑感等を読みました。これらを通じて、ひたすら自分の答案の相対的評価を探りました。また、予備論文の成績・模試の成績・過去の論文試験の再現答案研究などを通じて、「受験生のレベル感」というのは把握しているつもりです。なので、以下の予想評価は、実際の評価にかなり近いと思います。

 予想評価の基準としては、今年の短答合格者数が2672人であったことを踏まえて、A=上位37%、B=上位56%、C=上位75%、D=上位94%、E=それ以下、とします。

 

 

 

〜予想評価〜

 

 

憲法…A(上位10%)

 

・行政…A(上位25%)

 

民法…A(上位20%)

 

・商法…A(上位15%)

 

・民訴…A(上位10%)

 

・刑法…B(上位50%)

 

・刑訴…A(上位3%)

 

・経済…60点(上位5%)

 

・論文…200位前後

 

・短答…159点(上位1.45%)

 

・総合…100位前後

 

 

 

〜雑感〜

 

 

憲法…A(上位10%)

 

 規制①は、ほぼ出題趣旨通りに書けているはずなので、おそらく超上位。規制②は、「みだりにSNSのアカウント等の情報を収集されない自由」として。プライバシー権(自己情報コントロール権)の問題として論じた。結社の自由は、思いつきもしなかったが、これを何条で論じたかそれ自体は大きな問題ではない。当てはめで多くの事実を拾い、適切な評価を加えられたかが勝負。その意味では、やはりプライバシーの問題の方が論じやすいと思う。たまに「規制②はプライバシー権の問題では論じ得ない」という意見を聞くが、団体や構成員のプライバシーを観念し得ること、公の情報でもそれを「収集(管理)」すること自体にプライバシー侵害を観念し得ることから、やはりプライバシー権も問題になるはず。流石にAは来ると思うが、上位5〜15%くらいの範囲でズレはありそう。予備論文と同じくらいの手応え。

 

 

・行政…A(上位25%)

 

 設問1(1)は、法的根拠があるか微妙だと考え、少しだけ公権力性を論じた。法効果性の部分で、申請権の有無・市道占有許可との関係を論じた。後者は若干ズレたことを書いたかもしれないが、誘導がわかりづらかったので、大きなダメージではなさそう。実効的な権利救済は、無難な内容を簡単に書いた。

 設問1(2)は、出そうな予感がして数日前に確認した判例だったので、完璧に書けた(個人的には原告適格で出ると予想していたが)。予想できた理由は、「昨年はややマイナーな不作為の違法確認訴訟が出た→ただこれは問研のB+の問題として載っていた→今年も問研のB+の問題からややマイナーな分野が出そう→競願関係が出そう」という感じ。あと、コンプリ答練にも出ていた気がする。

 設問2は、誘導に忠実に従ったので、大きなミスはないはず。事実もかなり丁寧に当てはめた。最後の判例は全然理解していなかったが、現場でそれっぽいことを書いたら、判例とほぼ同じ内容になっていた。我ながら冴えていたと思う。

 これだけ読むと上位25%より上な気もするが、行政法は毎回予想評価より遥かに悪い評価をつけられてきたので、控えめにしておく。いずれにせよ、流石にAだとは思う。

 

 

民法…A(上位20%)

 

 設問1は、所有権喪失の抗弁ではなく占有権原の抗弁で書いたことがやや不安だが、条文の当てはめ・論証共に丁寧に書けた。大きな問題はない。

 設問2(1)は、請負を否定して準委任で書いた。準委任など論文で書いたことがないので不安だったが、合っていたようで安心。

 設問2(2)は、いずれの請求も正解筋に近い内容を書いたが、事実認定が雑すぎる。合格レベルだとは思うが、上位層はもう少し厚く書いているはずなので、やや不安。まぁ、配点を考えれば妥当な判断だったと思う。

 設問3(1)は、ほぼ完璧に書けたのに、最後の508条で相殺適状にあったとしてしまった。現場で「相殺適状にあった時期なくね?」と思ったが、「全額は拒めないけど100万円は拒める」という結論が美しいと思ったこと、どうせ皆508条適用するのに自分だけ否定するというリスクを負いたくなかったことから、普通に適用した。これも、決して簡単ではないし、現場判断としては妥当だったと思う。

 設問3(2)は、爆死した。残り時間10分で、条文操作で軽くパニックになった。何とか条文を見つけるも、結論の妥当性を図ろうとし、原則論も書かないまま修正した。完全にやらかした。これは最悪0点でもおかしくない。

 全体的な手応えは良くないが、設問1で典型論点を厚く書けたこと、設問2で準委任に食らいついたこと、設問3(1)もしっかり書けたことから、流石にAだとは思う。設問3(2)は、実質途中答案の人も多いらしいので、意外とダメージは少ないのかもしれない。

 

 

・商法…A(上位15%)

 

 設問1は、間接取引と多額の借財を書き、前者で重過失は否定し、後者で過失は肯定した。主観の当てはめにやや苦労したが、全体的にかなり丁寧に書いたので、差をつけられたはず。

 設問2は、他人名義の株式の論点を応用し、「特段の事情のない限り現実に出資した者が株主」という規範を立て、あとはひたすら当てはめた。上記論点を知っていれば、少しの現場思考と当てはめ勝負の簡単な問題だが、意外と受験生の出来は良くないらしい。ここも結構差をつけたはず。

 設問3は、①Gに議決権を行使させなかったこと(310条1項違反)、②Aに議決権を行使させなかったこと(310条1項違反)、③Cが特別利害関係人であること、④Cが議長のまま選任決議を進めたこと(決議方法が著しく不公正)、を書いた。①は典型論点なので厚く書いたが、他3つは現場思考だったので、広く薄く書いた。答案戦略としては正しかったと思う。

 全体的な手応えは、かなり良い。上位5〜15%くらいで、もちろんAだと思う。

 

 

・民訴…A(上位10%)

 

 設問1は、普通に処分権主義の問題を厚く書いた。課題1については、皆ほとんど同じようなこと書いただろうし、差がつかなそう。既判力に言及することは思いつきもしなかったが、それが必要なのか・必要だとしてどれほど重要なのかは、自分にはわからない。少なくとも、合否との関係では、普通に処分権主義を厚く書けば十分だと思う。課題2については、Yに不意打ちとなるとして違法とした(どちらの結論もあり得ると思う)。

 設問2は、出題予想していた訴訟承継だったので、下位規範まで丁寧に論証し、しっかり事実認定をした。伊藤塾の答練、ここでも的中。

 設問3は、課題1では、法的三段論法を意識して157条1項の当てはめを丁寧にした。「合理的な説明ができなければ重過失が推認される」というのは伊藤塾の答練を通じて知っていたが、この時点でYが当事者ではなくなったと勘違いし、「Yの証人尋問を請求して説明を求める」と書いてしまった。多少は点数をもらえるだろうが、正しい条文を引いて論述すべきだった。課題2では、これも伊藤塾の答練に出た問題だったので、訴訟状態帰属効の例外を論証し、丁寧に当てはめた。ここは、意外と差がつきそう。

 全体的に、伊藤塾の答練が的中しまくっていた。やはり、答練はバカにできない。そして、自分の答案は、伊藤塾の分析会で解説された再現答案に酷似している。最初読んだ時は、途中まで本気で自分の答案だと思っていた。おそらく、あの答案と自分の答案はほぼ同様の点数がつくと思う(一部あの答案の方ができているが、一部自分の方ができている)。筋を外さず、得点ポイントはかなり厚く書いたので、上位10%以内には入っていると思う。今年の民訴は、解答筋自体は見えやすかったので、「できた」と思って評価が悪い人が続出すると予想する(自分がそうならないことを祈る)。おそらく、「書き方」で大きな差がつく。

