予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

平成26年予備試験憲法

 こんにちは、アポロです。毎日過去問生活22日目、今日は平成26年予備試験憲法を解きました。

 完全な初見ではないですが、実際に答案を書いたのは初めてです。かかった時間は71分でした。

 

 いつもとは異なり、今日は「個人的な反省」という項目ではなく、問題自体に対する私の思考過程を示すことにする。というのも、この問題はかなりの解答筋が考えられるため、自分の答案を「反省する」ということ自体難しい上に、予備校等の解答などを見ても納得できない点が多かったからである。

 まず、どの人権を選択するか。これが最初の問題である。出題趣旨には、職業の自由と結社の自由が挙げられているが、両方検討するというのは事実上不可能である。多くの人は直感的に職業の自由で検討するであろうし、私もそうした。また、再現答案などでも、いずれかの自由のみを検討してもA評価の答案も多い。なので、以下では職業の自由の問題として検討する。

 原告としては、保障と制約は端的に認定すれば足りる。問題は違憲審査基準の定立である。原告としては、当然厳格な方向に持っていきたい。そのため、まずは権利の重要性を強調する(薬事法違憲判決参照)。そして、規制態様の強度についても、何とか薬事法違憲判決に寄せて考えてみる。つまり、「事実上の許可制」であるとか、「過大な負担を課しているため狭義の職業選択の自由そのものを制約している」といった主張である。こうすれば、何とか厳格な合理性の基準(中間審査基準)にもっていくことができる。なお、いくら原告の主張とはいえ、ここで厳格な審査基準を定立するのは無理筋だと思う(あくまで経済的自由である以上、相当にハードルが高い)。(また、積極目的とか消極目的とかいう議論については、本問では原告に不利に働く事実といえるため、あえてここで言及しなくて良いと思う。)←「主たる目的は第二の目的であり、それは消極目的である」という主張はあり得ると思った。むしろ、目的について被告と私見で検討する以上、原告で主張させておくべきかもしれない。ただ、以下で述べるように、第二の目的は「『タダ乗り』を防止して『公平』を図ること」という認定をして目的自体を叩く場合には、それとの整合性はやや気になる。

 原告の当てはめとしては、両目的との関係でそれぞれ代替手段を挙げた上で、より緩やかな手段によっても目的を達成できる(過度である)、という筋が無難かと思われる。しかし、第二の目的については、「そもそも重要な目的とはいえない」として切るのもあり得ると思う。第一の目的と比較すると、この目的の問題点は浮き彫りになる。第二の目的は、「大型店やチェーン店をも含めた商店会を、地域における防犯体制等の担い手として位置付けること」である。ここから、直接の目的が「商店会全体で地域における防犯体制等の担うこと」であることは読み取れるが、究極の目的が何なのか、全く読み取れない。第一の目的において、「共同でイベントを主催するなど大型店やチェーン店を含む全ての店舗が協力することによって集客力を向上させ」(直接の目的)、「商店街及び市内全体での商業活動を活性化すること」(究極の目的)と、明確に究極の目的が読み取れるのとは対照的である。そうだとすれば、第二の目的は、「『タダ乗り』を防止して『公平』を図ること」といった重要とは言い難い目的とも言い得る。もちろん、「防犯強化(犯罪予防)」という消極目的と読むこともできるが、それは問題文自体から明らかでないし、少なくとも原告としてはここを叩く余地はありそうである。出題者は意図的に両目的に差異を設けたはずであるから、原告としてここを攻めるのは出題者の想定内だと思われる。

 被告の反論としては、審査基準を下げるために必要なことを述べる。第一に、職業の自由は社会的相互関連性が大きく、公権力による規制の要請が強いことを指摘する(薬事法違憲判決参照)。第二に、営業すること自体が禁止されているわけでもないため、「事実上の許可制」と言い得る制限はなく、職業遂行の自由に対する制約にすぎないことを指摘する。第三に、少なくとも第一の目的が積極目的である以上、立法府の判断を尊重すべきであることを指摘する。

 私見としては、これらを踏まえて最終的な結論を出す。本問においては、違憲審査基準定立が主戦場になる。厳格な合理性の基準を採用すれば、原告の主張する代替手段がある以上、正当化することはできない。明白性の原則(緩やかな審査基準)を採用すれば、本条例が著しく不合理であることが明白とは言い難いため、正当化される。では、いずれの基準を採用すべきか。原告と被告の主張を参考に検討するわけであるが、正直かなり微妙である。そんな時こそ、判例に立ち返って結論を決めるべきである。薬事法違憲判決は、厳格な合理性の基準を採用しているが、小売市場判決は明白性の原則を採用している。そうだとすれば、これらの判例のうち本件と距離感が近い方の基準を採用すれば良さそうである。

 まず、原告と被告で争っている「制約の程度」について検討する必要がある。これらの判例に共通するのは、いずれも「許可制」が問題となっている点である。しかし、本問では会費負担や協力義務を課しているのみであり、これを「事実上の許可制」とか「狭義の職業選択の自由そのものの制約」とはいうのはやや無理がある。「会費額が平均の約50倍」という点に着目すれば制約が強度とも言い得るが、会費額次第では必ずしも強度とはいえない(仮に会費の平均が5000円なら、その50倍は250000円であり、大型店にとっては相応の額といえる)。「7日間の営業停止処分」についても、会費額が相当といえる限りでは「加入しないのが悪い」というだけのことになる。仮にこのハードルを乗り越えても、「許可制」そのものでないことに変わりない。この時点で、薬事法違憲判決に寄せて書くのは厳しいという推定が働く。

 次に、原告と被告で争っている「目的」について検討する。仮に第二の目的を消極目的と認定した場合、積極目的と併存していることになる。この場合、いずれかの目的が「主たる目的」であるなどとして強引に認定するのが一番まずい(もちろん原告でこのような主張するのは問題ない)。確かに、薬事法違憲判決は「主たる目的」を認定しているが、受験生が限られた時間でこのようなテクニックを使うと、恣意的な判断になることが多いからである。そもそも、最近の考え方では、そのような判断をする必然性はない。出題趣旨でも言及されている酒税法判決は、「租税の適性かつ確実な賦課徴収」という目的との関係で立法府の裁量的判断を尊重すべきか否かで判断している。私見においては、伝統的な二分論よりは、「当該目的との関係で立法府の裁量的判断を尊重すべきか否か」という視点で検討する方が無難であろう。本件では、少なくとも商業活動の活性化という積極目的を有するところ、やはり立法府の裁量的判断を尊重すべきといえる。すなわち、あえて「主たる目的」を認定しないことを前提とすれば、少なくとも、薬事法違憲判決のように消極目的が「主たる目的」の場合よりは立法府の裁量的判断を尊重すべきといえるのである。

 そうだとすれば、本件は小売市場判決の方に近い事案だと考えることになる。そして、加入義務付けは上記の目的いずれとの関係でも著しく不合理であることが明白とはいえず、合憲となる(明白性の原則を採用しながら違憲とするのは相当にハードルが高い)。実際の訴訟でもおそらく職業の自由との関係では合憲であろうし、結論としても妥当と思われる(もちろん具体的な会費金額次第では逆の結論もあり得る)。

 

 

 こんな感じですかね〜。『憲法ガール』に触発されて、「判例を『はしご』にして問題を解く」というテーマで答案を書き、その思考過程を書き起こしました。空中戦のように感じられる憲法でも、「判例をベースに地に足のついた論述をする」という感覚が少しわかった気がします。これを機に憲法アレルギーを克服したいです笑。

 

 今日の一曲…Erykah Badu - Think Twice