予備試験無双

令和2年予備試験合格(短答・論文・口述全て二桁前半の順位)

平成23年予備試験民法

 こんにちは、アポロです。毎日過去問生活1日目、今日は平成23年予備試験民法を解きました。

 完全な初見ではないですが、実際に書いたのは初めてです。かかった時間は57分でした。

 

〜選んだ解答筋〜

①AB間売買が94条1項により原則として無効であるが、Dが94条2項の「第三者」として所有権を取得。

②Cは悪意なので、94条2項の「第三者」として保護される余地はない(ここまでは争いない)。

③Dが94条2項で確定的に所有権を取得する結果、相続でBが所有権を取得する余地もなく、A死亡によっても他人物賃貸借に変わりはない。

④順次承継説ではなく、法定承継説。

⑤Dの勝ち!

 

〜個人的な反省〜

・94項2項の「第三者」について、いきなり定義を書いてしまった。何でも趣旨から論述する姿勢が欠けている。

対抗要件の有無と無過失の有無については論点にならないので一切言及しなかったが、簡単に言及すべきだった(少しは点数あるはず)。

・法定承継説の論述が微妙だった(順次承継説を取っても結論が変わらないため、論じる実益はないとの見解もあるが、細かい議論なので割愛)。

・細かい条文を落としまくっている(559条本文・561条、882条、887条1項等)。

・比較的書くことが少ない問題だったので、結論は変えなくとも、もう一歩攻めた検討をしても良かった(相続による他人物賃貸借の瑕疵の治癒の余地、信義則、権利濫用など)。

 

〜問題の分析〜

・一見すると簡単だが、深く考えるとかなり難しい問題。

・「相続による他人物賃貸借の瑕疵の治癒」についてはあらゆる解答筋があり得る。私の答案は、相続開始時にAが所有権を喪失していたことを述べて端的に瑕疵の治癒を否定したが、ここはもう少し検討の余地があった気はする。確かに、Dが94条2項の「第三者」として確定的に所有権を取得してはいるのだが、同項は「対抗することはできない」との相対効を定めたものだという部分を強調すれば、Cとの関係ではBが権利者としての地位を相続したと考えることは可能である。そう考えれば、権利者としての地位と他人物賃貸人としての地位を併存していることになり、地位併存説や信義則の話になる(無権代理人の論点とパラレルに考える)。しかし、他人物売買の時は法定承継説からは対抗関係と考え、「第三者」が登記を備えた以上は確定的に権利を取得するのに対し、他人物賃貸借の場合には「第三者」が登記を備えてもなお占有権原の抗弁が認められ得るというのは、問題ではないか。結局のところ、この辺の議論は難解であり、合格レベルを大きく超えるものであるので、あまり気にする必要はないと思われる。

・具体的妥当性という観点からも、悩みが生じ得る。CとDの主観だけを問題にすれば、悪意のCより善意無過失のDの要保護性は高いように思われる。しかし、甲土地という高額の不動産を購入するDとしては、当然に現物を見に行ったはずであり、その時点で乙建物の存在に気づくはずである。そして、乙建物の所有者がCであることは登記簿を調べれば明らかとなり、甲土地の賃貸借契約についても容易に想像がつく。ここで気をつけたいのは、Dが善意無過失だったのはAB間の仮装売買についてであって、乙建物の存在や甲土地賃借権の存在については過失(帰責性)を肯定する余地は十分にある、という点である。そうだとすれば、簡単に「悪意のCより善意無過失のDの要保護性は高い」などとはいえないはずである。それよりも、Dに若干の帰責性を肯定しつつも、Cは仮装売買につき悪意であり、対抗できない賃借権と知りつつ取引関係に入っているから、相対的にDを保護すべき、という価値判断の方が説得的と思われる。

 

〜予想採点実感〜

・94条2項類推適用を検討している答案があったが、それは基本的な条文を理解していないといえる(初見で答案構成した1年前の私です笑)。

・94条1項の原則を示さずに唐突に2項を検討している答案もあった。何が原則で何が例外なのかをしっかりと示さなければ、採点者には原則を理解していることが伝わらない点に注意すべきである。

・多くの答案が94条2項を検討していたが、対抗要件の要否や無過失の要否といった、本問では直接問題にならない点を長々論じている答案が相当数見られた。ここで問われているのは「正確な法的知識とそれに基づく事案分析能力」(出題趣旨より)であることを再確認してほしい。問題にならない点を長々論じて評価されることは基本的にない。

・相続による問題を一切論じていない答案も相当数あったが、法律家として、そのような問題に斬り込む力が正面から問われていることを再確認してほしい。よくわからないからといって思考を放棄するような人材は法律家として求められていない。

・相続により他人物賃貸借の瑕疵が治癒されるか検討するに当たって、Dが94条2項で所有権を取得していることを考慮していない答案が相当数あった。94条2項で保護される者が、相続という偶然の事情によって占有権原の抗弁の対抗を受けることの違和感に気づいてほしい。その点について論述もせず、唐突に「本人の地位との併存」などという言葉が出てくるのは論理的に問題がある。そこでいう「本人としての地位」なるものは、Dの所有権取得によりそもそもないのではないか、ということが議論の前提として問題となるのである。この点に気づいて的確に論述していた答案については、その結論を問わず、「論理的思考力及び応用力」(出題趣旨より)が秀でているものとして高く評価した。

 

 

 こんな感じですかね〜。正直、これが試験本番で初見で出されたら、今日のような論述ができていたかは怪しいです。やはりこの問題は難しいです。ただ、自主ゼミ仲間にはガチ初見で的確に問題点を捉えて書けている人もいたので(スゲー)、私もまだまだ「民法的思考」を磨いていく必要があると感じました。また、試験の現場でこのような難問が出た時は「正解」を探さないようにも注意したいですね。この問題に限らず、特に民事系科目ではあらゆる解答筋が考えられるので、基本的に「正解」はないことが多いです。なので、自分なりの「正解」をどのような筋で導いたのか、なぜそう考えたのか、論理的問題はないのか、ということを厚く書く方が大事だということ再確認しました。とにかく良問です!

 

 今日の一曲…TheFatRat - Elegy