 

 

・刑法…B(上位50%)

 

 設問1は、爆死した。甲に強盗未遂罪と窃盗罪の共同正犯を成立させ、丙に業務上横領罪の共同正犯を成立させ、乙には強盗未遂罪と窃盗罪の共同正犯を成立させた。おそらく強盗罪は未遂も成立しないし、窃盗罪と業務上横領罪を成立させたのは明らかな論理矛盾。答案を書いている途中で論理矛盾に気づいたが、時既に遅し。丙を主人公に考えれば、スッキリとまとめられたに違いない。自分は去年の刑法でも強盗殺人罪ではなく殺人罪を成立させるなど、典型事案から捻られた刑法の問題が苦手である。乙については、共謀共同正犯の成否を厚く論じ、抽象的事実の錯誤も書いたので、特に問題ない。丁は、流石に盗品等保管罪の論点を書けた。やはり、甲と丙でミスったのが痛い。設問1単体だと、おそらく上位50〜70%くらいだと思う。酷すぎる…。

 設問2は、①共謀の射程、②離脱による共犯関係の解消、③207条について書いた。①をやや冗長に書きすぎた感じはある(おそらくメインではない)。メインはおそらく②だが、(1)の途中までそれに気づかず、気づいた時は「あぶねー!!」と思った。これは、正に『刑法事例演習教材』『刑法総論の悩みどころ』で橋爪先生が厚く書いていたところなので、「犯行からの一方的な排除」について、ほぼ橋爪先生の言葉を引用して書いた。③は、207条の適用の可否が問題になることには気づいたものの、「共犯関係がある場合にも適用されるか」という誤った論点を展開した。本来展開すべき論点でもこれに関連する論証を展開する必要があること、令和2年判例を意識した当てはめができていることから、最低限の点数はもらえそう。設問2単体だと、おそらく上位20%以内だと思う。

 刑法は、最も得意な科目だったため、非常に悔しい。今回の司法試験を通じて1番の失敗は、刑法設問1。刑法の論文が終わった瞬間は、結構メンタルがやられていた。

 

 

・刑訴…A(上位3%)

 

 伊藤塾の分析会で再現答案に選ばれたので、以下、岡崎先生の講評を載せる。「設問1①は、関連性の認定が微妙。設問1②は、関連性と包括的差押えを分けて書いたのは微妙。当てはめは良いが、少し冗長。設問2は、集まった再現答案の中ではベスト。ほぼ完璧だが、小問2の絶対的特信情況の当てはめで、時点にも言及できると完璧」。

 上記の講評に、特に異論はない。Aの中でもかなり上位と思われるので、上位3%以内という高めの評価を予想しておく。

 

 

・経済…60点(上位5%)

 

 大学院で独禁法を研究している優秀な友達に出題趣旨・採点実感を書いてもらったので、以下にそれを載せる。

 第1問は、2条6項(3条)と「事業者」に触れた後、「入札談合の場合、基本合意と受注調整に分けられて論ずることが定着しており、不当な取引制限該当性は、基本合意の問題であるから、それが成立するのかを以下論ずる」的な文言が最初にあるといいと思った。Y14の「正確な範囲を知らない」という話は、「共同して」で書いてあったけど、「相互拘束」で触れることも可能(どちらでもいいけど)。それでいわゆる「貸し借り関係」があるから、「相互拘束」充足もOKだと思う。Y15の基本合意からの離脱の論点について、おそらく実務で今後「離脱」が問題になることはほとんどない(課徴金減免制度のため)。その上で、橋梁上部工入札談合刑事事件東京高判の定義が答案には書いてあったね。まあ、公取委事件に落とすのであれば、岡崎管工事件東京高判。これは作成者の意図が不明だけど、アポロが書いていたように、Y2以降は知らなかったから相互拘束から切れていないと読むのか、むしろ、実際に入札結果として、ほとんどが本件合意通りに落札している事実(Y1〜14に事実上協力していた)とY15の独自の積算での入札はむしろ本件合意が継続していたことを示す証左ではないのか、のような見方もできるのかなーと。まあ、より一般的には、Y15以外の連中が、Y15のことをアウトサイダーだとは思っておらず、インサイダーであったと窺われる事実(大きな脅威ではなく静観)から本件合意の中にいたとした方が自然だよね。これは答案に書いたら減点になり得る視点で、「課徴金の賦課は〜論じる必要はない」とあるけれど、アウトサイダーになりたかったら、課徴金減免制度を利用することが自然であり、明確に翻意したことを表明したかどうかという証拠事実は弱い、ということになるよね、普通の世界では。ちなみに減免申請したことを他の事業者に通知することは違反。効果要件は、特にコメントなし(その通りだと思う)。

 第2問は、全体的な話として、行為要件、「公正競争阻害性(自由競争減殺)」、市場画定には触れられていたから良いかなと。X社が「市場において有力な事業者」(シェア、製品特性、代替性等)であることを述べておいて、設問1の措置1について拘束条件付取引というよりも(措置2の設問の存在もあるから)、「その他の取引拒絶」(一般指定2項)、「差別取扱い」(一般指定4項)を作成者は書いて欲しいのかな?いずれにせよ、「市場閉鎖効果」が生じていることの指摘が大事。設問1の措置2について、こちらは、「拘束条件付取引」(一般指定12項)で、排他的リベートの実施だね。こちらも市場閉鎖効果の発生の蓋然性。設問2について、設問1との違いとして、3条と19条の違いを意識できているか、が大事かな?設問1との違いは、市場閉鎖効果に加えて、価格維持効果もある(設問の「価格水準は〜安定した状態」)。その上で、2条5項を論ずるのであれば、「排除」で①「排除効果」、②「人為性」を書く。②は書いてあったけど、①への言及がなかった。(実際は定量的にどうこうわかるものではないけど)措置1と2がそれぞれ単独であれば、公正競争阻害性のみであるが、措置が2つ合わさることで、競争の実質的制限に至った的なことを書いておけば、3条と19条の違いはわかっているな、ってなるのかな。

 「流石」としか言いようがない。今年の経済法は、例年に比べて簡単だった。今日その友達と会ったが、彼は「今年の問題は簡単すぎる。作成者はセンスない」と言っていた笑。確かに、明らかに事実認定で差がつきそうな問題ではある。しかし、競争制限の認定こそが経済法の醍醐味であることを考えると、実力が反映される良問だったと個人的には思う。ダラダラ書きすぎて、第2問の最後が雑になったのは、反省している。事実認定ゲーは得意なので、おそらく60点前後はつくと思う。

 

 

 

〜総括〜

 

 現場での振る舞いは、結構良かったと思う。「本当にわからない問題」は特になく、ほとんどの設問は、問題文の事実・誘導から合理的に考えて正解筋で書けた。予備論文と比べると、明らかに手応えは良い。

 上述のようにいくつか出題予想が的中し、苦手分野がほとんど出題されなかったので、運は良かったと思う。

 C以下がつく科目はなさそうであり、最もできなかった刑法も設問2のおかげでBに踏み止まると思う。他方で、それ以外の6科目は確実にAで、経済法も60点前後だと思う。短答が27位であることも併せ考えると、客観的に見て、99.99%合格している。

 

 

 

 こんな感じですかね〜。刑法で大きな失敗をしましたが、自分の実力は出し切ったので、後悔はないです。合格発表までの間は、最後のモラトリアムを精一杯楽しみたいと思います!

経済法の特徴・勉強方法(過去問のランクを追記しました)

 こんにちは、アポロです。

 リクエストがあったので、今日は、経済法の特徴・勉強方法について書きます。来年からは予備試験でも選択科目が導入されるため、ほとんどの人は選択科目も勉強することになります。ただ、「結局どの科目がいいのか?」と悩んでいる方も多いはずです。なので、そんな方はこの記事で経済法を選択する可能性を考えてみていただきたいです。また、既に経済法を選択された方は、具体的な勉強方法を参考にしてもらえれば良いかと思います。

 私自身、短期間の勉強で模試でA評価(上位2.8%)の成績を取れたこと、今年の司法試験でもそれと同程度の成績を取れた手応えがあることから、一応これらを語る資格はあると思っています。

 なお、「経済法」という名前の科目ですが、独禁法以外は出てきません。なので、以下では「経済法=独禁法」という前提で話を進めます。

 

 

 

〜経済法のメリット〜

 

コスパが良い。覚える量が本当に少ないので、インプットが一瞬で終わる。

 

現実のビジネスに近い問題が多く、ビジネスの用語も結構出てくるため、刺激的。大企業の行為が問題になる事件がほとんどであり、「あの企業も昔こんなことしてたんだな〜」等と思うことが多い。また、最先端の領域も学べる。例えば、少し前に話題になったLINEとヤフーの統合なども、独禁法的な観点から興味深い事例といえる。

 

企業法務との親和性が高い。特に、M&Aにおいては独禁法の知識は必須なので、その道に進む人はいずれ勉強することになる。

 

 

〜経済法のデメリット〜

 

他の選択科目と比べて、「当てはめ勝負」や「条文選択ゲー」になることが多い。つまり、インプットが容易なことの裏返しで、「知っている論点が出た!勝ち!」みたいなことはほとんどない。これは、行政法をイメージしてもらうとわかりやすい(処分性・原告適格の規範は誰でも書ける)。また、「これは何条の問題だ??」と無用に悩まされることがある。これは、憲法をイメージしてもらうとわかりやすい(憲法19〜21条辺りで迷うことはよくある)。現場ではいずれかに決め打ちすることになるが、もし間違えると低い評価となる傾向にある。この辺の解説は、「論理的には○条の適用もありえるけど本問では○条の方が適切。だって、判例(有名ではない)あるもん」みたいにされることがあり、納得いかないことも多い。

 

事案のイメージがしづらい問題もある。複雑なビジネスモデルだったり、テクニカルな方法で独禁法違反をしていると、「結局これは何が起きてるの?」みたいになることがある。特に、私のようにビジネスの前提知識が不足していると、こういうことは起こりやすい。

 

弁護士によっては一生触れない法律である。やはり、労働法や倒産法と比べると、現実世界で登場する事案は限定的である。特に、いわゆる街弁の人はまず使わない法律と思われる。

 

 

〜経済法に向いている人〜

憲法が得意な人は、経済法に向いている独禁法は、「経済憲法」と言われることもあり、思考プロセス・当てはめの感覚が憲法に近い。まず、条文選択で悩む感覚は、人権選択で悩む感覚と非常に似ている。憲法でここを外すことが少ない人は、無意識のうちに正解筋を選ぶ感覚を理解しているため、経済法でも外さないと思う。また、「当てはめ勝負」である点も、憲法と共通するため、憲法の当てはめが得意な人は経済法の当てはめも得意だと思う。さらに、ほぼ毎回「正当化」という議論を展開し、「目的手段審査」をすることになる。なお、よく「刑法が得意な人は経済法に向いている」と言われるが、個人的には憲法の方が相関関係がある気がする。感覚的には、憲法:刑法:行政=5:4:1くらい。この3つのいずれにも苦手意識がない人は、間違いなく経済法に向いていると思う(ちなみに私は憲法・刑法が得意で行政法が苦手です)。

 

将来M&A等の企業法務をやりたい人は、経済法に向いている。やはり、興味があることの方が勉強していて楽しいし、結果的に成績も伸びると思う。

 

 

〜経済法に向いていない人〜

 

憲法が苦手な人は、経済法に向いていない。理由は、上記理由の裏返しである。

 

企業法務に全く興味がない人は、経済法に向いていない。この理由も、上記理由の裏返しである。ただ、東京地検特捜部等では独禁法を使うことがあるため、経済犯罪を扱う検察官になりたい人は、向いている。

 

 

〜経済法の勉強方法〜

 

・まずは、私自身の行った勉強を紹介する。

 

 ①伊藤塾の講義でざっくりインプットした。教材もシンプルで良かったが、学習が進むほど、「これでは不十分」と感じるようになった。

 

 ②『論点解析経済法』を読み進めた。この段階ではどうせ全然解けないので、答案構成すらしなかった。問題と解説を軽く読んで、論点の理解を深めた。

 

 ③とりあえず百選を読んだ。今思えば、コスパが悪い勉強だったと思う。個人的には、百選は必須ではないと思う。読んでも良いが、試験での得点に直結することは多くない気がする。

 

 ④司法試験過去問の答案構成をした(解答例はメルカリで購入)。この段階でも、正直全然解けなかった。結構焦ったが、何周もするうちに典型論点は容易に解けるようになった。

 

 ⑤伊藤塾の『ペースメーカー論文答練』・辰巳の『選択科目集中答練』の問題と解答例を読んだ。選択科目においては、答練の的中率は高いので、絶対に目を通すべきだと思う。他方で、実際に答案を書くのは過去問で十分だと思う。伊藤塾の答練は、全体的に難易度が高かった。辰巳の答練は、基礎的な事項を網羅的に問うており、とても勉強になった。いずれか一方のみに目を通すなら、辰巳の答練をオススメする。

 

 ⑥『論点解析経済法』の答案構成をした。この段階になると、大体の問題は解けるようになっていた。何周もして、苦手な分野を潰していった。

 

 ⑦司法試験過去問の答案構成をし、一部問題については答案作成までした。網羅的に答案構成をしつつ、平成23年以降は、各年度のより重要度が高い方の問題の答案作成をした。この段階になると、大体は解けるようになっていた。何周もして、苦手な分野を潰していった。

 

 ⑧『1冊だけで経済法』を参考にしながら、本格的に論証を暗記した。

 

 ⑨『条文から学ぶ独占禁止法』を読み、適用条文の峻別・論点等の理解を深めた。コンパクトに要点がまとまっており、とても試験向きの本なので、強くオススメできる。なお、金井他著の『独占禁止法』の方が有名だが、司法試験との関係では明らかにオーバースペックなので、あまりオススメできない(授業で使ったから一応持っていた)。

 

 ⑩『論点解析経済法』・司法試験過去問・論証の暗記・答練の復習を繰り返した

 

・今振り返っても、百選を読んだこと以外は正しい勉強だったと思う。もし勉強方法に迷っている人がいれば、是非参考にしてほしい。

 

・3月にアガルートが『経済法過去問解析講座』を出したため、今なら④の段階でこれを受講することをオススメする。現時点で、他の予備校による過去問講座は見当たらない。

 

・平成19〜20年の問題は異常に難易度が高いので、スルーして良いと思う。再度の出題可能性という観点からみても、重要度は高くない。

 

・平成21〜28年は、難易度が安定しており、良問も多いので、積極的に答案作成すべき。

 

・平成29年〜令和2年も難易度が高いが、再度の出題可能性に備えて、答案構成くらいはすべき(ちなみに令和3年は比較的簡単だった)。

 

・主に予備受験生向けに過去問にランクを付けたので、良かったら参考にして下さい。

A…H21①、H22①、H23②、H24①、H25①、H26①、H27②、H28①、H29①、R1①、R3①

B…H18①、H19①、H21②、H22②、H23①、H24②、H25②、H26②、H27①、H28②、R1②、R2②、R3②

C…H18②、H19②、H20①、H20②、H29②、H30①、H30②、R2①

 

・課徴金について、令和元年に大きな改正があったため、解答例・演習書・基本書・答練等がそれに対応しているか逐一確認することをオススメする。なお、『条文から学ぶ独占禁止法』は、小冊子で改正についてまとめたものがついているため、この点でもポイントが高い。

 

 

 

 こんな感じですかね〜。個人的には、凄くコスパが良い科目だと思っているので、経済法を強くオススメします!

演習書等まとめ

 こんばんは、アポロです。自分は予備試験合格までに色々な演習書・過去問・判例集・答練に手を出したので、それらの「予備試験合格という目的との関係での有用性」についてまとめました。ただ、あくまで主観なので、ご了承下さい。◎は「本当に役に立ったから超オススメできる」◯は「やらなくても問題ないけど時間あるならやればいいと思う」△は「いらなくね?」という感じです。

 なお、予備短答に合格された方は、新しい物に手を出している時間的余裕は基本的にないはずなので、この記事はスルーしてもらって結構です。短答前から使っている、自分が信じた教材を使い倒して下さい。ただ、一定の時間的余裕がある短答合格者が、明確な目的意識を持った上で、新しいもの一冊程度に手を出すなら、それほど問題ないとは思います

 

 

憲法

憲法判例の射程』(△)…判例の理解は深まるが、答案への活かし方がわからなかった。

旧司法試験過去問(◎)…人権の基本的処理手順を学び、統治の典型論点を押さえる。

憲法ガール(◎)…問題を解くのではなく、解説部分を何周も読み込む。これでやっと憲法の考え方・判例の使い方が理解できる。詳細な議論は読み飛ばして良い。

予備試験過去問(○)…過去問の後追いにならないように注意。事実を拾う感覚を学ぶ。

百選(○)…出題可能性が高いと思われる判例の事案・判旨・解説を読む。メリハリが重要。コスパは決して良くないと思う。むしろ精神安定剤としての役割の方が大きい。

答練(◎)…コンプリ答練・直前答練の問題・解説は非常に良いので、定期的に復習する。

 

行政法

『問題研究』(△)…問題の質は普通。苦手分野だけ講義を聴けば足りる。

『基礎演習行政法(○)…短文事例問題で典型論点の理解を深める。解説が非常に良い。

『事例研究行政法(△)…問題の難易度が高く、解説もわかりづらいと感じた。

行政法ガール(○)…新司法試験で問われた論点は予備試験で問われる可能性が高いので、論点を潰すイメージで読む。個別法解釈の難しい議論は読み飛ばして良い。

『実戦演習行政法(◎)…『基礎演習行政法』の著者である土田先生が予備試験過去問を解説してくれるので、非常に勉強になる。

百選(△)…超重要判例だけ一読すれば足りる。

答練(◎)…コンプリ答練・直前答練の問題・解説は非常に良いので、定期的に復習する。

 

民法

アガルート論証集(○)…論点の前に具体的事案が載っている。網羅性も十分だと思う。

旧司法試験過去問(◎)…良問が多い。典型論点を押さえつつ、民法的思考を学ぶ。

予備試験過去問(◎)…良問が多い。予備試験民法特有の頭の使い方を学ぶ。

新司法試験過去問(△)…予備試験との関連性が薄い。

百選(○)…辞書的に使えば足りる。基本的には判例の規範(論証)を覚えておけば良い。

答練(△)…本試験との質的乖離が大きい。民法は論点が多いので「ヤマ当て」も困難。

 

商法

アガルート論証集(○)…網羅性が高い。

『事例で考える会社法(○)…やや難易度は高いが、論点の理解が深まる。

会社法事例演習教材』(○)…網羅性が高い。解答を手に入れる必要はある。

旧司法試験過去問(○)…超典型論点は押さえられるが、網羅性が低い。

予備試験過去問(◎)…条文重視の良問が多い。焼き直して出題されることもある。

新司法試験過去問(○)…新司法試験で問われた条文・論点は予備試験で問われる可能性が高いので、条文・論点を潰すイメージで解説本を読む。商法特有の論理も学べる。

百選(○)…辞書的に使えば足りる。基本的には判例の規範(論証)を覚えておけば良い。

答練(○)…苦手分野を発見するには良い。

 

民事訴訟

アガルート論証集(○)…網羅性が高い。

『ロジカル演習民事訴訟法』(○)…リークエとの相性が良く、解答も付いている。

ロースクール演習民事訴訟法』(△)…マニアックな議論が多い印象。

『解析 民事訴訟法』(◎)…旧司法試験過去問の理解を深める。

新司法試験過去問(○)…新司法試験で問われた論点は予備試験で問われる可能性が高いので、論点を潰すイメージで解説本を読む。難問・奇問も多いので、深入りはしない。

予備試験過去問(○)…過去問の後追いにならないように注意。重要論点の理解を深める。

百選(◎)…伊藤塾かアガルートの百選解説講義を利用し、徹底的に判例の理解を深める。

答練(◎)…アウトプットが重要な科目なので、とにかく答案を書く。

 

刑法

『刑法事例演習教材』(◎)…最強の問題集。予備・司法共にこれで足りる。

旧司法試験過去問(◎)…典型論点の書き方を学ぶ。

新司法試験過去問(△)…『刑法事例演習教材』と重なる論点が多い。

『実戦演習刑法』(◎)…学者が予備試験過去問を解説しているので、非常に勉強になる。

百選(△)…超重要判例だけ一読すれば足りる。

答練(◎)…論点抽出能力・事実認定能力・事務処理能力を磨く。

 

刑事訴訟法

ロースクール演習刑事訴訟法(◎)…捜査の問題は良い。証拠の問題は微妙。

『伝聞法則に強くなる』(◎)…新司法試験の問題を簡略化した事例を解説してくれる。

『事例演習刑事訴訟法(○)…辞書としてはかなり有能。

旧司法試験過去問(◎)…典型論点の書き方を学ぶ。

新司法試験過去問(◎)…新司法試験で問われた論点は予備試験で問われる可能性が高いので、論点を潰すイメージで解説本を読む。重要論点は事実認定のポイントまで確認する。

予備試験過去問(◎)…事実認定勝負の問題が多い。焼き直して出題されることもある。

百選(◎)…伊藤塾かアガルートの百選解説講義を利用し、徹底的に判例の理解を深める。

答練(◎)…苦手分野の発見・事実認定の練習には最適。

 

法律実務基礎科目

『問題研究』『新問題研究』(△)…導入としては良いが、網羅性が低い。

大島本(◎)…網羅性が高く、解説もわかりやすい。

定石本(◎)…刑事実務のポイントがコンパクトにまとめられている。

伊藤塾赤本(◎)…問題・解説が良い。巻末のまとめも良い(特に執行・保全)。

予備試験論文過去問(◎)…同じようなことが繰り返し問われている。

予備試験口述過去問(○)…口述で問われた内容は論文で問われる可能性が高いので、答えを考えながら口述再現を読み進める。

答練(◎)…要件事実等は、全く同じ問題が論文・口述に出題される可能性がある。

 

 

 こんな感じですかね〜。あくまで演習書等を選ぶ際の一資料としてお使い下さい。

予備試験短答から論文までの過ごし方

 こんばんは、アポロです。先ほど、後輩から「予備試験短答から論文までの過ごし方」について質問を受けました。これは自分も当時悩んで、色んな人の意見を参考にしつつ計画を立てました。そこで、今日は「私の短答から論文までの過ごし方」「やって良かったこと」「やるべきではなかったこと」「Q&A」について書きます。短答に合格された方は急いで論文までの計画を立てていると思われるので、参考になる部分があれば嬉しいです。

 あと、初めに言っておきますが、私はかなり手を広げています。現に、1日に何冊も参考書をハシゴしています。ただ、私のいう「復習」は、「本当に重要な部分・今年出そうな部分・不安な部分・苦手な部分に絞ってザッと読む」という感じで高速回転させているだけなので、それほど精度の高い復習ではありません(だからこそこれだけ手を広げても何とかなっています)。また、夏休み期間中だったので、勉強時間を確保するのは容易でした。よって、それらの点は参考にならない可能性があるので、ご了承下さい。

 また、令和2年は短答から論文までの期間が例年より少し長かったので、その点もご了承下さい。

 

 

〜私の短答から論文までの過ごし方〜

 

①1週目(8.17〜23)

・論文直前答練をペースメーカーにして、憲法行政法の復習をした。

・8.17…憲法の論証・旧司過去問・新司過去問1問を見直しただけ(4時間)。

・8.18…行政法の論証を見直してから、論文直前答練の公法1を解いた。そこで苦手分野を発見したので、その復習に徹した(11時間)。

・8.19…行政法の論証・『基礎演習行政法』・新司過去問・予備過去問を広く浅く復習した(12.5時間)。

・8.20…論文直前答練の公法2を解いてから、憲法の新司過去問を見直した(11.5時間)。

・8.21…憲法行政法の苦手分野だけ軽く復習した(4時間)。

・8.22…論文直前答練の公法3を解いてから、遂に憲法の百選に手を出した(11.5時間)。

・8.23…論文直前答練の公法4を解いただけ(4時間)。

 

②2週目(8.24〜30)

・論文直前答練をペースメーカーにして、民法・商法・民訴の復習をした。

・8.24…民法の論証・旧司過去問を復習した(10時間)。

・8.25…商法・民訴の論証を見直してから、論文直前答練の民事1を解いた。その後は『事例で考える会社法』・『会社法事例演習教材』・会社法の百選を復習した(12時間)。

・8.26…会社法の百選(続き)・旧司過去問・新司過去問・予備過去問・平成26年改正で加わった条文を広く浅く復習した(14時間)。

・8.27…民訴の論証を見直してから、論文直前答練の民事2を解いた。その後は『ロジカル演習民事訴訟法』・『リーガルクエス民事訴訟法』・民訴の百選・『ロースクール演習民事訴訟法』を広く浅く復習した(13.5時間)。

・8.28…民訴の論証・旧司過去問・新司過去問・予備過去問を広く浅く復習した(10.5時間)。

・8.29…民法の論証を見直してから、論文直前答練の民事3を解いた。そこで苦手分野を発見したので、その復習に徹した(12.5時間)。

・8.30…商法の論証を見直してから、論文直前答練の民事4を解いた。その後は刑法・刑訴の平成29年の新司過去問を見直した(12.5時間)。

 

③3週目(8.31〜9.6)

・論文直前答練をペースメーカーにして、刑法・刑訴の復習をした。

・8.31…刑法・刑訴の平成30年・令和元年の新司過去問を見直した(4時間)。

・9.1…刑法・刑訴の論証を見直してから、論文直前答練の刑事1を解いた。そこで苦手分野を発見したので、その復習に徹した(12.5時間)。

・9.2…『刑法総論の悩みどころ』・旧司過去問・『刑法事例演習教材』・予備過去問を広く浅く復習した(13時間)。

・9.3…刑訴の論証を見直してから、論文直前答練の刑事2を解いた。その後は刑訴の百選・『リーガルクエス刑事訴訟法』・『ロースクール演習刑事訴訟法』を広く浅く復習した(14.5時間)。

・9.4…刑訴の旧司過去問・新司過去問・予備過去問を広く浅く復習した(12時間)。

・9.5…論文直前答練の刑事3を解いてから、刑訴の百選を見直した(11.5時間)。

・9.6…論文直前答練の刑事4を解いただけ(5.5時間)。

 

④4週目(9.7〜13)

慶應ロー過去問を解き、入試を受けただけなので、割愛。

 

⑤5週目(9.14〜20)

・「新しい問題を書きたい」と感じたので、辰巳の論文予想答練を受け始めた。

・9.14…憲法行政法の論証を見直してから、論文予想答練の公法1を解いた。そこで苦手分野を発見したので、その復習に徹した(11時間)。

・9.15…民法・商法・民訴の論証を見直してから、論文予想答練の民事1を解いた。そこで苦手分野を発見したので、その復習に徹した(14時間)。

・9.16…刑法・刑訴の論証を見直してから、論文予想答練の刑事1を解いた。そこで苦手分野を発見したので、その復習に徹した(11.5時間)。

・9.17…論文予想答練の般教1・実務1 を解いてから、大島本・伊藤塾の赤本(民事)を広く浅く復習した(9時間)。

・9.18…論文直前答練の実務1を解いてから、口述過去問を見直した(14時間)。

・9.19…論文直前答練の実務2を解いてから、口述過去問(続き)・定石本・伊藤塾の赤本(刑事)を見直した(12時間)。

・9.20…論文直前答練の般教1・2を解いてから、般教の過去問(再現答案)の分析をした(8時間)。

 

⑥6週目(9.21〜27)

・論文予想答練と伊藤塾の論文模試(第1回)を受けて、ひたすら答案を書いた。

・9.21…憲法判例50に手を出してから、論文予想答練の公法2を解いた。そこで苦手分野を発見したので、その復習に徹した(12時間)。

・9.22…会社法判例40に手を出してから、論文予想答練の民事2を解いた。そこで苦手分野を発見したので、その復習に徹した(14時間)。

・9.23…論文予想答練の刑事2を解いてから、そこで発見した苦手分野の復習に徹した(10.5時間)。

・9.24…論文予想答練の般教2・実務2を解いてから、そこで発見した苦手分野の復習に徹した(9時間)。

・9.25…全科目の論証等を高速で総復習した(7時間)。

・9.26〜27…伊藤塾の論文模試(第1回)を受けた。

 

⑦7週目(9.28〜10.4)

・模試の復習をして、旧司過去問を総復習し、さらに模試を2回受けた。

・9.28…模試の復習をしてから、令和2年の短答の復習をした(10時間)。

・9.29…全科目の旧司過去問を広く浅く復習する日①とした(11.5時間)。

・9.30…全科目の旧司過去問を広く浅く復習する日②とした(6.5時間)。

・10.1…伊藤塾の論文模試(第2回、基本7科目のみ)を1日で受けて復習もした(12時間)。

・10.2…全科目の論証等を高速で総復習した(9時間)。

・10.3〜4…辰巳の論文模試を受けた。

 

⑧8週目(10.5〜11)

・模試の復習をしてから、全科目の予備過去問・答練の総復習をした。

 ・10.5…模試の復習をしてから、手形法を見直した(9時間)。

・10.6…憲法の予備過去問・答練を総復習した(9時間)。

・10.7…行政法の予備過去問・答練を総復習した(9時間)。

・10.8…民法の予備過去問・答練・改正分野を総復習した(13.5時間)。

・10.9…商法の予備過去問・答練・条文を総復習した(11.5時間)。

・10.10…民訴の予備過去問・答練・新司過去問を総復習した(12時間)。

・10.11…刑法の予備過去問・新司採点実感・答練・『刑法事例演習教材』・構成要件の定義を総復習した(13.5時間)。

 

⑨9週目(10.12〜18)

・全科目の予備過去問・答練の総復習をしてから、令和元年予備過去問を書いた。

・10.12…刑訴の予備過去問・答練・『ロースクール演習刑事訴訟法』を総復習した(12.5時間)。

・10.13…実務の予備過去問・答練を総復習した(10時間)。

・10.14…全科目の答練・新司過去問を広く浅く復習した(11.5時間)。

・10.15…憲法の百選を見直してから、憲法行政法の令和元年予備過去問を本番と同じ時間に解いた。その後は憲法の百選(続き)・判例50・新司過去問を見直した(12.5時間)。

・10.16…刑訴の百選を見直してから、刑法・刑訴の令和元年予備過去問を本番と同じ時間に解いた。その後は刑訴の新司過去問を見直した(16時間)。

・10.17…実務の令和元年予備過去問を本番と同じ時間に解いてから、大島本・定石本・模試の復習をした(10時間)。

・10.18…民訴の百選を見直してから、民法・商法・民訴の令和元年予備過去問を本番と同じ時間に解いた。その後は民訴の新司過去問を見直した(13時間)。

 

⑩10週目(10.19〜25)

・最後の高速総復習をした。

・10.19…民法・商法・民訴の旧司過去問・『事例で考える会社法』・『会社法事例演習教材』・商法・民訴の論証を広く浅く復習した(10.5時間)。

・10.20…憲法の旧司過去問・答練・最新判例を見直した(7.5時間)。

・10.21…刑法・刑訴の旧司過去問・『刑法事例演習教材』・刑法・刑訴の論証を見直した(10時間)。

・10.22…伊藤塾の赤本・定石本・答練・法曹倫理・基礎M・民法の論証を見直した(9時間)。

・10.23…全科目の論証等を高速で総復習した(9.5時間)。

・10.24〜25…予備試験論文式試験

 

 

〜やって良かったこと〜

 

・答練や模試をペースメーカーにして、網羅的な復習を高速で何回も繰り返したこと。これにより、穴のない確実な知識が血肉になった。

・答練や模試を受けまくったこと。これにより、「アウトプット→失敗→抽象化」のサイクルを繰り返し、時間感覚・筆力・テクニックが研ぎ澄まされた。

民法・商法は、改正分野の条文を何度か読んだこと。これにより、本番では多重代表訴訟を完璧に書けた。

・般教も過去問(再現答案)を研究したこと。これにより、どういう答案が評価されやすいのか、あるいはされづらいのかがわかった。

・予備過去問を研究し尽くしたこと。これにより、本番ではどういう部分に配点があるのかが手に取るようにわかった(行政法・民訴を除く)。

 

 

〜やるべきではなかったこと〜

 

・あまりに手を広げすぎたこと。これにより、一冊あたりの参考書に割ける時間が限られていた。

・「ヤマ当て」をしようと百選等の判例集を追加で購入したこと。これにより、基礎から離れたマニアックな学習に足を踏み入れかけた。

・無駄に音読をしまくったこと。司法試験前に気づいたが、自分の場合は、黙読の方が記憶に定着させる上でコスパが良かった。音読は時間がかかりすぎる。

・書き方が定まらない論点をフワフワしたままギリギリまで放置したこと。書き方に迷う論点は、自分が納得いく論証を早めに確立しておくべきだった。

・新司過去問の復習に時間をかけすぎたこと。商法と民訴は、1回確認するくらいで十分だった。

 

〜Q&A〜

 

Q.答案はどのくらいの頻度で書くべきか?

A.人にもよるが、答案を書く頻度自体は気にする必要はない。それよりも、まずは「何を書くか」「それらをいつ・どういうペースで書くか」ということを決める、という思考過程の方が良いと思う。ここで、最低限書きたいのは、論文直前答練or論文予想答練論文模試直近の予備試験過去問(今年なら令和2年)、である。余裕があれば、それ以前の再度の出題可能性が高そうな過去問も書きたい。あとは、論文までの可処分時間を考慮して、適切なペースに自分なりに分配して計画を立てれば良い。それが、「自分にとっての正しい頻度」と考えて良いと思う。書くことそれ自体は、本番で最高の答案を書けるようになるための手段であり、目的ではない

 

Q.やるべき問題の優先順位は?

A.優先順位が高い順に、①予備過去問、②旧司過去問、③答練・模試、④有名な演習書一冊、⑤新司過去問、だと思う。③答練・模試については、ペースメーカー・時間感覚・テクニック・相対的実力を知るという意味では有効な手段なので、積極的に受けるべき。ただ、答練・模試に慣れすぎると予備試験等の「本物の問題」のクセを忘れる可能性があるので、答練・模試ばかり解くことは危険。「本番はもっと◯◯だよね」というのを言語化するクセをつけるなどして、答練・模試と「本物の問題」の違いを意識した上で、有効活用すること

 

Q.既に予備過去問は解いたが、復習の際、答案構成でいいのか、それとも書くべきか?

A.科目別に答えるが、結論から言うと、①令和2年は書くべき(特に憲法、②再度の出題可能性が高そうな年度も書くべきで、③他は基本的に問題文と解答例を読めば十分だが、④民法・商法は事案と条文・論点を把握する練習をすべき、⑤刑法は答案構成まで全部すべき、と考える。

憲法は、令和元年か2年は答案作成すべきで、他は軽く見れば十分。

行政法は、今年出そうな分野が出た年度(例えば今年なら原告適格が出た令和元年等)は書き直すべきで、他は軽く見て理解できれば十分。

刑法は、平成26年・29年等は時間的にシビアなので練習として書くべきだが、他は答案構成で十分。

刑訴は、強制捜査や伝聞が出た平成26年等は書くべきで、他はしっかり見れば十分。

般教は、LECの市販の再現答案集を読み、「なぜこの答案の評価はAなのか」などを分析さえすれば、書かなくいいし、答案構成等も不要(答練・模試で添削を受ける方が重要)。

民事実務は準備書面の部分・刑事実務は近年の事実認定問題は書くべきで、他の設問は問題を見て口頭で答えられれば十分。

民法は、複雑な事案を図に書いて条文・論点を把握する練習はすべきだが、答案構成は余裕があればで良くて、答案作成は不要。

商法は、平成30年のように利益相反取引・役員の責任などの超重要論点が中心の年度は答案構成すべきだが、他は事案分析ができれば十分。

民訴は、問題と解答をしっかり見て理解できれば十分

 

 

 こんな感じですかね〜。もちろんこれが「正解」等と言うつもりはないので、自分にとって参考になりそうな部分だけをつまみ食いして、この勢いで論文も受かっちゃって下さい!

TKC司法試験 全国統一模試

 こんにちは、アポロです。

 先ほど『TKC司法試験 全国統一模試』の答案が返却されたので、その反省と今後の勉強の指針について書きます。

 

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論文で失敗しましたが、余裕で合格圏内でした。

 

〜前提として〜

・この模試の評価はかなり厳しく出ている。というのも、上位10%以内に入らなければA評価・判定は出ないようになっているが、本試験ではそのような評価のされ方・合否の決め方はされていないからである。本試験では、科目別では上位1000人までがA評価をもらえ(昨年だと上位約35%)、試験自体の合格率は約40%である。

・よって、この結果を参照する際には、科目ごとの評価・判定よりも、「上位◯%」という部分に着目すべきだと考える。この数値は本試験との乖離が少ないはずであるし、より具体的に自分の相対的実力を知れるので有益である。ただ、本試験なら短答で足切りされている人も採点対象にされているので、本試験よりも良い数値が出ている可能性がある。

・また、この模試の母集団は、本試験よりも若干レベルが高いことが予想される。というのも、本当に実力がない人や不安な人は、この時期に模試を受ける気にならないはずだからである。あとは模試特有の事情として、少なからず不正をしている人もいるはずである(在宅受験が多い今年は尚更である)。

・問題の質としては、思ったよりは本試験に近かった気がする。おそらく意図的に事務処理量の多いように作られていたが、それは本試験でも求められる能力といえる。(予備校特有の)マイナー論点をしつこく聞いてくる感じもなかった。そのため、この模試と本試験の成績の相関性はそれなりにあると思われる。

・以上より、この模試の成績を分析する際には、①本試験よりも若干レベルが高い母集団の中で、②自分は上位何%だったのか、という視点が重要になる。

 

憲法〜 予想はC→結果はB(上位13.7%)

・「公共の福祉による制約→明確性の原則」という流れで論じた(体系レベルのミス)

・「自己の見解と異なる立場」からの論述が、理由がないことも多く、全体的に雑だった

・分析的に検討できず、3条1項と2項を明確に区別せずに論じてしまった

・「法令違憲の中で合憲限定解釈をする」という発想がなく、適用違憲っぽく書いてしまった

 

〜行政〜 予想はB→結果はD(上位53.4%)

・設問1は、結論は合っていたものの、知識不足で理由をテキトーに書いたたため、減点された

・設問2(1)は、公表に関する条文を見つけられず、最重要の事実を落とした

・設問2(2)は、裁量基準を論述する流れが悪い上に、的外れな反論をしてしまった

・設問3は、職権取消しに当たるとの認定をし忘れたが、撤回との区別のためにすべきだった

 

民法〜 予想はC→結果はB(上位21.0%)

・設問1は、取消権者や時効の条文を落としたし、現場で引いた条文の要件検討も甘い

・設問2(1)は、本問の特殊性に全く気づかなかったが、仕方ない(合否には影響しないはず)

・設問2(2)は、信義則という単語も出さずによくわからないことを書いた(ここは頑張れた)

・設問3は、JR東海事件の理解不足により、少しズレた論述をしてしまった

 

〜商法〜 予想はC→結果もC(上位32.9%)

・設問1(1)は、423条3項を落とした結果として大きく失点したので、とても反省している

・設問1(2)も、428条2項を落とした結果として大きく失点した

・設問2は、「Yは原則として丙に対して請求できない」という大前提を書き忘れたので、反省

・設問3(1)(2)は、現場思考で逃げ切れたが、手続や条文の趣旨はもう少し正確に書きたかった

 

〜民訴〜 予想はB→結果もB(上位23.7%)

・設問1は、権利自白に気づかず少しズレた論述をしたので、権利自白には要注意

・設問2課題1は、特に問題なし

・設問2課題2は、積極的釈明という論点の理解が少し甘かったので、復習する

・設問3は、特に問題なし

 

刑法〜 予想はA→結果はC(上位37.8%)

・設問1は、論じる実益がないと勘違いし、公務振り分け説を雑に書いてしまった

・設問2第1暴行は、これも論じる実益がないと勘違いし、共同正犯の要件をスルーした

・設問2第2暴行は、抽象的事実の錯誤の論述が雑(というか不正確)だった

・設問3は、時間不足に陥り、前提として論じるべき共謀の射程をスルーした

 

〜刑訴〜 予想はA→結果もA(上位5.6%)

・設問1小問1は、書き方にやや苦戦したが、知識を絞り出して何とか書けた

・設問1小問2は、途中までよくわからず、現行犯逮捕が可能だったことへの評価が雑になった

・設問2は、要証事実の設定を間違い、やはり伝聞は難しいと感じたので、復習する

・設問3は、特に問題なし

 

〜経済法(第1問)〜 予想はA→結果はB(上位16.2%)

・設問1は、一般論に終始している部分があり、具体的事実を使いこなせていない

・設問2は、設問1でダラダラ書いたせいで紙幅不足に陥ったので、もっとコンパクトに書く

 

〜経済法(第2問)〜 予想はB→結果はA(上位1.0%)

・設問1は、市場画定と競争制限効果の検討が雑になった(再販売価格拘束は雑になりがち)

・設問2は、自由競争減殺も競争の実質的制限も認めたが、間違っているらしいので復習する

 

〜総括〜

・短答のおかげで総合成績は良いが、論文の成績(特に民事系)は酷い

・予想よりも大幅に評価が悪かった行政法は要注意な科目といえる(予備論文の悪夢が…)

行政法は、「重要な条文・事実の摘示」や「裁量論の流れ」という部分で失点している

・経済法・短答は、時間を割いてきた分の成果が出てきたので、これからもコツコツ継続する

 

〜今後の勉強の指針〜

・とにかく「穴をなくす勉強」をする

・定義・論証を徹底的に暗記する

・自説を確認し、ブレないように気を付ける

・予備試験や新司法試験の過去問等に既出の論点は、当てはめレベルまで確認する

 

 

 こんな感じですかね〜。母数を単純に2.5倍すれば220位くらいの成績になります。上位合格とは言えない成績ですが、とりあえず安心しました。というのも、個人的に「論文で大失敗した」と思っていたので、それでこの成績だったということは、よほどのことがない限り本番も落ちない気がするからです。当初は「司法試験でも無双するぜ!」という感じでしたが、最近は「まぁ、受かればいいや」という気持ちになってます笑。その原因は、単純に法律だけを勉強する日々に飽きてきたこと、言い換えれば、司法試験後の日々が楽しみすぎるということにあります。とはいえ、油断をすれば普通に落ちかねないので、残り期間は基礎・基本の復習に徹しようと思います。勉強の強度を落とすべき時期だと思うので、リラックスしながら網羅的な復習を繰り返します。

令和2年予備試験刑事訴訟法

 こんばんは、アポロです。今日は刑事訴訟法の反省点について書きます。

 刑訴は、A評価でした(予想もA評価でした)。ただ、後述のように、公訴事実の狭義の同一性を検討してしまったため、超上位ではないと思います(100〜200位くらい?)。

 

〜評価されたと思われる点〜

判例を意識して論述できた。これに尽きる。

 

〜もっと上位に行くために〜

・「公訴事実の同一性」についての理解が正確であれば、単一性を検討することができた。ただ、イレギュラーな出題であったことを考慮すれば、仕方がない気はする。

 

〜総括〜

判例及びその背後にある理論の理解を深めることが高得点に直結する。

 

〜司法試験に向けて〜

・司法試験過去問を総復習し、刑訴の感覚を取り戻す

平成24年・27年・令和2年については答案作成し、司法試験の問題文の長さ・時間感覚に慣れる

・重要判例・理論(特に学説対立のある論点)に絞って深く復習する

 

 

 こんな感じですかね〜。あまり汎用性のある問題ではないので、汎用性のある反省点もあまりないです。ただ、知識の精度で勝負がつく出題自体は頻繁にされるので、改めて判例知識及びその背後にある理論の理解を再確認する契機になりました。刑訴も確実に上位Aを取りたいので、油断せずに勉強します!

令和2年予備試験刑法

 こんばんは、アポロです。今日は刑法の反省点について書きます。

 刑法は、A評価でした(予想もA評価でした)。ほぼ間違いなく、超上位だと思います(一桁順位と予想)。そもそも、私は各科目の評価に比して順位が良すぎます。各科目の評価だけなら、100位前後でもおかしくないです。それでも2桁前半の順位だったのは、いくつかの科目で超上位のAを取ったからだと考えるのが合理的です。そうなると、唯一絶対的な自信があった刑法が40点前後だったのでは、という推測が立ちます。Aを取った科目のうち刑法以外の4つは、いずれもそれなりに大きなミスをしています。なので、私の論文順位には、刑法が超上位だったことが大きく影響していると思われます。

 

〜評価されたと思われる点〜

・「欺」く行為の事実認定は、間違いなく高評価だと思う。せっかくなので、以下に再現答案の抜粋を載せる(太字は特に評価されたと思われるポイント)。ここまで的確に事実認定できたのは、詐欺罪に関する近時の重要判例の調査官解説を趣味で読んでいたからである。もっとも、『基本刑法Ⅱ』250頁にわかりやすくまとめられたので、調査官解説など読む必要はなかった(『基本刑法Ⅱ』は口述前に読んで感動した)。このように近時の判例を意識して「欺」く行為の事実認定をするなら、「財産的損害」という要件は不要である。

(1) まず、「欺」く行為が認められるか。

 ア 「欺」く行為とは、①財産的処分行為の判断の基礎となる重要事項について、②偽る行為をいう。

 イ 本件において、甲には家賃等必要な費用を支払う意思も資力もあったため、甲は通常の賃貸借契約における重要事項を偽っているとはいえず、「欺」く行為に当たらないとも思える

   しかし、某県では、不動産賃貸借契約には本件条項を設けることが推奨され、実際にも本件条項が設けられるのが一般的であったという背景がある。そして、本件の賃貸借契約書にも、「賃借人は暴力団員又はその関係者ではなく、本物件を暴力団と関係する活動に使いません。」との本件条項が設けられ、甲に対してもその内容が説明されていた。暴力団員等が居住することで資産価値が低下する可能性があることからすれば、本件条項の内容は賃貸人にとって合理的であり、その内容は上記のように客観的に明らかにされていた。そうすると、本件の賃貸借契約においては、甲が暴力団員でないこと・本件居室を暴力団関係の活動に使わないことは、財産的処分行為の判断の基礎となる重要事項となっていた(①充足)。

   また、本件条項が一般的であったことに加え、甲はその内容を説明されていたことからすれば、上記契約締結に際して、甲がX組組員でないこと・A宅を監視する目的で本件居室を使用しないことは、当然の前提になっていた。そのため、上記事実を秘して契約を締結することは、上記重要事項を挙動によって偽る行為といえる(②充足)。

 ウ よって、「欺」く行為が認められる。

・偽造の事実認定は、他のA答案と大差ない内容である。もっとも、「名義人」「作成者」の定義を示していない答案が意外と多かったので、A答案の平均以上だとは思う。

・行使の認定の後、「甲が変更前の氏名が記載された自動車運転免許証・変更前の氏名の口座名義の預金通帳を示した行為は、上記の詐欺利得罪の手段にすぎず、別に犯罪を構成しない」と書いたが、これが評価されたのかは不明である(多少は加点されたと思いたい)。

傷害致死の事実認定もそれなりに評価されてるはず。これも、以下に再現答案の抜粋を載せる。一見すると、他のA答案と比べても有意な差はないように見える。ただ、①「客観」「主観」というキーワードを意識的に加えることで体系の理解をアピール、②「とっさに」に飛びつかないことで論点の理解をアピール(問題文に「自己の身を守るため」とあるのだから防衛の意思は当然ある)、③事実を使い切る姿勢、などの細かいテクニックで差をつけている。

(2) もっとも、甲の上記行為は丙の行為に対応して行われているため、正当防衛(36条1項)が成立し、違法性が阻却されないか。

 ア 「急迫不正の侵害」とは、法益侵害の危険が現在又は切迫していることをいい、その有無は客観的に判断される。本件では、丙は着衣のポケットからスマートフォンを取り出しただけであり、法益侵害の危険が現在又は切迫しているとはいえないため、「急迫不正の侵害」は認められない。

 イ  よって、正当防衛は成立せず、違法性は阻却されない。

(3) そうだとしても、誤想防衛として責任故意が阻却されないか。そこで、違法性阻却事由の錯誤が問題となる。

 ア そもそも、故意責任の本質は、反規範的人格態度に対する道義的非難であるところ、違法性阻却事由を基礎付ける事実を誤信していた場合、規範に直面していたとはいえない。そこで、違法性阻却事由の錯誤も、事実の錯誤として責任故意が阻却される。

 イ 本件において、甲は、丙が取り出したものがスタンガンであり、それで攻撃してくると誤信していた。そのため、甲の主観を基準にすれば法益侵害の危険が切迫しており、「急迫不正の侵害」がある。

   次に、甲は自己の身を守るため、とっさに上記行為をしているため、急迫不正の侵害を意識してこれを避けようとする心理状態たる防衛の意思があり、「防衛するため」といえる。

   また、丙は20歳と甲より若く、身長180cmと甲より15cmも高く、体重85kgと甲より25kgも重いこのように甲よりも身体能力で勝る丙が、スタンガンという火傷を負わせたり意識を失わせたりできる強力な武器を用いてきた場合には、顔面を拳で1回殴るというのは必要最小限度の防衛行為といえ、「やむを得ずにした」といえる。

 ウ したがって、甲の主観を基準にすれば正当防衛が成立するため、違法性阻却事由の錯誤として責任故意が阻却される。

 

〜もっと上位に行くために〜

・最後の足蹴り行為について、行為の一体性を検討する実益を示せなかった。というか、考えたことがないパターンだったので、現場ではわからなかった。そのため、単に行為の一体性を検討するだけになった(ここは平均的なA答案の出来)。とはいえ、矛盾したことを書いたりするリスクを考慮した上の判断だったので、これは仕方ないとは思う。

 

〜総括〜

・自己ベストの答案を書けた。刑法に関しては、さらに上位を目指す必要はないかもしれない。どちらかと言えば、この感覚を忘れないことが大切だと思う。

 

〜司法試験に向けて〜

・司法試験過去問の検討・『刑法事例演習教材』の復習により、刑法の感覚を取り戻す

平成24年・27年・令和2年については答案作成し、司法試験の問題文の長さ・時間感覚に慣れる

・短答対策をする中で出てきた学説を軽く復習する(特に結論が変わるもの)

 

 

 こんな感じですかね〜。刑法は重要な得点源なので、司法試験でも確実に上位Aを取りたいです。メリハリやペース配分がとても重要な科目なので、「120分・8頁」という感覚をできるだけ早く掴みます!